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2017年02月24日22:24

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「カピタン」研究(86)

2)Queen's CrossとRoyal-Kingの組み合わせ

 最終手、12通り(理論的最大値)のQを動かしての詰め方を演出する作品を12 QueenまたはQueen's crossと云う(前述)。同様に、最終手、攻方Kを動かして、開き王手で敵Kを詰め上げられる最大数は6通り。これを達成した作品をRoyal Kingと云う。(この他、Sは8通り、Rは14通り、Bは13通り、Pは4通りが理論的最大数である)これらのテーマをどれか一つ達成するだけでも大変だが、一流のプロブレミストはそれを二つ組み合わせてみせるのである。

(I)Adolf F. Rudolph
St. Louis Globe-Democrat 1911
フォト
#2(11+10)

1.Rg4 zz
1...Bb2 2.Qxb2#
1...Bc3 2.Qxc3#
1...Bd4 2.Qxd4#
1...e1=Q 2.Qxe1#
1...f4 2.Qe4#
1...xh4 2.Qf4#
1...Rc8 2.Qxa5#
1...Rb5 2.Qxb5#
1...Rb8 2.Qxb8#
1...Rc5 2.Qxc5#
1...e6 2.Qd6#
1...Bxc6 2.Qxe7#
1...Qf7+ 2.Kxf7#
1...R8a7 2.Kf8#
1...Qxg4/Qg6+ 2.Kg6/Kxg6#
1...Rg8 2.Kxg8#
1...Qh6+ 2.Kxh6#
1...Qxh7+ 2.Kxh7#
1...Rd5 2.Sc4#

Q12+K6の大記録。この創作は至難だろう。


3)「八方騎」と「玉方Self-interference」と「玉方Self-block」

 八方騎などのように、特定の駒が理論的に可能な最大種類動き廻り、それに対してそれぞれ違う詰め方が準備されている問題をTask-problem(極限条件作)と云う。最もポピュラーな守備駒のTask-problemとしては八方騎(Knight-Wheel)が挙げられる。(なお玉方の八方騎はKnight-Wheelと云うが、攻方の八方騎はなぜかKnight-Tourと呼ぶ)


(J)Godfrey F. Heathcote
Hampstead and Highgate Express 1905, 1st Prize
フォト
#2(10+11)

1. Rcc7 (2.Sc3#)
1...Se6 2.Red7#(*1)
1...Sc6 2.Rcd7#(*1)
1...Sb5 2.Rc5#(*2)
1...Sxb3 2.Qd3#(*3)
1...Sc2 2.b4#(*2)
1...Se2 2.Qxh5#(*2)
1...Sf3 2.Qe4#(*2)
1...Sf5 2.Re5#(*2)

(*1=self-block, *2=self-interference, *3=self-pin)

 本作は名作中の名作である。初手Rcc7がチェスプロブレム好みの妙手(Rc8なら普通の好手。なぜRc8では駄目でRc7なのか、考えて見て頂きたい)であるばかりか、8通りのS跳びが単なる八方跳びでなく、全てこれまで述べたチェスプロブレム固有のテーマを表現している。Self-interference5回と云うだけでもちょっとした記録だが、更にSelf-block2回、Self-pin1回と云う盛だくさんで、しかもそれが八方騎のTask-problemになっているのである。

 組み合わせはまだ幾らでも考えられ、素晴らしい作品も幾らでもあげられるが、一応ここらにしておきたい。
 ここらまでが「2手問題」の序論である(まだ序論ですぞ)。幾らか「2手問題」のココロが判って頂けただろうか。凄い事をやると感心されたかもしれないが、ここらまでは近代2手問題開拓史初期の比較的判りやすいテーマである。
 この後、2手問題には前衛的テーマが次々と考案され、ユニークな発展を遂げ、一般には理解しにくい前衛作品が作られるようになる。これこそ2手問題の真髄と云えるのだが、あまり長くなるので次回に述べることにしたい。
 本稿はこの後、2手問題について1・2回と、長手数問題について1回程度書きたいと考えており、通読して頂けると、ほぼチェスプロブレムの全貌が理解して頂けるものと思う。ご愛読をお願いしたい。
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