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2017年06月16日00:02

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「はじまりへの旅」野性と世間とチョムスキー

劇場公開時に見落して、気になっていたのでギンレイへ。
ポスターの一家の写真が、妻(母親)のお葬式だったとは!
真っ赤なスーツの夫、個性的な野性的な格好の子供達…。

「はじまりへの旅」
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=10258677&id=4183484
http://hajimari-tabi.jp/

深い森の中、鹿の喉をナイフで掻っ捌いて仕留める少年。
現れた男が、泥を塗り付けた青年の額に鹿の血をなすり付け、
内臓を取り出して食べさせ、少年が男になったと告げる。

これだけで度肝を抜かれる、どこの国?といった光景だが、
現代社会に反旗を翻し、アメリカの森林地帯に住みついた
ベン(ヴィゴ・モーテンセン)と、3人の息子と3人の娘。

電気もガスも電話もなく、食べ物も自給自足のサバイバル生活、
学校にも行かずに父親の蔵書で学び、数か国語を話す。

病院に入院していた母親の死の知らせを受け、
この一家が、大型バスでニューメキシコまで旅をする。

旅の間もコーラは毒の水、ハンバーグも食べさせられず、
ナイキは靴ではなく、ギリシャ神話の勝利の女神としか知らず。
長男の初めての恋が可愛い。

ベンの妹一家とのズレや、ベンを嫌う義父との争い、
世間をみた子供と、父親の間にもさざ波が立つ。
大学進学を望む長男や、世間並の暮らしをしたい二男。

妻は仏教徒で火葬を望む遺書をベンに残したが、
義父母主導のもとキリスト教の葬儀が行われる。
いったんはあきらめたベンだが、母を思う子供たちに押され…。

ベンと妻にとっては、考慮の上の選んだ原始生活だろう。
でも、ここまで極端だと、子供たちにとってはどうなの?
と思ってしまうが、ふと世間並っていったいどうなの?とも。

子供たちに知らせたくないことは曖昧にする世間とのズレ。
人の死、セックス…日本でも性教育大反対の風潮もあったっけ。
しかしこの極端な暮らしと思想は、社会に通用するのか?
母親の遺書や葬儀はどうなるのだろうか?

子供たちと面と向き合い、真実を教えていくベンは小気味良いが、
どこに落ち着くのだろうかと思いながら…。

ヴィゴ・モーテンセンの野生っぷりはお見事。
子供たちも、森の中で生き生きとしている。
母親の葬儀の時の歌と旋律は胸に沁みる。ことに親には…。


ベンは哲学・言語学者のノーム・チョムスキーを信奉している。
彼の講演を聞いたことが?と思ったが、考えてみたら、
「9.11 ノーム・チョムスキー」というドキュメンタリー映画の
記念上映会で、実際の対談者は鶴見俊輔氏とダクラス・スミス氏。

チョムスキー氏は、同時多発テロに対して、映画ではとても穏やかに、
しかしキッパリと、「世界最大のテロ国家はアメリカである」こと、
アメリカのアフガニスタン爆撃は誤りであると指摘していた。

9・11後のアメリカ議会で、アフガン攻撃に沸き立つ議員の中で、
たった1人反対票を投じた女性議員がいたことを思い出した。
バーバラ・リー。彼女の下院での演説がある。
http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/5b4538e4ded14cbcb148d863afc1e373

間違っている、ヘンだと思ったら、空気に流されない。
人間と地球の歴史を振り返って考える。
科学的にしかし科学の限度を知りつつ考える。とかね。
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