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2020年07月06日07:37

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1405

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1405

ヘニング・マンケル 「イタリアン・シューズ」  

2015年に67歳でこの世を去ったスウェーデンの
作家へニング・マンケルが2006年、58歳の
ときに著した作品。マンケルは刑事ヴァランダー・
シリーズで日本でも人気のあるミステリー作家と
して知られるが、彼は児童書やドキュメント、
戯曲も書く多才な作家だ。

本作品はミステリーではない。孤島に一人、
犬と猫と暮らす老人の話だ。彼は元医者で、
あることがきっかけで50代に引退した。
離婚歴はあるが家族はいない。

そこに37年前に別れた恋人が突然やってきた。
かつて彼が彼女にした約束を果たしてほしいと
いう。その約束とは、昔彼が父親とともに
訪れた感動した小さな湖に連れていくこと。
彼女と別れたのは彼に責任があり、彼は
彼女の要求にこたえて湖への小旅行を行う。
彼女はガンに侵されていて余命いくばくも
ないこともわかってくる。

湖に行き彼女との約束を果たしたわけだが、
彼女はついでも別の町にも寄ってほしいと
言う。お安い御用とばかり、その場所へ行った
ところ、一人の女性に会う。その女性は彼と
彼女との間に生まれた娘だと彼女は言う。
そんな話つきあっていた頃には聞かされて
いなかった彼は驚く・・・。

この後、彼の娘の知り合いとの交わり、
さらに医者をやめたきっかけとなった患者
との再会など、静かだった彼の隠遁生活が
大きく回転していく。そして、反省点の多い
彼の半生が、残り少なくなるこのときに
変化していくのだ。

人間は、そんなに遠くないときに死ぬことを
意識しだしたとき、残り少ないときを
どのように過ごそうとするのか? 誰かに
貸し出したものを取り戻そうとするのか、
あるいは借りたものを返そうとするのか。
また、取り戻すことや返すことに、
どのくらいの意味があるのか。

いろいろ考えさせる。60歳以上の方に
おススメの傑作だ。

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