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2019年08月20日07:32

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1352

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1352

ウィリアム・トレヴァー 「聖母の贈り物」               

読観聴では原則、新刊を紹介している。なので
今回は例外となる。

2007年の出版なので10年以上も前の本。

たまたま図書館で手にとったところ、はまって
しまった。

このトレヴァーという作家の作品は以前に
確か村上春樹が選んだ短編集で読んだ記憶が
ある。でも、その1作だけ。

本作品は、著者の12の短編が収められている。

この作家はアイルランド人で現在は(生きているなら)
英国在住ということらしい。長編もかなり書いているが
短編の名手としての評価が高いとのことだ。

読み始めて、すぐに気がついた。文章がスムースに
流れている。翻訳もすぐれているのだが、原文も
素晴らしいに違いない。

すぐれた小説は、その舞台をクリアに読者に
見せていることだ。町や村、家屋の中の部屋や
調度品など。そして、登場人物の描写がすぐれて
いること。それは主人公や準主人公にとどまらず
登場人物すべての人物像がきちんと示されていると
いうことだ。その点、この作家は完璧だと言える。

一つひとつの作品を見てみると、作者が生まれ
育った戦前のアイルランドの田園、イスラエルや
イタリアの町など、それぞれの季節や風のそよぎ、
植物の様子など、まるで映画を見ているように
すーっと入ってくる。

そして登場人物。特別な人はいない。どこに
でもいる普通の人たち。それぞれが喜び、悩み、
ため息をつき、葛藤しながらも人生を歩く。そんな
市井の人たちの様子を優しげな目で眺めている、
それがトレヴァーという作家だ。

他にも日本で出版されている本がありそうだ。
今度図書館でチェックしてみよう。


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