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2020年02月13日08:38

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「強健術」案内161

「最終回」

今回は、『二分三十秒の運動で健康の中心を強くする方法』に解説される「中心力養生法」の「丙 中体」を見ていきます。

丙 中体

イ、両足を、直角に踏み開いて立つ、(此の練修には、鉄棒を持たない。)
ロ、両足爪先の間隔は、拇指と仲指とで計って四つ。即ち二尺(約60cm)強。
ハ、腰を反り、腹をきめて、体重を、両足の中央に落とす。
ニ、上体、柔軟。両膝は、ピインと伸ばせ。
ホ、眼光を決める。凝り固まるな。悠然せよ。
ヘ、両手の指を揃え、掌を上にして、両体側から上げながら、胸を充分に開いて、息を吸い込む。
ト、スッカリ、吸い込んだ所で、両手をピシャッと合わせる。
チ、其の時、顎は、両腕の上がるのと、一所に仰いで、眼光は、両手指先を通じ、上方に濺ぐ。
リ、呼吸停止、三秒間。
ヌ、呼吸停止間に、五指を組み合わせ、頭の上で、小円を描いて、掌を情報に向け、両腕をグイと伸ばす。
ル、息を吐きながら、組んだままの両手を、掌を前方に向け、腕を伸ばして、臍の前方まで下ろす。
オ、同時に両膝を折り、下脚を、地平に対して、垂直にする。(膝が前に出ない様にすることが大切、即ち体重が両足裏に、平均に落ちて、爪先へも、踵へも、内側へも、外側へも、片寄らない様にせねばならぬ。それが出来ないと、完全なる中心力は、造れないのだ。)
ワ、上体は、垂直に下りる。前にも、後へも傾かない。
カ、腕や肩に、力を入れない。鳩尾を折らない。
ヨ、そうすると、腹の真中を通過する垂直線と、臍を通過して、地平に対して平行な直線とがなす処の、直角を、二等分した直線の方向、即ち所謂臍下、丹田に向かって、引きしぼるような力が、ストッと動く。そして、下腹部を、ドカッと叩く。(其れが本当の中心力だ。其の力の動き方が分からぬのは、遣り方が間違って居って、真の要領に合しないからだ。意思を用いて、特に下腹へ、力を入れるのではない。虚心淡懐。無我無心に、只物理的に、如上の姿勢と、動作と、呼吸のやり方とをすれば、自ら生理的に、下腹筋肉が緊張して来るのである。そして、其れは、重心の安定を得た、最も強固な、且つ楽な姿勢であるので、精神も自ら、其処へ、集中統一されるのである。是れ即ち、肉体鍛練の極致であり、精神修養の奥秘である。)

この部分は、『独特なる胃腸の強健法』に解説される「中心力養生法」の解説とはやや違います。この型も、「乙 下体」と同様、その姿勢から自然に「中心」に力が入ります。その大きな理由は、『独特なる胃腸の強健法』の「中心力養生法」に解説しましたが、腰を下ろすことにより、上体が垂直に落ちそれに連動して腰が自然に反り、単なる「腹力」から「腰腹同量」の「中心力」に昇華したからです。この姿勢は、春充が「正中心」に落節した経験から来ています。また、「精神も自ら、其処へ、集中統一されるのである」とありますように、単なる肉体鍛錬から精神の修養へと昇華している点も大変重要です。ここにおいて、強健術は、「観念を用いずに肉体の操作により精神を操作する」という大きな特徴を本格的に備えることになります。「精神修養の奥秘である」と解説される所以です。

タ、上体は柔軟、只正しき中心力のみ、渾然として、大なる明玉の如く、腹と腰との中央に納まる。
レ、眼光は前方に濺ぐ。
ソ、息を吐いて、腰を下ろした時、ヅーッと体を決める。
ツ、其の際、息の吐き方、力の使い方、腰を下ろす動作が、自然加速度的に行って無理の無いようにする。
加速度的に力等を用いる、重要!!
ネ、呼吸停止三秒間。腹と腰とへ、力を入れたまま。
ナ、練修の終わり毎に、ピシャッと両手で、自然に両股を叩く。健康の精気、溌々として、迸る。
ラ、回数三回。

『独特なる 胃腸の強健法』では五回 でしたが、三回に回数が減っています。

ム、運動時間、約三十秒。
(健康の中心を強くする法 P.109〜114)

以上の「丙 下体」の解説は、前著『独特なる胃腸の強健法』とほぼ同じでしたが、今回の著作を出版するまでに「正中心落節」という体験をしたため、その記述がさらに深化していることが見て取れます。

そして、この段階より「強健術」は大きく進化し、ほぼ完成した「簡易強健術」、「気合応用強健術」、「椅子運動法」などが次の著作『川合式強健術』に発表されることになります。

今回見てきた『二分三十秒の運動で健康の中心を強くする方法』には、それまでの「強健術」と「正中心落節」後の「強健術」の違いを次のように解説しています。

私は最初、各部主要筋肉鍛錬法の効果をして一層顕著ならしむるの、一手段として、『腹力』『気合」『丹田力』を、全練修法の通則とした。而して、やって居る中に、単なる腹力ではいけない。腹と腰と同量の力、腰から行った腹の力、腰に連なった腹の力、即ち人体の物理的中心に向かって、球状の圧迫力を、作るのでなければ、完璧のものでは、ないと云うことを悟った。
一寸聞いただけでは、其の真価は容易に分かるものではないが、実際問題としては、正に一大躍進であった。正宗の名刀、一揮、磐根錯節をぶち切った様な、壮快を、私は感じたのである。(健康の中心を強くする法 P.80〜81)

このように、これまでの「強健術」と「正中心落節」後の「強健術」は、見た目はほぼ同様でも質的に大きく異なることになります。そして、それは、春充の肉体ばかりではなく精神をも大きく飛躍変貌させることになります。

さて、昨年の11月20日からほぼ毎日更新して、「肥田式強健術」、「天真療法」などについて展望してまいりましたこのブログも、春充が「正中心に落節」した時点に差し掛かった今回で、一旦連載を終了したいと思います。

大きくその内容を変貌させた「強健術」、「呼吸操練法」、「椅子運動法」あるいは、その後に創案された「抜刀術」、盟友 平田内蔵吉と共に開発された「国民体育」、あるいは、「正中心落節」により変貌深化した春充の内面を詳述した晩年の「宇宙倫理」、晩年に発揮された驚異的な能力など、まだまだ触れなければならない内容は多くありますが、順序的に総論である、刊行予定『聖中心伝−肥田春充の生涯と強健法−』(青年編)(壮年編)(晩年編)をお読みになってから、さらに各論である今回の連載をお読みになるのが理解しやすいかと考えます。

実際、少々先走りすぎた感のある今回の連載で詳しく触れることが出来なかった基本的知識、情報が、刊行予定の本には詳述されています。これらの、内容を知らずにこれ以降の「強健術」の各論を読んでも、徒に誤解と未消化を招くばかりであることを危惧し、一旦切りのいい今回で終了することにしました。

現在、『聖中心伝−肥田春充の生涯と強健術−』(青年編)の出版準備を、鋭意進めていますので、遅くとも来年の始めくらいには皆様にお届け出来ることと思います。

今回で、一旦連載は終了しますが、『聖中心伝−肥田春充の生涯と強健術−』が出版されましたら、また違った形で皆様に「肥田式強健術」の情報をお届け出来たらと考えております。

1年余りの長期に渡り、お読み頂きありがとうございました。(了)

(写真は、春充の故郷山梨県小沼より見た富士山)
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