異変は、すでに起きていた。
メルが目を覚ました時、何か嫌な予感がしたのだ。
腕時計の時刻は七時を指している。
ふと不思議に思って部屋の扉を開けると、見知らぬ顔の大男が立っていた。
メル「へ・・?
だ、誰ですか?」
「遅いっ!!」
言葉にすれば僅か三文字なのに、男のあまりの迫力と力にメルは震え上がってしまう。
メル「あ、あわわ!」
男「もう集合時間は過ぎているぞ!
お前、いつも早く集まってるからって今日は遅くなってもいいと思ってるんじゃあないか!たるんでる!
着替えたら速攻に食堂に集合しろ!良いな!」
メル「え、あ、へ?」
男「返事はぁっ!?」
メル「は、はいい!」
男「分かったな?ならさっさと着替えして食堂にこい!」
そう言うや否や男はすたすたと去っていく。メルは男が怖くて素早く部屋の中に入り、扉を閉めて鍵をかけて一息つく。
メル「ふ、ふぅ。
なんなんだ今のは?」
「おい、メル!」
メル「へ!?」
メルが思わず辺りを見渡し、周囲を確認する。すると天井にルトーが張り付いていた。
メル「る、ルトー君!?
何時からそこに!?」
ルトー「話は後だ、早くこの変な場所から逃げるぞ!」
メル「逃げる、逃げるだって?
一体いきなり何を」
ルトーの言葉に食ってかかろうとするメルの鼻先に、メルは強引に機械を押し付ける。見るとそれは映像機器で、アジト内の様子が映し出されていた。
メル「こ、これは?」
ルトー「ボクがバカアイに秘密裏で作った監視カメラでアジトをライブ中継しているんだよ。
これをよく見ろよ、これがボク達の知ってるアジトか?」
何時の間にそんなもの作ったんだ、という突っ込みを飲み込んでメルは映像に目を向ける。
そこには、あらゆるモノがひどく変化したアジトが映し出されていた。
まず見えたのは食堂だ。
食堂にはゴブリンズのメンバーがアイとメルとルトー以外、きっちりした軍服を着て一列に整列している。
そしてその列を見ているのはアイで、彼もまたきっちり軍服を着こなしている。
アイ?「メルとルトーはまだ来ないな。
まあ良い、我らゴブリンズ第三軍団は今日もあのにっくき大罪軍を滅ぼすぞ!
スス上級軍曹、報告を」
スス「了解(サー)、司令!
今朝、ジャン・グールが潜伏してるとみられる密林を発見したとの報告がありました!続いてアイ司令が今朝のピーマンを残したという報告もあります!
配給係からの伝達を伝えます!『貴様ァ!また野菜を残したなぁアア!後で皿洗いやりやがれ!じゃないと夕飯抜きだ!』です!一言一句間違えず報告しました!」
アイ「良くやった、スス!
ついににっくきジャンを見つけたぞ、お手柄だ!
ピーマン残しを勝手に報告したのは不問にしてやる!卑屈な脅迫に俺は屈しないぞ!絶対に皿洗いもせんしピーマンも食わん!
良いかお前ら、これからジャンを殲滅する為に全戦力をぶつける!
奴は一人で軍隊以上の力を誇る強敵だ!必死の覚悟で討ち滅ぼせ!」
ゴブリンズ?「うおー!うおー!うおー!」
メル「な、なんだこれ?」
ルトー「変だろ、アイツが!
バカアイが、ピーマン残すなんて!」
メル「いやそこじゃない!
それよりなんなのこの状況!?
なんかのドッキリ!?」
ルトー「変なのはここだけじゃない!
見ろよ、中庭を」
ルトーが機器を操作し、中庭に映像を変える。普段ならそこはガーデニングを趣味にしているアイが沢山の花を育ててる場所だった筈なのに、
そこに映し出されていたのは、花が一輪も植えられておらず、代わりに見知らぬ子ども達が運動している姿だった。
そして、先ほどメルに恐喝していた男が台の上に立ち、大声で命令している。
メル「なんだこれ!?」
ルトー「リーダーが花を大切にしてるのは分かるよな。どんなドッキリでも花を切り取るなんてあり得えない!
