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2019年11月19日07:05

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「強健術」案内76

今回は、「第七練修法 (腹直筋)」別名「気合発声強壮法」を見ていきます。この型は前著『腹力体育法』では、「第十練習法 (聲)」として発表されたものの発展形です。『腹力体育法』では、この「気合」を発声することに重点が置かれていましたが、今回はこの練修法で鍛える筋肉が「腹直筋」となっている点が注目されます。
『実験 簡易強健術』、『腹力体育法』では「腹直筋」を直接鍛える運動法は、「第八練習法」でした。そしてその型は、現代の筋肉トレーニングの「レッグ・レイズ」(leg raise)という腹筋運動に近いものでした。今回より春充は、この直接腹筋を鍛える方法を執らずに、直接腹筋を鍛えることに関係のないように見える運動法を「腹直筋」を鍛える方法として採用しました。これが、「強健術」の一大特徴となり、後に「気合応用強健術 斜腹筋練修法(中心力を以て横腹の筋肉を鍛える法)」に発展していく型の原型です。そして、春充はこの型によって「正中心に落節」するのです。その詳細なメカニズム、方法については刊行予定『聖中心伝―肥田春充の生涯と強健術』(青年編)に多くのページを割いて解説してありますので是非ご覧下さい。それでは具体的なやり方について見ていきましょう。

イ、右方(今まで一室の或方角を前方と定めて運動したるに対して云う)に向いて立ち、踵と踵との間約一尺。自然体。(運動前の姿勢)。
ロ、突如、両手を以って、各両股を打ち両脚に覚醒を与え、腹筋を緊張せしむ。

この部分は『腹力体育法』には無かった部分です。腿をパンと手で打って覚醒を与えるという方法は、後の「気合応用強健術 斜腹筋練修法(中心力を以て横腹の筋肉を鍛える法)」にも採用されています。

ハ、其の瞬間、秒時の隙もなく、急激に体をかわして、左脚を一歩、真後ろに退き、始めて正面に振り向くと同時に。(この予備行為は著しく動作を敏活ならしむ)
ニ、キッと瞳を電のように走らせて前方臍の高さと思わるる空間に注ぐ。瞳光の不睨
ホ、右脚はそのまま膝を折り、左脚は伸ばす。
ヘ、振り向く勢いにて、左拳は後腰に、右拳は、下腹部に当つ。(膝を打つ否や拳を作るなり)

『腹力体育法』では両手は腰に当てていました。なぜこのような形にしたのかは、次回に見る(備考)の中で解説されます。

ト、気魄を、下腹丹田に収む。『動かざること、山の如く』なるべし。(準備姿勢)

本文では、誤植で次に来るべき「チ、」が抜けていますので、原文のままブログにも転載します。

リ、 両手を下腹部に当つ。(裸ならば猿股の帯を掴む。規定の握り方をなすにあらず)。

ここにもありますように、この時の握り方は「集約拳」ではなく、帯を普通につかむように単に握るだけです。

ヌ、(一)呼吸を腹のドン底に、押し付ける心持ちにて。
  (二)急激なる極度の大緊張を腹直筋に与う。
『腹力体育法』では、ただの「緊張」でしたが、ここでは「大緊張」と強調されています。
(三) 右拳を以って、急激にウンと下腹を押す。

(四)右足の拇指に力を入れ、踵を上げて、急速に確り、踏み附く。(全生命を踵に落とすの気概なかるべからず)(踵の踏み附けと、次に述ぶる発声とは同時になす)。   

『腹力体育法』では「踵」のみで「拇指」には言及していませんでした。更に足の解説が詳しくなっています。

(五)以上の諸動作と同時に…『エイッ』、『ヤッ』、『エイッ』と、腹から掛声をなす。

「腹力体育法」では、『エイッ』『ヤッ』『エイッ』『エイッ』 と四回の掛声です。ここでも、回数の減少に成功しています。

ル、此の発声の時、一々踵を踏みつけて(拇指に力を入れ)腹筋を極度に緊張させ、其の度毎に、両拳にて一々腹筋を押し附け、声を腹のドン底より、グッ、グッと揉み出す如くに行う。
ヲ、最後の発声を最も力強くやる。
ワ、運動回数は一回のみ。ただ一回のみ。

回数は、『腹力体育法』でも右左一回づつです。

カ、「獅子高岳に吼えて、百獣戦く」の概あるべし。
(心身強健術 P.161〜163)

以上、基本的に『腹力体育法』の「第十練習法 (聲)」とやり方はほとんど変わりませんが、細かい部分が改良され、それが発声の回数を減らすなどの進歩につながっています。次回は、(備考)を見ていきます。

(写真は、「第七練修法 (腹直筋)」を行う春充)
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