今年の日本映画、どれだけ豊作なんだ。素晴らしい、本当に素晴らしい映画を観ました。
同じアップリンクで同じスクリーン同じ席、20分後にスタート。
「そこゆくお姉さん、あと3席だけ空いてますけどいかがですか」という埋まり具合でした。
秋田の話だってえから、秋田ネイティブの私は観ようじゃないか。由利本荘市(旧本荘市)出身です。
ぬるい地方応援映画だったらやだなあと観てたんですが、「UFOを見た」というあたりから急速に面白くなってくる。ミステリー・サークルは出てくるし。あ、SFやらオカルトやらの映画ではありません。キリキリくるような、それでいてキラキラでシュワシュワな青春映画でありながら大人たちの成長も描く映画。どういう説明だ。
なにしろ方言が完璧。オスカーに方言賞があったら絶対取れるのに。
世代によって方言の度合いが違う。実に的確。おばあちゃんの世代とお父さんの世代の秋田弁の濃さが微妙に違う。特に中学生は方言どころか全く訛ってない。
個々の役者(登場人物)によっても描き分けをしていて、例えば東京で再就職しようかなと考えてるらしい生駒ちゃん(私の小学校の後輩、向こうは知らないと思います)は、ふだんずっと標準語で「秋田弁を使わない人なのかな」と思って観ていると、あるシーンではやや使う。
すごいよ、さすが秋田ネイティブの監督。
もちろんこの役者たちの要になっているのが柳葉“ほじなし“敏郎であるのはいうまでもない。もう鉄板中の鉄板。
秋田弁と言っても内陸部の横手や湯沢と、県央の秋田や本荘とでは違う。沿岸部はさらに違う。県北の能代や角館も違うはずだが、そこはよく知らない。
この映画は県央部と踏んだが、やはり井川町、五城目あたりがロケ地でした。
ロケ地がそこであるから、観光映画の側面は揺るがせないと思うのだが、そこも妥協しない。
東京から転校してきた同級生にこの町を案内してあげる、というシーン。桜苑という桜が2000本もある公園に行こうというのに対し「今咲いてないよね、今度にしていい?」とあっさりスルー。ふつうならたっぷり公園を映すところ。
内容になかなか触れられないな。
東京から引っ越してきて馴染めない彰。登校拒否の真希。いじめられ気味で友達のいない翔太。リーダー的な存在であるが決して笑わない沙也加。それぞれの中学生。
地元に根差し、地元の問題に直面する沙也加の伯父秀雄(柳葉)。中学教師、沙也加の担任美晴(生駒里奈)。東京で挫折して故郷の役所に就職する彰の父良太(駿河太郎)。
それぞれにそれぞれの問題を抱えている。
役者たちがみんな素晴らしい。
中学生たちは実年齢なのですね。驚いた(30歳が高校生を演るこの時代に)。今の中学生は芝居が上手いねえ。演技をまったく感じさせないし、「中学生日記」に全然ならない。
ミステリアスな登校拒否生徒を演じた長沢樹に目が行きがちだろうが、クールな優等生役の中島セナに舌を巻いた。これ新人? 使ってやってくださいよー。
大人たちも存在感がある。柳葉敏郎は文句のつけようがないのだが(秋田弁を聞いているだけでうっとりする)、所作がなんというか秋田的なのですね。
中学教師生駒里奈。登校拒否の生徒にどう接していいかわからず、同僚からは責められ、ウロウロしている。ウロウロ具合が絶品です。もうアイドルじゃないな。使えるなあ。使ってやってくださいよー。
印象に残るシーンんも多いが、きりたんぽ。
その場で屠った比内地鶏と、裏で採ってきた野生のセリ。自分で炙ったたんぽ(潰したご飯を棒に巻いて炙ったのがたんぽ、それを切るからきりたんぽ)。これで作った鍋だ。どう考えても「うめべ」。観光的にも最高に気合の入った必殺シーンでした。
さまざまな問題を抱えつつ、解決したりしなかったりしながらクライマックスに突き進む。
クライマックスを迎えても基本的に叫ぶということをしない。
非常に抑制が効いていて、厚みのあるシーン。
予定調和的シーンが皆無ではないし、驚きのシーンがつづくわけでもないが、言い換えれば普遍的なドラマなんですね。
エンドロールの歌もとても良かった。歌ものエンドロールを認めたくない私としては珍しい。
終わったあと客席から拍手が起こりました。
大型シネコン向きの映画ではないが、もっと公開してほしい。……と思ったらグランドシネマサンシャインでやってました。おお。
パンフレットはOfficial Guide Bookということで1,650円。高いけどシナリオ付き(重要)なので買ってしまいました。グランドシネマサンシャインでは売り切れでしたよ。
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