早く逃げるんだメル!あの変な奴等に洗脳されちまう!」
メル「い、いや違う。
たしかにそこも重要だけど、これ・・」
ルトー「ん?」
メルが映像の中を指差し、ルトーがそこに視線を向けると・・そこにはタイヤを背負いながら走らされているマルグとリッドの姿があった。
ルトー「マルグにリッド!?
あの二人がなんでここに!あいつら、俺達のアジトの場所を知らない筈だぞ!」
メル「僕だって分からない。何もかも、だけどもしこの状況が分かるなら・・まてよ?」
メルは思い出す、昨日公園で一緒にデュエルしていた彼等の姿を。意を決したメルはルトーに話しかける。
メル「ルトー君、マルグとリッドと一緒に公園に行こう!
この異変に対する答えは、彼等しか知らない筈だ!」
ルトー「彼等って、まさかあの公園のダンクもどきか!?嫌だよ、何を仕掛けてくるか分からないぞ!」
メル「じゃあここで訓練受ける!?
僕はタイヤを背負って走れる自信なんか無いし、マルグとリッドだって辛いんだぞ!
相手が悪い事を考えてようか知った事か!今の状況を受け入れる方が僕は嫌だ!」
ルトー「ぐ、わ、分かった・・。
や、やるからには覚悟しろよ、もっと悪くなる可能性をな!」
メル「僕はもっと良くなる可能性しか信じない!
さあ二人を助けに行こう、ルトー君!」
ルトー「ああ、ちくしょう!
『隠れ鬼』の凄さを奴等に見せつけてやる!」
メルは急いでデッキと昨日探していたカードをケースにしまい、ルトーは自分の手持ちを確認する。
そして、旧中庭。
マルグとリッドは息を切らせながらタイヤを背負って走っていた。
リッド「ぜぇ、はぁ・・まだ走らなきゃダメかな・・」
マルグ「り、リッド、がんばれ・・あと二週だ・・!」
男「オラオラ、走れ走れー!早く走らないとお前達、このニバリ・フランケンに食べられてしまうぞ!」
ニバリ「ニーッバッバッバ!
さあ早く走るんだ子ども達ー!遅いやつは美味しく食べちゃうぞー!」
中庭の中央にはニバリ・フランケンが居座り、走る子ども達を見つめていた。
言動こそふざけているように見えるが、3メートルはある巨体の怪物が食べると宣言すればその通りに行いそうなのが走る者の恐怖をかきたてた。
マルグ「・・・・っ!」
リッド「ぜぇ、ぜぇ、ま、マル・・走らなきゃ・・・・私達、食べられ、ちゃう・・!走って!」
マルグ「く、くそ・・・・!」
マルグが悔しそうに呟いた瞬間、コロコロと小さい球体が二人の前を通り過ぎた。
それに気づく前に球体はひとりでに爆発し、中から大量の白い煙幕が吹きあがった。
マルグ「な、なんだ!?」
リッド「ぜぇ、ぜぇ・・これは、まさか・・!」
男「敵襲か!?ち、お前達勝手に動くんじゃ・・」
ルトー「『隠れ花』・・」
ルトーの声が響いた瞬間、辺り一面から花火が次々と爆発し激しい音と目映い光が男の五感を奪っていく。
男「ぐ、ぐわあああ!?」
ルトー「『闇隠彩火(ヤミガクレザイカ)』!」
メル「マルグ、リッド!
こっちにきて!!」
沢山の花火の音に紛れて特殊なゴーグルを付けたメルが二人を発見し、タイヤを投げ捨ててルトーの元まで走り出す。
マルグ「この声はめ、メルか・・!?たすかっ・・!」
マルグが嬉しそうに笑みを見せた瞬間、その顔が真っ青に染まる。
メルが正面に目を向けると、そこにはニバリが三人を睨み付けていた。
ニバリ「・・・・・・」
リッド「ひっ!?いや!
