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2019年12月15日11:45

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「強健術」案内102

今回より、具体的な「強健術」のやり方を見ていきますが、その前に前回見た内容とほぼ同様の「注意事項」を、型の解説の直前に挙げてありますので参考までに引用しておきます。

▽注意事項▽
練習上の注意事項をかさねて少しく述べて置きましょう。
一、 最も楽な自然のままの形を執って、体の何処にも力を入れませぬ。それが基本の姿勢でして、それから一寸膝を曲げ、腹と目的の筋肉とに力をこめるのです。其の間秒時。
一、両脚は、ほぼ二尺許り離して、踏張って立ち、足と足とのなす角度は直角になる様にします。そうすると、姿勢が一番確りした上に少しも疲れません。
一、目的の筋肉と、腹筋の緊張と、それに呼吸が調和して、バラバラにならぬ様にします。そして其の力の割合は、目的の筋肉の緊張が九分でありまして、腹筋は却って十分の緊張をする様に致します。
一、力は垂直に使用します。即ち腕でも足でも、下に動かす時に力を入れるのです。その時は姿勢全体を低くします。
一、力を中心に纏めます。これは力を入れる時、上体を伸び上がらぬようにすることです。却って水落の所と膝とを、折り曲げる様にするのであります。
一、目はただ大きく無邪気に、パッと見開いて、視線を正しく前方に注いで居ります。しかし睨みつけるのではありません。これに少しく熟練しますと、識らず識らずの裡に、虚心坦懐の域に入ります。それは自然とそうなって来るのでありますから、強いて勉めるには及びません。
一、焦らず軟らかに、しかも確りやらねばなりません。虚弱な方は、一層静かに行った方がよろしいのです。
一、力の入れ方は、極めて軟らかな所から、スート強く、腹と一筋とに与えるのであることは前に述べましたが、それが終めば、すっかり力を抜いて終って、もとの柔軟な姿に返るのです。
実は力を入れるのではなく、正しい姿勢でやりますと、力は自然と這入って来るものであります。
一、力を入れる時に、息は吐き出します。
一、息を吸い込む時には、全身の力を抜きます。
一、息を吸い込んだ時と、息を吐き出した時に、呼吸を二秒間ばかり停止します。其の時の動作もそのまま停止致します。そうしますと呼吸と動作とが、よく調和致します。
一、拳ということが方法の中に出て来ますが、其の時は何時も挿図の様な握り方をするのです。そうしますと前腕筋諸筋肉は平等の緊張を致しまして、丁度、手先に、軽い機械を持ったようになります。始めは一寸六づかしいかもしれませぬが、度々やって居りますと、一瞬間に握れるようになります。(強い身体を造る法 P.94~97)

以上、「自然体」、「瞳光の不睨」、「集約拳」、「腹筋(中心)10分」、「目的の筋肉9分」の緊張などお馴染みの要件とともに、『強い身体を造る法』で初めて出てきた、「力を垂直に使用する」、「力を中心にまとめる」=「みぞおちを折り曲げる」などの新たな要件も出てきます。

ここで、前回見てきた要件では触れていない、重要な要件が一つあります。それは、「息を吸い込んだ時と、息を吐き出した時に、呼吸を二秒間ばかり停止します」という部分です。これまでは「呼吸停止」は否定されてきましたが、前作『心身強健術』の中の「自己療養」で紹介された各呼吸法では初めて「呼吸停止の時は七秒間を超ゆべからず」(心身強健術 P.399)と呼吸停止を認めていました。また、その理由もそれらの「呼吸法」の解説の中で見てきました。同様の理由で、今回はその「呼吸停止」を「強健術」にも導入しているのです。

それでは、これより具体的な「型」の解説を見ていきますが、「型」も(簡単なる説明)と(詳細なる説明)に別れます。今回は、「腓腸筋鍛錬術」の(簡単なる説明)を見ていきます。

(簡単なる説明)
(一)腓腸筋鍛錬術
○右足爪先を正面に向け、左足は一尺ばかり離してこれとイの字形をするように致します。
○両腕を後方に伸ばし、上体を前に屈めて、全身の力を抜き息を充分に吸い込みます。
○両腕を一旦前方に交差して、再び右左に開く時、上体を反って力強く息を吐き出し『ふくらはぎ』と腹筋とを緊張させます。
○此の動作に要する時間は十秒間です。
○左も同じやり方。(強い身体を造る法 P.60)

この「型」は現在最もよく知られた「簡易強健術」の「腓腸筋練修法」の原型となった「型」です。これまでの「腓腸筋」を鍛える「強健術」は、柱を柔道の出足払いのように払う型でした。今回の型はそれとは、全く違う発想から成り立ち、全く違う形となっています。

また、「簡易強健術」の第一番目の「型」としてよく知られている「型」の一つですが、なぜ「ふくらはぎの筋肉:腓腸筋」を鍛えるのに、上体を前後させたり両手を広げたりするのかは、これまで説明されずにただその形と手順のみが伝えられてきました。しかし、これまでの春充の解説を注意深く読み込んでいれば、その理由はおのずと明らかになります。逆に言えばその理由を知らずに、形だけをなぞってもそれは春充が意図した効果的なやり方とは言えないでしょう。その謎解きは、次回(詳細なる説明)を見ていく時にしたいと思います。

(写真は、「腓腸筋鍛錬術」を行う春充)
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