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2020年02月11日11:09

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「強健術」案内159

今回より、春充の9冊目の著作『二分三十秒の運動で健康の中心を強くする方法』(尚文社 大正14年発行)に発表される運動法を見ていきます。

春充は、『独特なる胃腸の強健法』を大正12年1月に出版しますが、この年の6月に、「正中心落節」の体験をし、ここにおいて各練修法はほぼ完成します。この体験は、春充の肉体と精神を大きく変化発展させることとなります。その体験と、どのような変化が心身に現れたかは、刊行予定『正中心伝−肥田春充の生涯と強健術−』(壮年編)第6章 第21節 「聖中心落節」 をご覧いただければと思います。

そして、この時より前に見てきました、鉄棒を使用する「上体操練法」、「下体操練法」の二法のみを行うようになり全体の練習時間は数十秒に短縮されます。また、この体験の後から精神的進境も著しく、発言が抽象的、哲学的、宗教的色彩を帯びてきます。

このような体験の後に春充は、講演集『この大獅子吼を聴け』(尚文堂 大正13年発行)を出版し、そこに「正中心落節」後の心境を次のように語っています。

中心生命とは何ぞや即ち肉体の物理的中心に自己の全精神を合致統一せしめて其処に溌剌たる活生命を生ずることである。物理的に重心の安定を得るの形それが中心である。その中心に向かって力学的無形なる球状の圧迫力を作りたるが即ち中心力である、それに全精神全霊魂を集中統一せしめて即ち中心生命は活く。(この大獅子吼を聴け P.26)

これは、大正13年に郡是製糸の社員に向かって行った「中心生命を啓け」という題名の講演中で語られたものです。「肉体の物理的中心に全精神を合致させる」などその表現が肉体と精神の両方にまたがり、非常に抽象的になってきているのがおわかりになるかと思います。しかし、その土台となっているのは、「正中心落節」という生々しいフィジカルな体験です。

この『大獅子吼を聴け』は、講演集であり強健術については解説はありません。「正中心落節」後に初めて出版された強健術についての解説本が、今回見ていきます『二分三十秒の運動で健康の中心を強くする方法』です。ここで春充は、正中心落節後の強健術について次のように述べています。

今や、三十年近くの、不断の経験により、肉体鍛練の、最高根本条件は、先づ、中心を据えた、正しい姿勢によって、生理機関の位置を良くし、生理機能を順調にし、而して、理学的、生理的、両方面から観ても、最も自然な、有利な、働きをする中心力を、強くすることが、第一であり、基礎であり、根底であり、初めであり、終わりであり、其の凡てであらねばならぬことを、確りと、知ることが出来た。而して精神修養の要訣というも、全く此の領域に過ぎないことが、明らかに分かった。(健康の中心を強くする法 P.77〜78)

ここではっきりと、運動、強健術の根本条件は「中心を据えた正しい姿勢」にあり、「精神修養の要訣」さえもこの姿勢にあると解説しています。では、「正中心落節後」に会得したこの「中心を据えた正しい姿勢」にとはどのようなものであり、『二分三十秒の運動で健康の中心を強くする方法』に発表されたそれを鍛錬する方法とはどのようなものなのでしょうか。次回よりその具体的方法を見ていきたいと思います。

(写真は、旧肥田邸跡を八幡野神社へ至る道より見た風景、この丘は春充の親友でもある国民的小説家 中里介山によって「松春台」と名付けられました)
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