mixiユーザー(id:10258677)

2020年03月13日20:13

92 view

「ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像」 老人と孫息子の邂逅

フィンランドの映画って、私には大ヒットすることが多い。
これも地味という評も多く、確かに地味だったがしみじみ心に沁みる。
老いの寂しさ、家庭を顧みない父親と娘の苦労、老人と孫の出会い…。
監督は、「ヤコブへの手紙」のクラウス・ハロ。納得。

ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=10258677&id=4919318
https://lastdeal-movie.com/


オラヴィ(ヘイッキ・ノウシアイネン)は美術商だが、
ギャラリーの運営は上手くいっていない。絵は売れ残っている。
年も取ってリタイアも考えるが、最後に名画を扱いたいと願う。

妻が亡くなって付合いも途絶えた一人娘レア(ピルヨ・ロンカ)から、
突然の電話で、孫息子オットー(アモス・ブロテルス)を、
学校課題の職業体験のために数日間、店で預かってほしいという。

盗難で指導されたため受け入れるところがないからと母親は言う。
オットーは、まとめて仕入れて定価で売って儲けたお金だと説明する。

オラヴィがオットーを美術館に連れていき、様々な絵を見せて解説するシーン、
老人と子供の絵に「未来に生きるものと、生を終えようとするもの」。

オラヴィはオークションの下見で作者不明の肖像画に目を止めた。
ロシアの巨匠イリヤ・レーピンの作品と思うが署名がなく証拠がない。
買いたい。4日後のオークションまでに何とか確信を得たい。

イリヤ・レーピン(1844-1930)は、日本でも展覧会が開かれ、
「ヴォルガの船曳き」や「イワン雷帝と息子イワン」など、
覚えのある人もいるだろう。トルストイやムソルグスキーも描いている。

2人で図書館の目録を1ページずつ確認。図録に同じサイズがあるが、
なんと写真が出ていない。作品の元の持ち主は? 絵の題は?
そしてなぜ署名がないのか? オットーはネット検索し、元の持ち主を探る。

いよいよオークション。1300ユーロで始まった値付けは、とうとう9000ユーロ。
オラヴィは1万ユーロ、槌は降ろされる。(ここはなかなかのスリル)
しかし、オラヴィはお金がない。さてどうする?

オットーは母から困難な時に、オラヴィが助けてくれなかったと聞いていただろう。
しかし課題の評価を気にしながら一緒に働くうちに、心を開いていく。
店番で絵を高く売りつけたり、レーピンが売れたらお小遣いをと交渉したり、
この子、きっと母親やオラヴィよりは、たくましい商売人になりそうだ。

それに比べ、仕入れ値を調べてそれで買う(店の手間代は?)という客や、
レーピン作と知ってから同じ値段で買い戻すという大人たちの汚いこと。

オットーのお礼の葉書、美術館に出したメールの返事。
キリストのまなざしのもとで、孤独なオラヴィに至福の時だっただろう。
このシーンに泣かされました。

「Last Deal」は「最終取引」だけれど、
原題は「Tumma Kristus」で「暗い(黒い?)キリスト」、絵の通り。
★は4.5でもいいかな。私好みです。

12 13

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する