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2020年03月23日21:23

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「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」 文通相手の少年が語る

もともとあまり物事に執着しないし、物覚えも悪いので、
この監督作品、この俳優という追っかけで映画を見ることは少ない。

ただ、グザヴィエ・ドランは「わたしはロランス」を観て名を知り、
続けて観た「マイ・マミー」ともども何か引っかかるものを感じて以来、
彼の7本の監督作品のうち5本+出演作1本を観ている。

「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=10258677&id=4926218

http://www.phantom-film.com/donovan/

2006年、TVスターのジョン・F・ドノヴァン(キット・ハリントン)が
ニューヨークの自宅で死亡。29歳。TVニュースは睡眠薬自殺と伝える。

11歳から5年間、文通を続けたルパート(ジェイコブ・トレンブレイ)は、
子役から俳優(ベン・シュネッツァー)になり、ジョンの手紙をまとめた本を出版。
2017年に記者(タンディ・ニュートン)にインタビューを受ける。

この枠組みの中で、ジョンとルパートの5年間が語られていく。
まるでやる気のなかった政治記者が、話に引き込まれていったのは、
人間の痛みや悲しみ、希望(と私は思う)の普遍性を感じたからだろう。

ルパートの母(ナタリー・ポートマン)は離婚して英国に引っ越し、
女優を諦めて、ルパートの子役としての成功を願う。

引っ越しで変わった環境、なじめない学校でのいじめ。
ジョンとの文通を作文に書いて発表した日、手紙を盗んだ友達の家に、
ルパートが取り返しに行って捕まり、警察に母親が呼ばれる。

先生も母親もルパートに良かれと願うが、彼の思いとはすれ違う。
文通を母に言わなかったことで、「嘘をついていた」と責められるが、
子供にも誰にも言わない大事な秘密くらいあるだろう。
もし親が知ってしまっても、黙っている方が良いくらい大事なものが。

一方、ゲイの相手の家を訪ね、家族が来ているからと断られるジョン。
執拗なからかいに暴力を振るい、期待の次作の役を外された失意。
観ていて辛くなるような思いがする。

ジョンが実家に帰ると、母親(スーザン・サランドン)は歓待するが、
それはジョンの願うような受け入れ方ではない。

「私はすべて分かっている」と母親の立場で言うけれど、
母と子供は全くの別人格であることをつくづく思わされる。

ほとんど母のようであっただろうマネージャー(キャシー・ベイツ)の
別れの言葉は正しい。だがジョンの痛みを彼女すら理解できていなかった。

ジョンにとってルパートは、子供向けに書く心遣いは必要だったが、
自分の一番良い部分で素直に書ける手紙は、至上の時間だったのだろう。

ジョンがルパートによく手紙を書いていたという厨房で、出会った
老人(マイケル・ガンボン)の話に、ジョンは希望を得たと私は思う。
ドランの作品はいろんなことがどちらにも取れるところも多いのだが。

トレンブレイ、ポートマンは、豊かな表現で引き込む。
シュネッツァー、ハリントンは、むしろ静かな表現で疼かせる。
登場人物の心に寄り添いながら観ると、心に深く沁みてくる。

ドランは子供の頃、憧れていたディカプリオに手紙を出したそうだ。
その体験が基になっているとか。返事は来たのかな。ちょっと気になる。

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