『アメリカン・ハニー』

『アメリカン・ハニー』

　2009年の『フィッシュ・タンク』でカンヌ映画祭審査員賞に輝いた英国女性監督アンドレア・アーノルド監督による本作はまたもや同映画祭で審査員賞受賞という快挙。（3度目らしい）
それなのに日本では劇場未公開で、ソフトにもならず配信のみという扱い。
（放送してくれたスター・チャンネルさんありがとう！）

　テキサスに住む18歳のスターは崩壊している底辺家庭に嫌気がさして家を飛び出し、雑誌の販売をしながら旅している若者グループに加わる。
昼は雑誌の訪問販売、夜はパーティーと奔放な生活を送る“行き場のない若者たち”の青春ロード・ムーヴィー。
行く先々で映し出されるのは格差社会が広がる現在のアメリカ。

　作品のタイプとしてはやはり『フィッシュ・タンク』に近い気がするが、『フロリダ・プロジェクト』が好きな人にも共感が得られそう。
とかくロード・ムーヴィーというと横移動を意識してかシネスコのワイド画面を選択することが多いように感じるが、（少なくともビスタ）本作は狭いスタンダードサイズを採用。
おそらく『フィッシュ・タンク』と同様に不自由さ・窮屈さを表したかったのではないか。
迷い込んだ虫や小動物に自由を与えるスターに本心が見て取れる。

　少々尺が長い印象を受けるが、臨場感あふれる撮影で批評家受けする作品だとは感じる。
劇中に使用される楽曲がどれもが見事にシーンにマッチ。

　マイアミのビーチでスカウトされたというスター役サッシャ・レインをはじめ、多くに演技未経験者を使っているためもあり、さながらドキュメンタリーのような色合いを見せる一方で『トランス・フォーマ―』シリーズのシャイア・ラブーフや『マッドマックス　怒りのデス・ロード』のライリー・キーオなど知名度のある俳優が要所を締める。