た、食べないで!?」
メル「ニバリさん・・・・お願い、見逃して!」
ニバリ「・・・・なら、賄賂をちょうだい」
ニバリはメルをまっすぐみたまま呟く。
マルグは半分以上パニックになりかけていたが、メルは決して手を離さないまま聞き返す。
メル「何が欲しいの・・・・?」
ニバリ「『ハッピー・ラヴァー』。
それさえもらえばこの場は見逃すよ」
マルグ「こ、こんな状況で遊戯王カード!?」
リッド「マルグは黙って!」
メル「それなら、あるよ・・」
メルは反射的にリッドの手を離し、昨日カードケースの端に入っていた『ハッピー・ラヴァー』をニバリに見せる。
ハッピー・ラヴァー 光 星2
天使族・通常
ATK800/DFE500
メル「1枚しか見つからなかったけど、これで・・」
ニバリ「ふむ・・。
良いだろう、三人とも通ってよし」
マルグ「やった!
リッド!メル、逃げようぜ!」
メル「・・・・・・うん」
メルは寂しそうな顔をしながら、マルグは嬉しそうな顔をしながら、リッドは何かを察した顔をしながら、一様に走り去っていく。
ニバリは『ハッピー・ラヴァー』のカードをじっと眺めていたが、やがて秘密のカードケースにそのカードを隠した。
そして、三人はアジトを飛び出す事に成功する。
アジトの中から沢山の悲鳴や大声が聞こえてきた。
「ぎゃーっ!火事、火事だー!」
「同じ人がいっぱいいるぞ、何がどうなってるんだ!?」
「こっちは蛙よ蛙ー!蛙が部屋中に飛び回ってるのー!」
「なんだこれは!?ピーマンが、ピーマンの山が積みあがってるだとおおお!
く、俺はこんな事に屈しないぞ!食うぐらいなら、食うぐらいなら、いっそ殺してくれええ!」
メル「・・なんか凄いあちこちから悲鳴が聞こえてくるんだけど?」
ルトー「いや、騒ぎをあちこちでおこした方が撹乱になるだろ?
それに・・」
メル「それに?」
ルトー「一度でいいからアジト中にボクの仕掛けをぶちまきたかったんだよ!
いやー最高の気分だぜワッハッハッ!」
メル「うわあ、それは・・まあ、お陰で助かって良かったね。
それとマルグ、リッド。
これから公園に行くつもりなんだけど、大丈夫かい?」
リッド「ぜぇ、ぜぇ・・ごめんなさい、メル。
私達、タイヤを背負って走り続けたせいで体力がないわ」
マルグ「正直、公園まで走れる自信がない・・」
メル「・・分かった。なら僕の、いや彼女の出番だ。
能力発動、『宵闇時の子羊(トワイライト・ボー・ビープ)』!」
メルが叫んだ瞬間、その側に車椅子に乗った女性・・スミーが姿を現す。
その背後には空の荷台が宙に浮いていた。
スミー「話は聞いたよ、今回はタクシー代わりに使われてやる!乗りな!」
メル「さあ、行こう皆!」
四人がスミーの荷台に収まり、スミーが能力『栄光の腕(ハンド・オブ・グローリー)』を発動させ腕力強化。
車椅子を超高速で発進させて、アジトから離れていく。
だんだん小さくなるアジトをメルだけは見えなくなるまで黙って見つめていた。
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
公園。
そこもまた昨日と違う物が大量に置かれていた。
遊具は全て訓練用の道具になっているし、ボロボロの機関銃がいくつも設置されている。
ルトーが確認すると、それは遊具用に改造された機関銃でどうやっても外す事も弾を込める事もできなくなっていた。
ルトー「なんだこれ・・まるで軍事施設の中にいるみたいだ」
メル「早くダンクさんを探さないと・・!
おーい、ダンクさーん!」
メルが声を上げた次の瞬間、ダンクが姿を見せる。
彼は昨日と全く同じ姿を見せ、それは一同を安心させた。
ダンク?「おはよう、子ども達。
どうした、そんな顔をして」
メル「だ、ダンクさん!
