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2020年01月15日23:25

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M.Caillaudレトロプロブレム傑作選(19)

(18)Michel Caillaud(Europe Echecs 292 04/1983, 2nd HM)
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黒Qはどこで取られたか?(14+12)

 なくなった駒は白がQBの2枚で、黒はQSSPの4枚。白はa,f,gの各筋でPが駒取りをしていることが明らかである。ここで白Bg1に着目すると、白は右下において
(1)Bf1を戻す
(2)Pg2-g3と戻す
(3)Bg1を解放する
(4)Ph2xg3xf4と戻す
の順に逆算しなくてはいけないことになる。
 続いて、黒Kの侵入経路を考えてみると、これはh3を経由するルートしかない。従って、黒Kを白陣から脱出させる前にPg2-g3と戻すことはできないことも分かる。2枚の黒Rもまたh筋を経由していることが明らかなので、結局黒Ph4は2枚駒取りをしていることが判明した。なくなった白Bは白枡のものなので、黒Pがh4で取った駒はQであり、白Bはg6で取られている。では、以上を考慮して、実際に逆算してみよう。それは例えば以下のような順になる筈だ。

Retract:1.Rh2-g2 Pg5xQh4 2.Rh3-h2 Pg6-g5 3.Bh2-g1 Rg1-f1

(図1)
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 これ以降の逆算自体は容易である。前述した通り、h筋を経由して黒のKとRを脱出させれば良い。そしてこの局面において、設問に対する解答もまた得られている。
 問題は「黒Rh8をどうやって戻すか」である。その為には白Sh5を動かさなければならないが、白Pは戻せないから、黒Pf7-f6と戻す以外に方法はない。そうなると、その前に黒Kを初形位置に戻しておかねばならないが、もし手順中にどこかで黒Qをuncaptureしておくと、その際に例えば次のような局面を迎えることになる。

(図2)
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 しかし、この局面はillegalである。何故なら、白Sはf6からh5に跳んでいる筈だが、この際黒Kにはチェックを受ける手段がないではないか!つまり、黒QはSf6+の時点で既に存在しなかったのであり、設問に対する解答はd8ということになる。

 このように書くと、いかにもスッキリした議論のように見えるだろうが、実はここには1ヶ所決定的な間違いがある。実は、初手から黒Qをuncaptureする強烈な紛れ筋があるのだ(自分で解いたときには「黒Qは初形位置で取られたもの」と決め打ちしていたので、全く気付かなかったのだが)。実際に手を進めてみよう。

 出題図から Retract:1.Rh2xQg2 PgxQh4として黒Qを戻して逆算すると、以下のような局面が構成できる(途中の手順は省略)。

(紛れ図1)
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 このようにすれば、白Kをf3から解放することができる。続いて、白Ra1/黒Kb2の配置で黒Qをg2から送り込めば、以下の図となる。

(紛れ図2)
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 ここから黒Kをd1へ持って行って黒Qc1とすれば、白Rをb筋から外へ出すことができる。つまり、黒Qを遮蔽駒として利用することで、h筋ではなくb筋からRを解放することが可能になるのだ。
 同様にしてもう一枚の白Rも出せば黒Kがh3経由で脱出できるので、黒のKとQを初形位置に連れて行けば、次図になる。

(紛れ図3)
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 この局面において、Pg5-g6を保留していた効果が現れる。つまり、ここからPf7-f6と戻し、黒Rをh8に入れてからPh7xBg6-g5と戻せば、以下白Bをf1に持って行ってPg2-g3とすることで、f6を経由することなく白Sを解放することが可能になるのだ!ということは、最初の議論は誤りで、黒Qが取られた場所はd8ではなくh2なのだろうか?

 いや、やはりこの筋はillegalである。何故かというと、黒がf7-f6と突いてから白がRh2xQg2と駒取りをする迄には最短でも53.5手かかり、この間Pの着手も駒取りもないので、50手ルールに抵触するのだ!何という壮大な紛れ順であろうか…。 


 話を戻すが、このような黒Qが初形位置で取られていることを証明する問題はL.Cerianiが深く追求したテーマの一つであり、彼はそれに12種類もの意味付けを与えている。ここでCaillaudが使った意味付は以下の作と同じであるが、よりスッキリした表現になっている点がアピールポイントだろう。

(18-a)Luigi Ceriani (Vittorio de Barbieri Memorial Tourney 1943, 1st Prize)
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黒Qの初手は? (9+12)

 尚、この作品に関しては、以下で詳しく解説しているので、興味のある方は読んでみて欲しい。
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1941273534&owner_id=10857363

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(19)Michel Caillaud(Europe Echecs 304 04/1984, Com)
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Shortest helpmate? (8+13)

 設問は「最短手数で黒Kをバカ詰にせよ」というもの。現在の手番がどちらなのかは、逆算をすれば判明します。

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