今日からは、カピタン33号(昭和61年2月号)を読んでいこう。お目当ては勿論「チェスプロブレムの世界」だ。
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チェスプロブレムの世界(2)―3手問題について― 門脇芳雄
チェスプロブレムの中で最も近代的なのは「2手詰」なのだが、記述の都合で今回は「3手詰」について述べる。3手詰はオーソドックスな形式で、かつては難しすぎもせず、易しすぎもせぬ理想の姿と考えられた。今では2手詰の方が主流になってしまったが、3手詰は2手詰と異頂の世界で、今でもファンは少なくない。
3手詰は大別すると難解派と清楚詰派に分かれるが、筆者は次のように分類したいと考えている。
1、オーソドックス型
2、構想派(Strategic)
3、ボヘミヤ派(Bohemian)
4、構成派(Construction)
5、条件創作派(Task Problem)
次に、各項毎に例を挙げて説明しよう。
(1)オーソドックス型
普通のタイプの3手詰である。歴史的にも最も古い「標準型」チェスプロブレムといえる。たいていは、ぼんやりした初手に始まる。具体的詰みを狙っている場合もあるし、ただの手待ちの場合もある(後者の方が高級)。玉方の応手に応じて、2手目からのカラフルな詰め方が何通りか展開する。何通りもカラフルな詰め方があるのがチェスプロブレムの特徴であり、イノチである。
(A)Samuel Loyd
The Chess Monthly 1857
#3 (4+3)
1. Sg4+
1...Kh3 2.Sh2 xh2 3.Qh8#
1...Kh1 2.Qh2+ xh2 3.Sf2#
1...Kf3 2.Qc2 g2 3.Qd3#
1...Kf1 2.Ra8 --- 3.Ra1#
初手以下4通りに岐れ、各々別の問題を解く感じ。ブリタニカ百科事典にチェスプロブレムの例題として出ている図。
(B)Arthur Ford Mackenzie
British Chess Magazine 1902, 1st Prize
#3 (10+8)
1.Sf5
1...a6 2.Qh3 xf5/--- 3.Qxf5/Se7#
1...c3 2.Qb1 Kxe6/Kc4 3.Sc5/Se3#
1...Kxe6 2. Sc5+ Kxf5 3.Qh3#
1...g5 2.Bg4 Kxe6/Pc3 3.Sc5/Se3#
1...gxf5 2. Qd1+ Kxe6 3.Qd6#
1...Sf7 2.Kxf7 xf5 3.Qd1#
作者は20年間、入賞に次ぐ入賞の流行作家だったが、晩年視力を失った。本題は盲目になってからの傑作。これくらい内容の豊富な3手詰は珍しい。
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