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2014年11月29日10:55

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【漢方】 日本人がトンスルを馬鹿にするのはブーメランですぞえ

20年ほど前のことでした。台湾の伝統医が日本に講演に来た時、日本の漢方を見て怒ってしまったと言います。
「日本には、中国医学が正しく伝わっていない!! 」


意外に知られていないのですが、いわゆる「中医学」と日本の「漢方」は全然別物です。
ついでに言いますと、朝鮮の「東派医学」も、中医学や漢方とは、これまた別物なんです。
なので、朝鮮の「東派医学」が世界遺産に登録されることは別にどこもおかしくありません。ちょうど紙の起源が中国や高麗にあっても、独自の進歩を遂げた和紙が世界遺産になってもおかしくないように。

ただ、中医学も東派医学も漢方も、「傷寒論」や「金匱要略」を聖典にしている点では同じではあります。
これはまあ、飲茶(ヤムチャ)と茶の湯は全然別物だけど、どちらも陸羽の「茶経」に起源があるのと同じだと思ってもらえば良いです。

中国の伝統医学を要略して説明なんて暴挙です。
でも、強引に簡略化しますと、後漢の時代に成立した「傷寒論」「金匱要略」が、まず日本に伝わった。
12〜14世紀に「金元四派」という革新的な運動が起こります。これも日本に伝わりました。
ところが清の時代になって、「傷寒論」だけでは説明のつかない急性疾患もあるということで現れたのが「温病論」です。これは日本には伝わらなかった。


一方、日本では「金元四派」の医学が主流でした。これを「後世方派」と呼びます。特に「万病回春」と言う本が江戸時代に大受けする。これは中国で書かれた本なのですが、中国ではほとんど評価されなかった。しかし、日本では後世方派を代表する本となります。現在でも腰痛の定番である「疎経活血湯」や「六味丸」などは、この「万病回春」に出てくる薬なのです。

この「後世方派」が長らく日本の漢方の主流だったのですが、江戸中期に吉益東洞という天才が現れます。
この人は、一種の原理主義者で、漢方は「傷寒論」と「金匱要略」の2冊でこと足れりとする「古方派」を打ち立てます。
「金元四派」はもちろん、五行説すらも、「後世に混入した雑音で益なし」とする徹底ぶりでした。
この「古方派」は凄い勢力となって、一時期「後世方派」を圧倒するまでになってしまうんですね。

現在では「後世方派」への再評価も進み、「古方派」と混じった形で落ち着いていますが、それでも日本の製薬会社が製造するエキス製剤の実に75%が「傷寒論」と「金匱要略」による物だと言えば、その影響が分かると思います。
このような原理主義運動が主流派となったのは、日本独自の現象なんですね。

朝鮮の東派医学も独自の進歩を遂げています。
当時、中国には南派、北派という二大流派がありました。
朝鮮の医学は、日本のそれよりはるかに中国医学との交流が盛んではありましたが、それでも独自の進歩を遂げます。
極力、生薬を中国の輸入に頼らないようにする工夫が、大きな起爆剤になりました。それで、中国の南、北と区別して「東派」を名乗るんですね。
「四象説」というのも、独自の考え方です。
李氏朝は国策でこれを奨励しましたから、体系の整理統合が非常に明確なのが特徴ですね。
これは部分的に日本にも伝来し、漢方にも少なからず影響を与えています。例えば日本では、高麗人参をやたら有難がる傾向がありますが、これが東派医学からの影響なんですね。

けど、非常に残念なことに李氏朝の崩壊によって、国策とされていたことが仇となり、東派医学は大打撃を受けます。
現在に至って、再評価が進み、復興されてきていますが、中医学の影響をどうしても強く受けてしまい、それが大きな課題のようですね。

えーと、トンスルでしたっけ?
この薬は、東派医学の文献には、一切出てきません。
韓国人でも知らない人が沢山います。
はい、これは「地方の民間療法」にすぎないのです。

「太平閑話滑稽伝」と言う朝鮮の説話集があります。まあ、これは中国の「笑府」、日本の「醒睡笑」と並ぶ笑い話集なんですけどね。
この笑い話の医者ネタの定番では、たいていヤブ医者は「田舎の医者」、そして面白いことに名医は「日本人の医者」なんですよw
朝鮮の古典を紐解いてみると、日本に好意的な記述が多い。
状況が一変するのは、そう、秀吉の朝鮮の役以降なんです。「慵斎叢話」辺りはだいぶ辛らつだし、壬辰倭乱をリアルタイムで体験した著者による「於于野譚」は相当に手厳しい。
でも「於于野譚」では、加藤清正を敵将にしては比較的話しの分かる奴として描く等、とても冷静だったりするんですが、話しが脱線しましたね。それは置いておきまして。

この「太平閑話滑稽伝」では、ヤブ医者が薬を調合する時に、大黄と大便を間違えて処方してしまうと言う話しがあります。
つまり、朝鮮でも大便を薬にするのは、「笑い話」のネタになる非常識なことだったんですよ
まあ、この説話は深読みすると、東派医学をアンチョコでしか使えないヤブが「大便が熱病に効く」という民間療法に惑わされた結果だと分かるんですけどねw

排泄物を薬とすることは、アジアで広く見られます。
「本草綱目」にも、ウサギの糞やコウモリの糞が出てきます。
日本でも童尿と言って、子供のおしっこを丸薬を練り固めるために使ってましたし。

そして、「大便酒」は日本にもきっちりありました。
 ↓
フォト

トンスルとは用法が異なります。
ですが、思いっきり飲用です。
他に日本では大便は、鍼灸に失敗した時の膏薬の原料にされることもありました。

これらは「奇方」と呼ばれ、ほとんどが民間療法起源です。
奇方には、グロ系が散見されます。霊天蓋、人胆のような人間の死体から作られるものもあり、処刑場で働く者の副収入になってたり。

奇方は、普通の医者は補助的に用いるだけでして、また古方派の原理主義者からは排除されました。
しかし庶民の人気は衰えず、現在でも有名なイモリの黒焼きも、これに属します。

かようにアジアの文化ってのは、何やかんやで非常に似ているのですよ。
お互いを尊重しあってこその21世紀人類だと思うんですけどねw










■「ヘイトスピーチに恐怖を感じた」 在日コリアンの体験まとめた「調査報告書」発表
(弁護士ドットコム - 11月28日 18:31)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=149&from=diary&id=3162278
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