(46)Hans Heinrich Schmitz(feenschach 11-12/1963)
#2 Proca Retractor(3+4)
Retractorに分類される作品は、基本的に全て「過去にあった1手詰の局面を復元すること」が目的です。そして、逆算の際に黒が白に協力してくれるタイプをHelp Retractor、黒が白に抵抗するタイプをDefensive Retractorと呼びます。
Proca Retractorは後者に属し、従って白は黒の逆算を巧く制限するような形で手を戻す必要があります。このようなDefensive Retractorのうち、特に手を戻す際「その手が駒取りかどうか、そして駒取りの場合は何を取ったのか」を、手を戻す側が決定できるのがProca Retractorです。
手数表記についても説明しておきましょう。#2というのは、戻す手数についての表記です。Orthodoxと同じように数えますので、本作では白黒白と戻してから、更に白が1手指して詰める手順を求めていることになります。又、当然のことながら、手順中に不可能局面を作ってはいけません。尚、手順については、駒取りを戻したことが分かり易いように、例えばQa1-a2(+P)と表記することにします。
例題を一つ紹介しましょう。
Robert Lürig(Funkschach 30/05/1926)
#2 Proca Retractor(5+2)
作意は、Retract:-1.Ra1-e1(+B) Ba5-e1+ -2.Ra4-a1 & 1.Rh4# となります。
ちなみに、黒Sを戻したりすると-1...Kh2-h1(+R)とされて逃れます。
(47)Michel Caillaud(Problemesis 8 04/1999, 1st Prize)
Proof Game in 17.0 moves(13+13)
(48)George C. Alvey(The Chess Amateur 05/1924)
#2 Høeg Retractor(4+5)
Høeg RetractorもProca Retractorと同様、Defensive Retractorに分類されます。但し、Procaとは逆に「その手が駒取りかどうか、そして駒取りの場合は何を取ったのか」を決定するのは、取った側ではなく取られた側です。黒の逆算を制限するような方向で戻さないと巧く行かないのは、Høegも同様です。一見Procaよりも更に黒の抵抗が強くなるように思えますが、黒の着手において白が有利な駒を戻す手も生じるので、どちらが難しいかは一概には言えないようです。
例題を一つ紹介しましょう。
Norbert Kovacs, Dezsö Elekes(Magyar Sakkvilag 09/1924)
#1 Høeg Retractor(7+4)
作意は
-1.Pf5xh6?? but +bPg5!
-1.Pd5xc6?? but +bPc5!
-1.Ph5xg6(+X) & 1.Rxg6#
-1.Ph5xg6 e.p.(+Pg5) & 1.Rf3#
というもの。一見、Pf5やPd5と戻しても良さそうですが、これらはいずれも逃れ。en passantに対応できるPh5のみが正解となります。
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