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2020年10月23日16:19

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「博士と狂人」辞書作りの膨大さと人の心の深淵と

これで辞書作りの映画3本目、「舟を編む」は日本語、
「マルモイことば集め」は韓国語、これが英語。そして実話だ。

「博士と狂人」
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=10258677&id=5035411

https://hakase-kyojin.jp/

「オックスフォード英語大辞典」(OED)の編纂に1857年からあたる
言語学協会の学者たちは、20年を超えても進まず、行き詰っていた。
1878年、在野の語学の天才ジェームズ・マレー(メル・ギブソン)が自薦。

大学も出ておらず、博士号もないと怪しまれ、難問をパスする。

編集主幹となり、「5年から7年」と豪語して始めるが…。

1つの単語を、12世紀頃から現在まであらゆる文献から探し、
その言葉の素性、使われ方の歴史的変化を追って定義していく。
マレーの提案で、国民にも呼び掛けて例文を探してもらう。
(「マルモイ」も、各地の方言集めを呼び掛けていた)

米国人のウィリアム・チェスター・マイナー(ショーン・ペン)は、
殺人犯として収監された精神科病院でチラシを見て興味を持つ。

彼は外科医。南北戦争のアイルランド人兵士の脱走兵(Deserter)の
頬にDの焼き印を押す酷い行為のトラウマから妄想・幻視を起こし、
彼に襲われたと思い込んで、関係のない男メレットを殺したのだ。

精神科病院で事故に合った警備人を救ったことから厚遇を受け、
幸い院長はマイナーの頼みを理解し、本やペンを与えた。

彼はせっせと古典を紐解き、膨大な言語カードを作っては送る。
マレーは、その知識に驚き、精神病院を訪ね友情を育んだ。

マイナーはメレット夫人(ナタリー・ドーマー)と子供達に、
償いとして軍人恩給を送ろうとするが、拒否される。

メレット夫人への使いは警備人のマンシー(エディ・マーサン)。
この人柄が何とも温かく優しさに満ちていてホッとさせられた。
脇役の彼こそがストーリーの要になり、心に深く残った。

マイナーの多大な協力で、1984年、A〜Bの項目は完成。
世間は犯罪者が英国の威信をかけた辞書に協力したと大騒ぎ。

マレーは矢面に立たされ、編集主幹の座も追われそうになり、
政治家、チャーチル首相、王室までも巻き込んでの展開に。

マレーの辞書編纂の凄まじい困難と、彼を支える家族の姿や、
マイナーのメレット夫人への贖罪、彼女の許しの物語が進む。

許されれば許されるほど、苦悩の深まっていくマイナー。
最後に統合失調症と明かされるが、当時は薬が無かったのだ。
1960年代に薬が行き渡って、社会生活に復帰出来るようになった。

ギブソンとペンの演技は観るに値する。脇役も心を打つ。
部屋に張り巡らされた無数のカードと膨大な本の数、
それでも抜けが起きかねないという辞書作りの大変さも。

OED全10巻はマレーの死後、1927年の完成。実に70年を要した。
(89年に第2版20巻、88年から電子版、2000年から第3版製作中)
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