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2019年09月21日07:26

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「強健術」案内18

前回は、「第四練習法」を見てきました。今回は、「第五練習法」を見ていきます。方法は、以下の通りです。
実験 簡易強健術 第五練習法
イ、直立の姿勢、
ロ、拇指を前にし、四指を後にして、両手を腰にあつ。(以上運動前の姿勢)
ハ、右足にて一歩進み、更に左足にて一歩進み、次に右足を前に進むる途端に蹴上ぐべし。(図参照)
ニ、蹴上げたる時、左足は踵を上げて爪先にて立つ。
ホ、蹴上げたる瞬間は稍(やや)腰をまげて、臀部を少しく後方に突き出す心持ちとなるべし。
ヘ、蹴上げたる脚が降りたる時、原位置に復してタヂタヂとせぬようにすべし。
ト、左足を蹴上げるときは、踏み出しを左足より始む。
チ、まづ右脚五回の後、左脚五回に移る。
リ、鍛錬の結果爪先が眼の高さ以上に上がるようになる時は、其(そ)の瞬間、眼は爪先に注ぐべし、最初、高く上がらぬ内は、上がりうるものと仮定して眼を注ぐべし。
(備考)
本運動の目的は動作を敏活にならしむと共に、上脚四頭筋の発達を促(うなが)すにありて、動作の敏活は一に脚によるものなることは『内篇』に於(お)いて予の委(くわ)しく述べた所、この法は、コーペットの練習法を参酌したるものなりと雖(いえど)も、更に下腹部の緊張と、足拍子の氣合とに於(お)いて、予が独特の運動法則の加われるものなることを忘る可ず。(実験 簡易強健術p.235〜238)
この運動法の鍛える部位を春充は「上脚四頭筋(大腿四頭筋)」と言っていますが、前々回も指摘しました通り、第三作『心身強健術』以降は「上脚二頭筋(大腿二頭筋)」となっており、その鍛える筋肉が「第三練習法」と逆転しています。その理由などについては、「第三練習法」の解説に書いてありますので参考になさって下さい。
また、この運動法は前回紹介しました「第四練習法」とともに、強健術の「四大要件」の一つ「動作の敏活」を達成するものです。そして、この方法は「コーペットの練習法」を参考にしたと書いてありますが、このコーペットとは、ジェイムス・J・コーベット(James John Corbett 1866〜1933)というアメリア人ボクサーのことです。彼は、「近代ボクシングの父」と呼ばれる人物で、ボクシングにフット・ワークの技術を導入したことで有名です。彼はこのフット・ワークを駆使して、それまでボクシング界で不敗を誇った伝説の初代ヘビー級チャンピオン、ジョン・L・サリヴァン(John Lawrence Sullivan 1858〜1918)を、1892年にアメリカ ニューオリンズで行われた試合で倒します。春充はこの記事を見て、コーベットのフット・ワークをみがいた練習法に触発され、この「第五練習法」を編み出したのです。この辺のいきさつは、刊行予定『聖中心伝―肥田春充の生涯と強健術―』(青年編)に詳細に解説してありますので是非ご覧になって下さい。
さらに、この「第五練習法」はコーベットの練習法以外にも、参考にした運動法があるようです。それは、巽来次郎著『体力増大法』(教育図書出版協会 明治37年刊行)という本に発表された運動法です。図を見ればおわかりになります通り、手を腰に当てている所などはそっくりです。実はこの本は、「第五練習法」ばかりでなく他の「練習法」にも、「強健術」で重要な要素である「瞳光の不睨」、「下腹部の緊張」=「気合」などにも重大な影響を与えています。これらについても詳細は、刊行予定『聖中心伝―肥田春充の生涯と強健術―』(青年編)にゆずりたいと思います。
(図は、「第五練習法」を行う春充と、巽次郎の「隻脚前蹴運動」)
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