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2019年11月12日07:57

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「強健術」案内70

今回は、「第三練修法 (三角筋)」の(備考)を見ていきます。

備考 此(こ)の運動法の型の或(あ)る箇所は、Gimnastikmit den Handtuch中の一方法に得る所ありたり。(心身強健術 P.149)

ここに出てくる「Gimnastikmit den Handtuch」とは、春充が読破した263冊の体育、武術、養生法の本のリストの58番目に出てくる「ローミュラー・ハンカチーフ運動法」のことです。これは正式には『ローミュルラ氏 手拭運動法』と言う題名で大學館から明治36年に出ていた本に載っている運動法です。以前に少し触れましたが、両手にハンカチや手ぬぐい、タオルのような布を持ち、それを両手で張った状態で様々な運動をするものです。この運動法の詳しい内容と、それを春充がどのように評価したかは刊行予定『聖中心伝―肥田春充の生涯と強健術―』(青年編)に詳しく書いてありますので是非ご覧下さい。また、どの運動法を取り入れたかは、図を参照して下さい。恐らく、春充はこの型を実際にやって見て、三角筋がこれまでの方法よりも「緊張」することを実感したのでこの動きを取り入れたものと思われます。しかし、『ローミュルラ氏手拭運動法』には、この運動法でどの筋肉が発達するかについては一言も触れていません。

備考 右脚を一歩踏み出して左足を引着け、重心を左足爪先に落とし、全身に力を入れざる所、次に来る壮烈なる動作に集注すべき精力を蓄積するものなれば是(これ)を余計なる挙動とし、等閑視せられざることを希望するものなり。(心身強健術 P.149〜150)

これは、体を回転させる前に左脚に重心をかけて、右足を踏みつける直前の準備動作を指します。

備考 一方に踏み出したるはづみにて、重心が、引き付けたる脚に落ち、姿勢の確整を保つや否や、直(ただち)に踏み込みたる脚を上げて、体をかわし、真後ろが正面に向くようにすべし。(心身強健術 P.150)

これは、右足を踏みつけてその勢いで体を回転させる部分の解説です。

備考 この場合、上体は正しく前に向かい、踏み込みたる脚の膝は曲げ両足爪先は直角をなす様になせ。(心身強健術 P.150)

これは、体を回転させて、右足が地についた時の姿勢についての解説です。その時脚の形は前回に説明した通り空手の前屈立ち、または中国拳法の弓歩に近い形となり、体と顔はねじらずそのままこれまで正面だった方向と反対方向に向けます。そして、右足と左足の角度は、直角となります。

備考 体をまわす時には少しも力を入れず、両腕は振り飛ばす様にして踏み込みたる方の腕をあぐ。他方の腕は体に巻きつくる様にして背部にあつ。此(こ)の動作がスラスラと行きて、毫(ごう)も無理のなき事を期すべし。 (心身強健術 P.150)

腕は、力を入れずに体の回転によって生まれた遠心力によって、ふわりと回して首の後ろに持って行きます。もう片方の腕もふわりと自然の勢いで回して後ろ腰付近にあてます。これらを、体を回す勢いにのって力を入れず自然に行います。これが「利動力」です。またこの腕を首の後ろと、腰の後ろに巻き付けるような技法は、後の「三骨軽打法」という型に応用されることになります。

備考 踏み込みたる瞬間に、始めて腹筋を緊張せしむることに注意すべし。(心身強健術 P.150)

回転した右足を「ドン」と踏みつけて両手が体に巻き付くように決まった瞬間、腹筋に力を込めます。これが、脚の「踏みつけ」を「腹筋の緊張」に応用した例です。

〇右三角筋の運動の時、右足で真横に踏み出して、左足をこれに引きつくれば、惰性にて重心は左脚に落ち、右脚はあがりて左に踏み込み易(やす)き形となる。右脚を左に踏み込めば、体は回転す。体が回転すれば自然体を執(と)って居(い)ると、勢いで右腕はあがり、左腕は背後に附(つ)く。腕が肩に着いている所は三角筋であるから、かくして、最も自然なる、確りした緊張を与えることが出来るのである。(心身強健術 余録 P.4)

この解説は、(備考)の中にはなく、著作『心身強健術』の後ろの方にある「余録」の中に説明されているものです。自然体で体のどこにも力を入れていないと、半回転した時に自然に腕が跳ね上がり、首の後ろあたりに飛んでいきます。繰り返しになりますが、この動きの勢いを利用するのが「利動力」です。

(図は、「第三練修法 (三角筋)」のもとになった「ローミュルラ氏 手拭運動法」)
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