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2020年10月15日20:34

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『くちぶえカルテット』共感できてちょい泣ける一冊。音、を、楽しみたい人たちへ。

タイトルを見た瞬間、買わなきゃ、と思った一冊。

『くちぶえカルテット』モノカキ・アエル、実業之日本社文庫
フォト

ISBN978-4-408-55625-3
700円別

ゴスカルというハンドルネームにカルテット、入ってるわけだし、口笛、歯笛、指笛という楽器なしでできる音楽演奏は小学生くらいからのライフワーク(動画サイトなんて無い時代に児童書の主人公が「指笛を吹いた」という文字情報のみを頼りに1本指真っ直ぐ(真っ直ぐは鳴らないが曲げれば鳴る)から指笛の吹き方を自得した)みたいなもんなので。ま、動画投稿なんてレベルにはどれも到達せずに終わってるけど・・・・

この本の主人公たちは、吹奏楽部に関わりを(なぜ濁すかは本文参照)もつ高校1年生の女子たち。想定として、県大会は金賞、地区大会は突破できずにいるというから、そこそこ強豪の私立の中高一貫校の吹奏楽部が舞台。

メインとなる1人は声にコンプレックスをもつあまり人見知りをこじらせていたが、中3でみた吹奏楽の野球部応援にビビっと(古い?)来て、高校デビューを夢見て吹奏楽部に。熾烈な楽器争奪戦に負けてトロンボーンになる。しかし、人によっては小学校から楽器に触れていたという強豪校ありがちな周りとのギャップに5月で早くも挫折しそうになっている。そこに幼なじみで父親がトランペッターだが失踪している少女が絡み(彼女はいつか演奏で父親に発見してもらうことを夢見てトランペット)、挫折から逃れるキッカケとして出てくるのが、口笛。

こじらせ少女により、ある日披露された口笛の音色に惚れ込み、トランペット少女は全く音が出ないところからガッツリのめりこみ、片親で高校生をするための必須要件、特待生も棒に振るかの勢いで練習しまくる。そして、イマドキ、らしくソロでの演奏を動画投稿。そこについた好意的なコメントのアドバイスにさらにのめりこむ。

当然、吹奏楽部での活動にも様々な局面で葛藤がうまれ、チャラいけど口笛が抜群にうまい女子、や、音楽一家で家族とかぶらなかったマリンバなら誰よりも巧いと自負する少女、らが加わってカルテット、が作られるのだが、物議を醸した動画投稿を乗り越えての吹奏楽部員をバックにしての口笛カルテット、そして、と結末まで一喜一憂しながら一気に読まされてしまう一冊だった。

大ヒットしアニメにもなった「響けユーフォニウム」ほどは吹奏楽部での活動描写には重きは置かれていないが、ぶっきらぼうな指導者でめきめきクリアなハーモニーが作られる情景などは経験者なら誰もがうなづくだろう。

また、章のタイトルが「カントリーロード」や「かえるのうた」など歌詞の意味や演奏のスタイルなど縦横絡み合いつつ、いくつもの伏線がきれいに回収されるところなども読みどころ。

声にコンプレックス、ではないが人見知りで、初対面に話しかけたりするのは相当に努力が必要な自分にとって、こじらせ人見知りの主人公はけっこう共感できる。いろいろな経験を経て主人公それぞれのコンプレックスが解消されていくのも、「リアルはここまで楽じゃないよ」と思いつつ快感でもある。

音楽、楽しむ音、でありたい人なら誰にでもしっくりくる一冊だと思う。
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