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2019年03月22日09:11

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ケル・アスーフ

ケル・アスーフの新作「Black Tenere」を聴いた。
ケル・アスーフ(Kel Assouf)とは、トゥアレグ人ギタリストのアナナ・アルーナを中心に結成されたバンド。
トゥアレグ人とはサハラ砂漠の西部を活動範囲とする遊牧民。
元々はトゥアレグという国が存在したのだが、1960年にアフリカ大陸で17ヶ国が植民地からの独立を達成した際に、4つの国に分断されてしまったとのこと(この1960年は「アフリカの年」と呼ばれている)。
アナナ・アルーナ自身は現在、ベルギーに亡命している。
この辺りの詳しい説明は大変なので割愛するが、彼自身二度の亡命や、軍事訓練なども体験しており、かなり紆余曲折の人生を送ってきたようだ。

同じく遊牧民で結成された「Tinariwen」(彼らもトゥアレグ族が中心となって結成されている)が「砂漠のブルース」と呼ばれているが、このケル・アスーフはそれに対して「砂漠のツェッペリン」と呼ばれることがある。
ブルースから、それをベースにしてブルース・ロック、そしてハード・ロックへと遷移したように、よりプリミティヴな演奏を聞かせる「Tinariwen」に対して、ケル・アスーフはよりハード・ロック寄りになっている。
バンド編成はギター、ドラムス、キーボードの3人で、ベースレス。
キーボードはアマール808のソフィアン・ベン・ユーセフという、マグレブ音楽好きにとっては結構有名な人で、本作のプロデュースも行っている(「マグレブ」とは北西アフリカのこと)。

「砂漠のツェッペリン」といったフレーズから想像されるように、ハード・ロック色が結構強いが、ベースになっているのは伝統的なトゥアレグ音楽。
ギターのフレーズなどもハンマリング・オンやプリング・オフを多用したプレイになっており、歌もリード・ヴォーカリストが一節歌うと、その後にコーラスが同じフレースを繰り返す、といった構成が多い。
そうはいっても、70年代あたりのちょっと古めのブルース・ロックを基調としたような楽曲や、オルガンがビンビンに鳴り響くハード・ロック然とした楽曲もある。

面白いのはリズムで、曲によってはギターとヴォーカル、手拍子、そしてドラムスが微妙にすれ違うようなビートで進むので、なかなか調子が取り辛かったりする。
それらがお互いにソッポを向いているんだけど、足並みだけは揃っている、って感じか。
そんな中にあって、リズムのアクセントが1拍目にあるような曲は、妙に安心したりする。
中近東やアフリカ北部・西部の音楽の多くはアクセントが1拍目にあることが多い。
「ン、タッ、ン、タッ、ン、タッ、ン、タッ」ではなくて「タッ、ン、タッ、ン、タッ、ン、タッ、ン」って感じ。
そんな曲が聴けると、「ああ、ワールド・ミュージックやなぁ……」なんて感じたりしてしまう。
僕だけの変な感覚だろうな、なんて思っているけれど。

僕としては、もう少し民族っぽい味が濃い方が好みなのだけれど、「砂漠のツェッペリン」と言われるだけあって、ヘヴィーでググっと響いてくるロック、悪くはないです。

Fransa/Kel Assouf

Tenere/Kel Assouf featuring Abdallah,Tinariwen

Alyochan/Kel Assouf

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