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2020年05月02日10:09

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不忍池、夢の中へ

新型コロナ感染の危険から、外出は自粛なんである。

普段は出不精なのだが、そんなご時世にはなんとはなしに反発したくなる。だからだろうか。ある日、お出かけする夢を見た。

良く晴れて、風もそこそこのある春の日。朝起きてうだうだするのに飽き、昼ころ、外出を決め込むことにする。マスクをつけてドアを出た瞬間はただの近所の散歩のつもりだったが、春風に背中を押されると、もう少しだけ遠出をしたくなる。

そうだ、上野行こう。

美術館や博物館はやってないだろうが、なに、公園が丸ごと封鎖されてるなんてことは無いだろう。そういえば、営業時間こそ短縮しているものの、吉池は開いているはずだ。吉池で酒と肴を買って、公園のどこかでランチ。それだ。これは必要かつ緊急の食事なんである。

気もそぞろに電車に乗る。いつもより空いてはいるが、マスク姿の人がそれなりに乗っている。まあ、人の移動を完全に無くすことなどできまいて。都内の川をいくつか渡り、緑と水の流れる景色に後ろ髪引かれながら、秋葉原で降りる。秋葉原から御徒町を経て、上野まで歩くのである。

メイドカフェの客引きを横目にずんずんと。中間目標は、御徒町。

ほどなく御徒町、吉池に着く。一階は鮮魚、地下一階には鮭やら乾物やら、地下二階は酒やら生活雑貨やらを商っている。よかった、営業している。

まず酒だ。

地下二階へ。地方の酒蔵が催事をしていたらそれを買うのが自分としてのセオリーなんだが、こんな時だし催事はないようだ。並ぶ酒瓶を見ながら、そして自分の懐具合を相談しながら、しばしむむむ。選んだのは『初孫』の純米生酛。これなら味に間違いはない。四合で千円強という値段もよい。ついでに350缶のヱビスとチェイサー用の水を買って万全。

次は肴だ。

吉池の鮮魚コーナーは常に素晴らしい。美味そうな鮮魚たちを尻目に、刺身コーナー辺りをうろつく。ホタルイカもよいし、アオヤギなんかも売ってる。カツオやマグロやタイもよい。さて。しばし悩んだ末、4点入り(マグロ、タイ、ハマチ、アカガイ)の刺身盛り合わせを一つ。火を通したのも欲しかったので、鯨の大和煮缶を一つ買う。ついでに刺身醤油。まあ、これでよかろう。

吉池のビニールを下げ、アメ横を抜ける。

閉まってる店もかなりあり、人通りも、無いわけではないがかなり少ない。文字通り、8割減くらいではなかろうか。すっぽんをはじめエキゾチックな食材に溢れるセンタービルの地下の食品街も覗いたが、やはり半分くらいは閉まっていた。でもすっぽんはある。地上に出てビールを歩き飲み。上野の山の上まで登ろうか悩んだが、疲れそうなので、不忍池のほとりへ。

池の周り、木陰に腰掛ける。密集密閉密接ではないものの、なんだかんだで老若男女、マスク姿の人の往来がある。ジョギングしたり散歩したり自転車にのったり腰掛けて談笑してたり。親子だったり友人だったりたぶん恋人同士だったり家族だったり独りだったり。緊急事態宣言下というのに、マスク姿を除き、ほぼほぼ日常だ。なんと。

妙な感慨にふけりつつ、刺身のパックと初孫を開ける。とりあえずマグロから。端が少しひんやりジャリっとしたので失敗。もう少し置こう。初孫、純米ながら洗練された香りとコクが広がり、喉越しでキリリと締まり、腹に酔いがストンと落ちる。生酛づくりならではなんだろうか。よい。むろん刺身に合う。合わないわけがない。

右側数メートル先に腰掛けてパンか何かを手にしている男性の辺り、スズメの声がかまびすしい。見れば男性の周りにスズメが集い、手にのったりなんだりしている。文鳥ならぬ手乗りスズメだ。なかなかのものである。左数メートル先には、男性が二人腰掛け、消毒用ウオッカの話をしている。

刺身を食べ終えたところで、ちょっと場所を変えることに。池のほとりを歩きつつ、日差しも柔らかくなったので、日向のベンチで再開。初孫は半分くらい残っている。鯨大和煮缶を開ける。甘辛く味付けた鯨肉、白飯のおかずとしては甘塩っぱ過ぎる気もするが、初孫相手だとすこぶる良い。

空はあくまで青く、日差しはちょうどよく、風はやわらかく、スズメ、ムクドリ、ハト、その他もろもろの鳥の声、水面を揺らす鯉、花にはまだ遠い蓮の茎、池の向こうに見える弁天堂、初孫、鯨大和煮。本でも読もうかと思って持ってきていたのだが、そんなもったいないこと、できるわけないじゃないか。

初孫を飲み終えて、さて、どうしようかというところで目覚めて気づけば、不忍池は消え失せて自分の部屋のせんべい布団。奢れるものではないにせよ、ただ春の夜の夢のごとしとは。いささか口惜しい夢の中なのであった。

ではまた。

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