何もかも変化しているんだ!
おかしい事だらけなんだよ、上手く説明なんて出来ないぐらい訳がわからないんだ!なんで、なんで昨日から何もかも変化してるんだ!」
ダンク?「・・言った筈だぞ。
この世界は今、侵略を受けて変化させられているんだ。
昨日はまだ変化の途中、今日はもっと変化を続けていくだろう」
メル「そんな・・」
変化が続く、その事実にメルは驚愕する。それはもう二度とアイ達に会えなくなるという事だ。あのおかしくも温かい世界に戻れなくなるという事だ。
こんな狂いすぎた世界で生きなくちゃいけないという事実は、メルの心を重くするには充分過ぎた。
絶望しそうなメルの横で、リッドが惜しいって訊ねる。
リッド「ま、待ってよ!
じゃあなんで私達は『変化』の影響を受けてないの!?」
ダンク?「お前達、デッキケースはあるか?そこに答えは隠されている」
マルグ「え、デッキなんて持ってきて・・」
ルトー「ボクが逃げるときに回収しといたぜ、これだろ?」
そう言ってマルグとリッドにルトーはデッキを渡す。二人が様々な表情を見せつつもデッキを見ると・・一枚だけ、見知らぬカードが入っていた。
魂札(バー・カード) ? ?
???
マルグ「魂札(バー・カード)・・?
なんだ、このカードは・・?」
ダンク?「君達を世界の変化から守るお守りさ。それがある限り君達はこれ以上世界の変化を受けない」
ルトー「ボクのデッキにも入ってる。
最初からボクも仲間にいれるつもりだったな」
ダンク?「すまないな、君はさっさと帰ってしまったから説明できなかった。
さて、聞きたい。君達は世界を戻したいか、守りたいか」
メル「戻したい!
どうすればいいの、ダンクさん!」
間髪いれずに答えたメルにダンクは笑みを浮かべ、そして指を鳴らす。
すると次の瞬間、
四人の周囲に光る輪が出現した。
メル「え、これは何・・?」
ダンク?「悪い、時間があまりないから何をすれば良いかはワイトに聞いてくれ」
ワイト「から、からから!
よう、キッズ!」
いつの間にか四人の後ろにワイトが立ち、その姿が光に包まれていた。
それと同時に自分達も同じように光に包まれている事に気付く。
メル「え、何これ・・?
ダンクさん!一体何をどうすればいいのさ!教え・・」
「見つけたぞ、『ブルー』!」
不意に低い声が聞こえて全員が振り返ると、そこには怪物が立っていた。
リッド「キャ!!」
マルグ「こ、こいつは確か・・『サイバネティック・サイクロプス』だ!」
怪物は上半身裸の人型だが、体のあちこちが機械仕掛けになっている一つ目の巨人が、こちらを見下ろしていた。
サイク「ゲッゲッゲッ!
お前達は『ブルーレジスタンス』の野望はこの俺、サイクが潰してやるぜ!」
ダンク?「思ったより早い・・!
ち、こっちは移動術式の展開で忙しいってのに!
誰か俺を守れ!」
「ならば我(オレ)に任せろ!」
その言葉と同時にサイクの前に姿を現したのは、チュー助だった。
ルトーは思わず悲鳴をあげる。
ルトー「げぇ、お前は!」
メル「知ってるのかルトー君!?」
ルトー「知っ・・ししし知らないYo!
ボクなーんにも知らない!」
チュー助「ふ、怯えるな子ども達。
我は誰にも負けない、あのにっくき魔法少女、『ルート・アンナイ』を倒すまでな!さあデュエルだ!」
サイク LP6000 VS チュー助LP6000
両者「デュエル!!」
ルトー(じょ、女装してなくて良かった〜・・)
チュー助「我のターン!
