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2019年06月25日05:42

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「天真療法」案内123

前回、「強圧微動術(自療力誘導術)」は、いわゆる“動物磁気”や“氣”のような概念を排し徹頭徹尾、合理的、生理学的、心理学的な方法であることを見てきました。実は、「強圧微動術」の前身である「自療力誘導術」を考案してから約8年もの間、春充はこれを発表することをためらっていました。その理由を次のように言います。
一般、催眠術療法や、心霊療法などを、やる人達の態度に、平生慊(あきた)らなかった私は、其等(それら)のものと混同される事を、厭(いと)うたのは、其(そ)の重(おも)なるものの一つである。それで今まで、幾多(いくた)の先輩知人から、頻(しき)りに、其(そ)の公表を、強いられたけれども、終に肯(がえ)んぜずして、今日に至った次第である。(強圧微動術 P.8)
催眠術療法や心霊療法などのトンデモ療法と混同されることを避けたかったと言います。それらの一部は前回引用した文の中にいくつか名前が挙がっていました。ちなみに、当時「強圧微動術(自療力誘導術)」とよく似た代替医療に、患者や患部に手を当てたり、かざしたりして治療をする霊術家と呼ばれる一群の治療家達が存在しました。彼等は、前回にも登場しましたメスメルの「動物磁気」の影響を受け、それに独自の解釈を付け加え広がっていったものです。春充は、メスメルの「動物磁気」(メスメリズム)について次のように触れています。
千七百七十五年に至り、メスメルは、人間の病気に、影響を及ぼすものは、全く特別なる、一種の液体で、宇宙間に充満して居(い)る。それは、空気よりも、エーテルよりも、精微なもので、動物体と動物体とが、影響し合うのは、此の液体の波動に、よるのであると云(い)った。これが有名なる、動物磁気説である。(強圧微動術 P.184)
このように宇宙に目に見えないなんらかの流動的実態が存在していて、それを相手に手のひらを通して(触れていても、離れていてもよい)流し込むことにより病気が治るとの考えの原点は、メスメル(Franz Anton Mesmer:1734〜1815)にあります。これが明治30年代に日本に催眠術として伝わると、この目に見えない流動的実体「動物磁気」を、霊気、霊光線、生気、プラナ、霊子、生命放射線、霊光、人体放射能など様々な名をつけ、霊術家と呼ばれる人々が独自のトンデモ理論を展開していきます。これらは、現代のいわゆる「気功」特に「氣」を主に手より照射して相手の病気などを治すという「外気功」に影響を与えたといいます。元来「氣」という概念は中国医術、道教などで重視されていた概念ですが、体内の氣の流れ、バランスを整える技法である「導引術」、「吐納法」(呼吸法)などが宗教的、武術的修行法、養生法として発展していく中、近代日本の霊術の影響を受け独自の発達をして「外気功」となり日本に逆輸入されたものと言います。それは、霊術の一つ臼井式霊気療法が欧米に伝わり、それがレイキ(reiki)というヒーリング技法となって日本に逆輸入されたことと良く似ています。(ここまで、『霊術家の饗宴』井村宏次著 心文社刊、『癒しを生きた人々』田辺信太朗他編 専修大学出版局刊、『健康法と癒しの社会史』田中聡著 青弓社刊、『日本霊能史講座』 原田実 楽工社刊、『道教と気功』 李遠国著 人文書院刊、『気の伝統』鎌田茂雄著 人文書院刊 等を参考にしました)
春充は、これらの技法と混同されることを嫌い8年もの間、「強圧微動術」を発表することを控えたのです。特に、前回写真で紹介した「翳掌法」などは見た目から、それらと同じ技法と間違われる可能性は十分にあります。春充は機が熟するのを待ったのかもしれません。
(写真は、春充の生家前の道)
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