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2017年06月10日22:17

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Retros on Weekends(21)

(20)Leonid M. Borodatow(Europe Echecs 373 01/1990)
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#1(9+11)

 白のなくなった駒はQBSSPPPの7枚。また、黒Ra8は外に出ることなく取られているので、黒Rは1枚成駒である。このことを考慮すると、黒の取られた駒はQRSSPの5枚ということになる。従って、a-c筋の白Pのうち成れるのは最大でも2枚。一方、Pの枚数から黒が作れる成駒はあと1枚だけ。以上を念頭に置いて、手番を考えてみよう。

 現在黒番だとすると白から戻すことになるが、一寸考えてみれば分かる通り、-1.Pf3xSg4 Sf6-g4 -2.Bf5-h3...とでもすれば、以下簡単に右下をほぐすことができる。よって問題は、現在白番が可能かどうかである。
 その場合は、-1...Kf1-g1 -2.Rf3xSf2が絶対で、その後の白の戻し手を作る為には黒もuncaptureしなければならない。つまり、-2...Sd1xSf2 -3.Se4xSf2までは必然である。

(図1)
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 これで自由に動けるSが発生したので、白黒双方とも戻し手に苦労することはなくなった。だが、それだけでは問題を解決したことにはならない。右下の凝り固まった配置をほぐすには、もう少し手間がかかる。

-3...Sd3xSf2 -4.Sc5-e4 Kg1xSf1 -5.Se4-f2 Pf2xQe1=B+

(図2)
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 何と、初形には1枚もなかったSが合わせて5枚も発生した!黒Be1の成を戻したことで更に密集してしまったが、以下白Qe1とRe2を外に出し、Pe2-e3と戻すことで、やっと膠着状態が解消されることになる。
 だが、これにて一件落着とはいかない。確かに右下の配置をほぐすことは可能だが、そもそも図2は合法局面なのだろうか?それを確認するためには、更にもう少し分析してみる必要がある。

 この局面において白のなくなった駒はBPP、黒のなくなった駒はQRB。また、明らかに黒Pf2は1枚駒取りをしている。Rに成った黒Pはc筋のものであり、Sに成った白PはRをb8で取っているに違いない。また、黒はもうこれ以上成を戻せない(既にPは8枚使われている)。

 さてここで、g筋のPに着目してみよう。このようなすれ違いは駒取りなしには生じないが、もし白Pが直進しているとすれば黒Pが2枚駒取りをしているし、逆に黒Pが直進しているとすれば白が2枚駒取りをしている。しかし、よく考えてみると前者は起こり得ないことが分かる。というのは、黒Pg2が2枚駒取りをしている場合、黒の駒取りはf-g筋で尽きている。これらの黒Pが取った駒の中にはa-c筋の白Pも含まれるが、これらを全て成ることは不可能である。従って、黒Pg2は直進していて、f-g筋の2枚の白Pが、2枚駒取りをしていることが分かった。
 白は黒Rb8も取る必要があるので、白側の駒取りはこれで尽きている。するとa-b筋の白Pはいずれも成ることができないので、直進途中で取られている。黒Pf2が取った駒は黒桝Bなので、取った桝はf2kかf4。また、白PはBf8を取っており、取った桝はf4かg3。すると桝目の色から白Pg4はg2にいたものではなく、白はcross captureしていることも分かった。

 これらを元に、実際に図2からの逆算手順を考えてみると、それは次のようなものになる。

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(1)Pe3xBf2
(2)Pf3-f4としてからBf2をe5へ
(3)Pf2xBg3-g4
(4)Pg4-g3-g2
(5)Bf1-h3
(6)Pg2xQf3

 このように、ちゃんと上の条件を満たしつつ実戦初形に戻せることが確かめられた。つまり、図2は合法な局面である。

 結局、出題図はどちらの手番だとしても矛盾を生じない。こういう場合は、Orthodoxの慣例に従って現在白番だとみなし、1.Rxe1#が正解となる。一寸スッキリしない感じもあるが、「これもまたレトロ」ということでご了承頂きたい。

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(21)Jean-Michel Trillon (Rex Multiplex 1985 , 2nd Prize)
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#1 Grid Chess (12+9)
キャスリングは全て可能である

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