我は手札から『格闘ねずみ チュー助』を召喚する!」
格闘ねずみ チュー助 地 星3
獣族・通常
ATK1200/DFE 0
フィールドにチュー助そっくりのモンスターが姿を現す。そのねずみの腰に黒帯が巻かれた。
チュー助「装備魔法『伝説の黒帯』を装備させる!」
伝説の黒帯 装備魔法
自分フィールド上の「格闘ねずみ チュー助」「モンク・ファイター」 「マスターモンク」のみ装備可能。 装備モンスターが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、 破壊したモンスターの守備力分のダメージを相手ライフに与える。
マルグ「な、なんだあれ・・!
攻撃力1200の通常モンスターに強化しない装備魔法なんて、雑魚過ぎやしないか・・!?
あんなんでホントに勝つ気あるのかよ!」
マルグが思わず叫ぶが、ルトーもチュー助も気にせずデュエルを進める。
チュー助「カードを二枚伏せて、ターンエンド」
サイク「ゲッゲッゲッ!
そんな雑魚、俺のかっこいいモンスターで即!消し去ってやるぜぇ!
俺のターン、ドロー!
魔法カード発動、『パワー・ボンド』!!」
パワー・ボンド 通常魔法
(1):自分の手札・フィールドから、 機械族の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、 その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力は、その元々の攻撃力分アップする。 このカードを発動したターンのエンドフェイズに自分は この効果でアップした数値分のダメージを受ける。
サイク「このカードは機械族最強の融合魔法カードだ!
俺の手札に眠る『サイバー・ドラゴン』三枚を墓地に送り・・」
サイバー・ドラゴン→墓地
サイバー・ドラゴン→墓地
サイバー・ドラゴン→墓地
サイク「げへへへっ!現れろ!
『サイバー・エンド・ドラゴン』!」
サイバー・エンド・ドラゴン 光 星10
機械族・融合・効果
「サイバー・ドラゴン」+「サイバー・ドラゴン」+「サイバー・ドラゴン」
このカードの融合召喚は上記のカードでしか行えない。
(1):このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、 その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。
ATK4000/DFE2800
ギシャアアアアアア!!
三つ首の機龍が機械仕掛けの咆哮と共に出現し、チュー助を見下ろす。
メル「さ、サイバー・エンド!?
攻撃力4000の、強力融合モンスター!」
サイク「いいや違うね!
『パワー・ボンド』の効果で攻撃力は倍になるため、攻撃力は・・!」
サイバー・エンド・ドラゴン 攻撃力8000
マルグ「攻撃力8000!?」
リッド「あんなの攻撃したら、攻撃力1200のチュー助だけじゃなくライフまで一撃で消えるわよ!?」
ルトー「・・・・」
チュー助「・・・・」
サイク「げへへ・・」(分かってるぜ、てめえの伏せた二枚のカード。
それで何とか俺の攻撃をかわそうと思ってるんだろ?無理なんだよなぁ〜〜!)
サイクは一つしかない目をギョロりと動かし、二枚の手札を見る。
サイクの手札
融合解除 速攻魔法
(1):フィールドの融合モンスター1体を対象として発動できる。 その融合モンスターを持ち主のEXデッキに戻す。 その後、EXデッキに戻したそのモンスターの融合召喚に使用した 融合素材モンスター一組が自分の墓地に揃っていれば、 その一組を自分フィールドに特殊召喚できる。
瞬間融合 速攻魔法
(1):自分フィールドから 融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、 その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。 この効果で融合召喚したモンスターはエンドフェイズに破壊される。
サイク(『融合解除』で罠を回避し三体のサイバー・ドラゴンで攻撃、更に『瞬間融合』でもう一度サイバー・エンドを出してトドメを刺せばそれで終わりだ。
げへへ、今からガキ共を蹂躙するのが楽しみだぜぇ〜!)「バトルだ!
