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2019年01月16日10:45

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「メアリーの総て」『フランケンシュタイン』の作者は18歳の少女

『フランケンシュタイン』というと、その名の学生が、
化学と錬金術を施して、死体から作り出した怪物。
眉庇の下の哀しそうな奥目、継ぎはぎの顔が浮かぶ。
手塚治虫の漫画にも出てきた。

それを書いたのが10代の女性で、詩人シェリーの奥さん…
それをエル・ファニングが…となれば観ないわけにはいかない。

「メアリーの総て」
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=10258677&id=4630810
https://gaga.ne.jp/maryshelley/

19世紀初頭、ロンドンの本屋を営むアナキストの父親と、
女権論者の母に生まれたメアリー(エル・ファニング)。
母は産褥熱で死亡し。メアリーは継母と上手くいかない。
亡き母の墓の傍らで、趣味の怪奇小説を読む日々。

連れ子のクレア(ベル・パウリー)はメアリーを慕っている。
メアリーは父の影響で教養のある16歳の少女に育った。

この時代の雰囲気が良く出ている。街並みや衣装、
庶民の貧しい暮らし、貴族の華やかな暮らし。
旧世代の慣習から、新時代への知識や思想が萌しても
女性蔑視や、結婚や恋愛への意識は簡単には変わらない。

メアリーは詩人のシェリー(ダグラス・ブース)に一目惚れ。
しかしシェリーには別居中とはいえ妻子がいた。父は激怒。
シェリーとメアリーの駆け落ちに、何とクレアもついてくる。

自由恋愛を言うシェリーだが、メアリーは苦しむ。
クレアはバイロン(トム・スターリッジ)の子を妊娠し、
ジュネーヴの彼のもとへ3人で押し掛ける。

そこでバイロンは侍医のポリドリを加えた5人で、
恐怖をテーマの短編を発表し合おうと提案。
このディオダディ荘の怪奇談義がメアリーの
『フランケンシュタイン』執筆のきっかけと言われる。
驚くことに18歳の若書きなのだ。

シェリーやバイロンの放埓ともいえる自由恋愛は、
結局は妊娠や子育てをする女性に負担を与える。
メアリーもシェリーの女性関係と貧困に悩まされ、
生まれて間もない子供まで失うはめになる。

この時代、女性は一段低く扱われ、メアリーの本の、
初版にはシェリーの推薦文はあっても作者の名がない。
ポリドリの『吸血鬼』も無名だからと、バイロンの作とされた。

『フランケンシュタイン』の怪物の苦しみ悲しみは、
メアリーがシェリーとの暮らしで味わった心情であったという。

かの有名な社交界の寵児、詩人バイロンの登場や
クレア、ポリドリなど映画の彩りかと思ったが、
ちょっと調べたら、どれもほぼ真実。知らなかっただけ。

シェリーは、学生時代に授業で「冬来たりなば春遠からじ」
“If Winter comes, can Spring be far behind?”が結句の
『西風に寄せる詩』“Ode to the West Wind”を、
暗記した覚えがある。まさかこんな人生を送っていたとは。

少女の成長物語(ファニングももう少女じゃない!)、
この時代の女性、恋愛の数々といった作品として観られるが、
英国文学に興味を持って少し調べるだけで面白さは倍増した。

「少女は自転車にのって」のサウジアラビア出身の女性監督。
今も抑圧されている母国の女性と、19世紀英国のメアリーが重なる。
その思いが切実に描かれている。
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