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2020年12月06日00:05

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「燃ゆる女の肖像」女性画家と孤島の令嬢

18世紀末の孤島の邸宅で、女性画家とモデルの令嬢の繰り広げる、
とても繊細で美しい作品・セリーヌ・シアマ監督の女性ならではの視線。

「燃ゆる女の肖像」
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=10258677&id=5057684

https://gaga.ne.jp/portrait/

少女たちが描いているのは、絵の教師マリアンヌ(ノエミ・メルラン)。
勝手に少女たちが持ち出した彼女の絵に描かれているのは、
暗い海辺でスカートに火がついている女性。マリアンヌは追憶する。

1770年代、5人の男が漕ぐ小舟でマリアンヌはブルターニュの孤島に渡る。
キャンバスが流され、彼女は海に飛び込んで拾う。このシーンだけで
マリアンヌの責任感や物怖じしない強い性格が描き出される。

島の邸宅に住む貴族の夫人(ヴァレリア・ゴリノ)から、
娘をミラノに嫁がせるための肖像画を描いて欲しいと注文されたのだ。
その夫人の肖像画を描いたのは、マリアンヌの父親という縁。

しかし、娘エロイーズ(アデル・エネル)は、描かれることを拒否。
目的を隠し、散歩の付き添いをして、観察して描くことになる。

彼女が画家と知ったエロイーズ。しかし、仕上がった絵を嫌う。
マリアンヌは5日ほど出かける夫人とともに帰る予定だったが、
エロイーズはモデルになると言い、その間の猶予を与えられる。

夫人の留守に親密になったエロイーズは見知らぬ男に嫁ぐことを嘆き、
マリアンヌは自由だという。しかしマリアンヌは、女性画家の
描くものも決められ、作品の発表も出来ない不自由さを告げる。

衣裳も赤煉瓦色のマリアンヌ、尼僧院のままの紺色のエロイーズ、
モデル用にはつややかなサテンの緑色のドレスと、鮮やかで対照的。

幼さの残る女中ソフィ(ルアナ・バイラミ)の小花刺繍の素朴な服。
マリアンヌやソフィの襟元のアンダードレスは木綿のフリルだけど、
エロイーズの襟元にはレースが使われているなど細やか。

夫人の留守中に発覚した、女中のソフィの妊娠と堕胎、
夜の暗闇の中、女たちの焚火と合唱、火の付いたスカート、
マリアンヌがピアノを叩く、ヴィヴァルディの「夏」、
オルフェと妻の黄泉の国のギリシャ神話を朗読するエロイーズ。

静謐に淡々とストーリーは流れていくが、表情の細やかさ、
モデルを見、キャンバスを見るマリアンヌの真剣な顔は美しい。
笑わない修道女さながらのエロイーズがふと見せる繊細な笑顔、
まだ幼さの残るソフィの生真面目に運命を受け入れていく姿。

最後のマリアンヌの描いた絵、そしてエロイーズ母娘の絵、
ヴァヴァルディの「夏」を聴きながら、エロイーズの流す涙と、
それを痛いほど見つめるマリアンヌの視線に心が揺振られる。

思いのままに生きられない時代を、それでも自分の思いを込めて、
愛し合う時を持ち得たことが、その後を幸せにしたのか不幸にしたのか。
音楽が映像と重なって効果的で、忘れられない深い印象を残す。
もう、とっても私の好みでした!
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