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2020年01月10日23:59

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「家族を想うとき」 働けど働けど…

本当は年末に観たかったのだけれど、新年の鑑賞第一作。
「わたしは、ダニエル・ブレイク」で、高齢者やシングル・マザーなど、
社会の底辺に生きる人たちの苦しさと、尊厳を描いたケン・ローチ監督。

80歳を超えて、「ダニエル・ブレイク」で引退と発言していたが、
どうしても訴えたいことがある。それは働いても報われない人々のこと。
その思いが溢れて、この「家族を想うとき」になったそうだ。

「家族を想うとき」
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=10258677&id=4875522
https://longride.jp/kazoku/

土木・建築の肉体労働を転々としてきたリッキー(クリス・ヒッチェン)は、
フランチャイズの宅配ドライバーになる。個人事業主として、
働けば働くほど稼げると聞いたが、まずは自分で車を買わなくてはならない。

妻のアビー(デニー・ハニーウッド)は、パートで働く介護士。
高齢者の家を回るために使っていた車を売って、宅配の車に買い替える。
バスで通わなくてはならなくなったアビーは時間を取られ、
子供たちと過ごす時間がどんどん減ってしまう。

高校生の息子セブは、仲間と塀にペンキ絵を描き、万引きするなど、
何かと問題を起こして、その度に親の仕事は中断される。
小学生の娘ライザ・ジェーンは何とか家族の仲を取り持とうとするが…。


個人事業主というが、さまざまな規則があって、配達時間に遅れたり、
休むと罰則金を取られ、儲けが無くなってしまう。

娘と一緒の時を過ごそうと配送車に乗せると、違反だと咎められる。
セブの「昔の父さんに戻って」との叫び、
リッキーがつぶやく「俺たちどうした…」の切なさ。

普通の家族のささやかな幸せな時間が奪われていく。
原題の「Sorry We Missed You」は、不在連絡票の言葉だそうだ。


観ていて思ったのは、日本のコンビニで起きている問題。
同じフランチャイズ方式で24時間営業、休日ナシなど過酷な条件。
本部は品物が売れれば儲かる。店のオーナーは働き手を確保せねばならない。
夫婦で回していて、年末年始を休みとしたら解約されてしまったとか。

コンビニが24時間開いていれば便利、ネットで頼めば翌日配達される…
私たちは便利さを享受して慣れて、当然と思ってしまう。

しかし便利を支えるシステムが、人間を過酷なほどに働かせるのなら、
私は便利を幾らか捨てても良い。便利、効率ばかり追求はしたくない。
その先に、効率の悪い人間を切り捨てる思想に行きつくから。

少し前まで、どんな店でもデパートでも休みがあるのは普通だった。
コンビニもそれでいいのではないか。
荷物は翌日に配達されなくても、3,4日待っても構わないのではないか。
急ぐ人は特別料金、速達料金を支払えばよい。

それでは経済から言えば、競争に負けてしまうということなのだろうが、
人間の経済競争も行き過ぎれば人権問題になっているのではないか。

これを「自己責任」と言い放つ人もいるようだが、
日本の中流家庭が、高齢になると大半が貧困に陥るという予測がある。
いま、仕事がある人も失業する率が高まるという予測もある。

政策や法律、経済ですら、本当は人間のためにあるはずだ。
人間を、家族を損なうような働き方を強いるのは、どう考えてもおかしい。

経済のために、人間を損なうようなことをしてはならないのだ。
ケン・ローチ監督の思いをしっかり受け止めたい。★5
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