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2019年06月26日07:23

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1345

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1345

横山秀夫 「ノースライト」

あの名作「64」から6年、横山秀夫久々の新作である。

もちろんミステリーなのだが、警察小説ではない。あれーっと
いう感じだ。しかも、殺人はないし、警察官も出てこない。
素人が探偵っぽい動きをするけれど、派手なアクションや暴力
沙汰もない。

主人公は30代の建築士。彼が設計した長野県の家に
夫婦と3人の子どもが住んでいるはずが、もぬけの殻に
なっていた。これはいったいどういうことなのか?
家具などもなく人が住んでいた形跡が感じられない。
唯一残されていたのは一脚の古い椅子。主人公が
勤める建築事務所の所長によれば、この椅子は高名な
ドイツの建築家によるものである可能性が高い。椅子
だけを頼りに建築士は家のオーナー一家探しを始める。
ドイツ人建築家に詳しい新聞記者も協力する。

主人公は妻と離婚しており、2人の間には娘が一人。
中学生の娘とは時々会っていて、娘も建築士の仕事に
興味を示す。友人で事務所の所長は既婚で息子がいるが、
彼にもなにやら複雑な事情がありそうだ。

総勢5人という建築事務所は大型案件のコンペに参加
することになり、強敵のライバル社との競合があり、
全員がこれに力を注ぐ。

この小説は、家のオーナー一家捜索が本筋ではあるが、
家族と仕事にはさまれた男の半生の話でもある。
なぜ主人公が建築士という仕事を選んだのか、彼の
父親の職業などが丁寧に描かれる。そして、そうした
主人公の少年時代や結婚後の生活などが、すべて
直接間接に事件と絡まり、最後は見事に収まる。

登場人物の造形はしっかりできているし、無駄な
枝葉はない。否、枝葉はあるが全て幹と繋がって
いると言いなおすべきだろう。

地味なのだが、とても良い小説だ。 


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