攻撃力8000の『サイバー・エンド・ドラゴン』で『格闘ねずみ チュー助』に攻撃!」
サイバー・エンド・ドラゴンの三つ首から光が放たれそうになる瞬間、
チュー助の伏せカードが一枚翻る。
チュー助「罠カード発動!」
サイク「やはりきたか・・ん?」
チュー助「『アームズ・コール』!」
アームズ・コール 通常罠
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。
(1):デッキから装備魔法カード1枚を手札に加える。 その後、そのカードを装備可能な自分フィールドのモンスター1体を選び、 そのモンスターに装備できる。
チュー助「このカードは装備魔法を手札に加え装備させるカード!我が選ぶのは『巨大化』!」
巨大化 装備魔法
(1):自分のLPが相手より少ない場合、 装備モンスターの攻撃力は元々の攻撃力の倍になる。 自分のLPが相手より多い場合、 装備モンスターの攻撃力は元々の攻撃力の半分になる。
格闘ねずみ チュー助 ATK1200→1200
サイク「・・あ?『巨大化』ァ?
バカかてめえは。そのカードはライフが俺の方が上の時だけ攻撃力を上げるカードだろ。今発動しても攻撃力は上がらない。しかも上がった所で2400しかないから太刀打ちしようがねえ!ギャハハハ、こいつは傑作だぜー!」
マルグ「く、悔しいが・・あの半裸野郎の言う通りだ!
このままじゃあのねずみ、負ける!」
メル「ちゅ、チュー助さん!」
メルの叫びとサイクの笑いを背に、機械龍の一撃がチュー助に向かっていく。
チュー助は静かに呟いた。
チュー助「・・ダメージステップ時・・」
サイク「あ?」
チュー助「『窮鼠の進撃』を発動!」
窮鼠の進撃 通常罠
自分フィールド上に存在するレベル3以下の通常モンスターが戦闘を行う場合、 そのダメージステップ時に100の倍数のライフポイントを払って発動する事ができる。 このターンのエンドフェイズ時まで、 戦闘を行う相手モンスター1体の攻撃力は払った数値分ダウンする。
サイク「!?」
チュー助「『窮鼠の進撃』はレベル3以下のモンスターの戦闘時、ライフを払った数だけ相手モンスターの攻撃力を減らすカード。俺はこのカード効果により・・。
5900ライフポイント払う!」
チュー助 LP6000→100
サイク「な、何ぃぃぃ!?」
チュー助「『サイバー・エンド・ドラゴン』の攻撃力、5900ポイントダウンさせる!」
サイク「させるか、速攻魔法『融合解除』を・・ああ、ダメだ!ダメージステップ時は攻守増減系のカードしか発動出来ないんだ!」
サイバー・エンド・ドラゴン
ATK8000−5900=2100
サイク「俺のサイバーエンドが・・!」
チュー助「そしてお前の指摘通り、俺のライフはお前より下がった。
『巨大化』により攻撃力は倍になる!」
サイク「!!」
格闘ねずみ チュー助 ATK1200→2400
メル「『チュー助』の攻撃力が『サイバー・エンド』の攻撃力を上回った!」
サイク「ば、バカな・・!?」
驚愕するサイクの前で『格闘ねずみチュー助』がどんどん大きくなり、遂に『サイバー・エンド』より巨大になる。
巨大化した拳が、『サイバー・エンド・ドラゴン』に向かっていく。
サイク「バカなああああ!?」
チュー助「デュエルは強いカードだけで動いてるんじゃない。そんな事も分からないお前なんかに、我は絶対に負けない!」
Battle!
○格闘ねずみチュー助VSサイバー・エンド・ドラゴン✕
ATK2400 ATK2100
LP6000→5700
サイク「さ、サイバーエンドが・・!?」
チュー助「戦闘でモンスターを破壊し墓地へ送った事で、『伝説の黒帯』の効果発動!
サイバー・エンド・ドラゴンの守備力2800のダメージを与える!」
サイク LP5700→2900
サイク「がはあ!!
だ、だがデュエルはまだ終わりじゃ・・は!」
チュー助「やることが何も無いならこのままターンを終えるか?
そうすれば、エンドフェイズに『パワー・ボンド』のデメリット効果が発動する。『サイバー・エンド・ドラゴン』の攻撃力分・・」
4000ダメージを受ける!!
サイク「あ、あああああああ!!
あーーーーーーっ!!」
LP2900→0
続
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