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2016年06月24日23:00

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温故知新(521号-01)

 今日読んでいるのは、詰パラ521号(平成11年8月号)。大学院を見ると、伊藤正氏と橋本孝治氏という大家二人の揃い踏みだ。早速、伊藤氏の作品から見ていくことにしよう。

I.TADASHI「馬×馬」
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(詰パラ 平成11年8月号、第38期看寿賞)

 33歩、同玉、44角成、42玉、52角成、32玉、54馬、イ23玉、

イ43金は同馬、同飛、同馬、同玉、83龍、32玉、34飛、21玉、31飛成、
 同玉、32歩、同玉、33銀以下。

(8手目の局面)
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 適度な変化を伴った8手の序を経て、馬鋸の舞台装置が姿を現す。では、馬を動かしてみて、それがどのような効果を生むのか調べてみよう。

「34馬、13玉、35馬、ロ23玉、45馬右…68馬、ハ23玉、78馬、33玉、
 34馬、42玉、52馬、33玉」

(30手目の局面)
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ロ24桂は同馬、12玉、13歩、同飛、同馬、同玉、14飛以下。
ハ同銀は19龍、23玉、14龍、33玉、34龍以下。

 89龍配置により、68馬を同銀とは取れない。78馬によって33玉を強制し、折角引いた馬をまた52に戻してしまうが、これで局面はどう変化したのか?

『55馬、32玉、65馬、23玉』

(34手目の局面)
フォト

 ここでやっと作者の企みが見えてくる。52馬-33玉のときのみ、もう一枚の馬が鋸引き可能なのだ!何と独創的かつ巧妙な構成だろうか。

「34馬、13玉…52馬、33玉」
『66馬、32玉、76馬、23玉』
「34馬、13玉…52馬、33玉」
『77馬、32玉、87馬、23玉』
「34馬、13玉…52馬、33玉」
『88馬、32玉、98馬、23玉』
「34馬、13玉…52馬、33玉」
『88馬、32玉、87馬、23玉』
「34馬、13玉…52馬、33玉」
『77馬、32玉、76馬、23玉』
「34馬、13玉…52馬、33玉」
『66馬、32玉、65馬、23玉』
「34馬、13玉…52馬、33玉」
『55馬、32玉、54馬、23玉』
 34馬、13玉、35馬、23玉、45馬右…78馬、33玉、34馬、42玉、
 43歩、51玉、52歩、61玉、71香成、同玉、81歩成、61玉、71と、同玉、
 81龍、同成桂、同銀成、ニ61玉、53桂、同飛、71成銀、同玉、53馬、81玉、
 45馬、92玉、82飛、同玉、73歩成、91玉、81馬、同玉、71馬、同玉、
 72と迄267手詰。

ニ同玉は63馬、92玉、82飛、同玉、73歩成、91玉、82と、同玉、73馬以下。

 最後も主役の馬を二枚とも消し去って、完璧に着地する。「馬×馬」という即物的な命名には(更に言うならペンネームにも)若干の違和感を感じるが、作品の仕上がり具合は流石の出来栄えだ。

 古来より馬鋸と他の趣向手順との組み合わせには多くの作例があるが、意外なことに、馬鋸と馬鋸の組み合わせというのは殆ど試みられていなかった(単なる馬鋸の「足し算」ならいくらでもある。その方向での一つの到達点は「六冠馬」か)。その数少ない先行作が以下の作品だ。


(参考図)西田 毅
フォト
(詰パラ 詰パラ 平成5年4月号)

32歩成、同飛、41と、同玉、51歩成、31玉、41と、同玉、45香、31玉、
32角成、同玉、34飛、33角、同飛成、同玉、66馬、55と
「51角、32玉、42角成、21玉、43馬、31玉、53馬、21玉、54馬、32飛、
 同馬、同玉」
『76馬、65と、34飛、33角、同飛成、同玉、77馬、55と』
「51角…42角成…54馬…」
『87馬…88馬…』
「51角…42角成…54馬…」
『87馬…88馬…』
「51角…42角成…54馬…」
『98馬…88馬…』
「51角…42角成…54馬…」
『87馬…77馬…』
「51角…42角成…54馬…」
 76馬、65と、33歩、21玉、41飛、31角、同飛成、同玉、75角、同歩、
 41香成、同玉、85馬、42玉、41飛、33玉、34銀、同玉、52馬、23玉、
 43飛成、14玉、41馬迄133手詰。

 サブの馬鋸の軌跡が短いのが不満ではあるが、明らかに「馬×馬」と同様の方向性を持った作品。収束に入ってからの75角も妙手。
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