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2019年12月06日06:58

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特別短編小説 巨人と虚人はかく語りき 最終回

巨人と虚人はかく語りき

最終回

 むかしむかし、最初の罪である色欲が訪ねた。

『永遠に生きる私が幸せに生きられる世界を作りたい。その為に貴方達に訊ねます。
 私が幸せになるにはどんな世界を作りたいですか?』

 最初に答えたのは怠惰だった。

『私は貴女と共に永遠に生きる世界を作り、寿命も成長もない世界を作りたいと思います』

 次に答えたのは強欲だった。

『私は貴女に永遠に飢えと渇きが訪れないよう、永遠に水と食料に困らない世界を作ります』

 少し考えて、憤怒が答えた。

『私は貴女様を理解しない者が居ないよう、全てが貴女様を受け入れる世界を作ります』

 嫉妬は何も答えなかったし、暴食はこの場に居なかった。
 二人の事情を知る傲慢は、最後に色欲にこう宣言した。

『私は、貴女を殺します。
 貴女に永遠に苦しみが訪れないよう、死なない貴女を殺す武器を作ります』

 これが、大罪計画の、
 後に世界を作り替えようと画策する怪物達の決意だった。
 そして、この『おとぎ話』にめでたしめでたしはないのです。
 だって、彼女は永遠に死なない彼女なのだから。
 そして、そのおとぎ話はこの物語の中では、一人の男にのみ受け継がれている・・。

△  ▼  △  ▼  △  ▼  △

 秘密研究所・ドリームの個室。

ドリーム「・・気を楽にしたまえ。
 酒は飲むか?この地域のウォッカはかなり美味しいんだ」
サイモン「・・いえ、お気遣いはありがたいのですが・・」
ドリーム「そうか。なら電子タバコはどうだ?
 吸った事がない?・・案外、楽しみに興味がないんだな」
サイモン「申し訳ありません、私は仕事一筋で生きていましたので・・何故、私をここに呼んだのですか?」

 研究所所長の個室はとても広く、深いソファにキッチンと、全てがとても綺麗に整理されていて、部屋の壁には薄型の大きなテレビが飾られている。
 サイモンはそのソファに座ってこそいるが、体が沈む事に慣れてないのか少し緊張している。
 ドリームはそれを心の中で嘲笑しながら、ウォッカが入ったグラスを揺らしつつ対面のソファに座る。

ドリーム「まあ、ここに君を呼んだのは当然、話があるからな。
 それをさっさと終わらせるとしよう」
サイモン「・・はい」
ドリーム「今回、君をNo.5392の戦闘訓練に教官として招き、様々な戦闘技術を見させてもらった。
 これは我々にとって、とても興味深い内容の数々だったよ」
サイモン「恐縮です」
ドリーム「そして、2週間後に君をジングルベル第四収容所に移動する事が決まった。
 今まで重要捕虜として扱っていたが、これからは普通捕虜として君を扱うように口添えもした。
 そこでは君は他の捕虜とコミュニケーションが可能だし、職業訓練にスポーツ施設など様々な設備が揃っている。
 はっきり言ってあそこは天才軍で最高の捕虜施設だ。君は戦争終結までの間、そこで過ごしてもらう事になる。
 任務としての話は、それだけだ」

 そう言いながら、ドリームはグラスを傾かせる。サイモンは少し難しい顔をして応えた。

サイモン「2週間後に、移動・・!
 ですが、ニバリはまだ戦闘技術が完成していません。このままでは戦争には出せなく・・」
ドリーム「いや、その心配はしなくていい。奴はもう戦場に出す気はない。
 その後の世界で戦わせる事にきめてあるからな」
サイモン「・・・・はい?」

 サイモンは思わず間抜けな言葉を返してしまう。戦争終結後の世界、なんて彼は考えた事が無かった。
 生まれた時から戦火を灯りに生きてきた彼にとって、戦のない世界は想像も出来なかったからだ。

ドリーム「話のままさ。
 奴は戦争なんて下らん場所で死なすわけにはいかない。
 この戦争には裏があってな。俺はそれを潰す為に最恐の兵器を作ると決意してこの職についたんだ。
 裏については、話す気なんかないがな」
サイモン「そうだったのですか・・。
 貴方は貴方で、自分の旗を大切にしているのですね」
ドリーム「旗?なんの事だ?」 
 
 サイモンは少し、頬を軽くかいた後に話を始める。ドリームは再度、グラスを傾かせる。

サイモン「私の故郷では、決意を持つ人の事を『旗を掲げる人』と呼称するのです。
 心に掲げた旗は、その命尽きる時まで折れる事なく、世界にはためき続ける・・私の大好きなおとぎ話ですよ」
ドリーム「おとぎ話・・ね。
 まあ、そんな奴が昔、世界の何処かにいてもおかしくないか。
 兵士に似合いのおとぎ話だ。
 俺みたいな高貴な者には不似合いの物語だが・・不思議と悪い気はしないな。
 俺みたいな虚人(ヒトデナシ)の旗なんて、おぞましいものでしかないだろうがな」

 最後の言葉だけは、聞こえないよう呟いた。サイモンにはそれは聞こえなかったが、それを追及しようとは思わなかった。
 ドリームは酒を傾むけた後、軽く笑みを浮かべる。

ドリーム「ま、いいさ。
 俺が聞きたいのはそこじゃない。
 聞きたいのは、No.5392の事だ。
 お前、なんであんな化物に肩入れする?
 あれはどう足掻いても人の世には戻れん。どうやっても怪物でしかないんだぞ」
サイモン「彼女は、戦争遺族です。
 部隊を失った私が生き残った以上、仲間の遺族である彼女を養う義務があります。
 もし彼女に居場所がないなら、私が居場所を作ろうと思います」
ドリーム「あー、やっぱりか・・。
 お前の『それ』は、責任から生じている訳だな。
 なら、無理な話だ」
サイモン「どういう事で・・」

 す、と言い切る前に、サイモンは隠し持っていたテレビのリモコンを押してテレビを点け、グラスを大きく傾かせる。
 そこに映し出されたのは、大男が錆びた出刃包丁で右腕を何度も切りつけられた少女の姿だった。

サイモン「!!?」
ドリーム「お前が今まで気にかけていた女、その過去の一端を映像化したものだ。
 戦争で血生臭い死体を数多く見たお前でも、これはきついか?」
サイモン「あ・・・・あ・・!」

 サイモンの視線は少女に釘付けだった。
 少女は血を流し、傷だらけの右腕を見て涙を流している。
 それをみて、大男は笑みを浮かべている。この状況を楽しんでいるのは間違いないだろう。
 そして、サイモンは大男とは真逆の表情を浮かべながらわなわなと右腕を震わせている。
 ドリームはテレビを消す。
 少女の姿は消えて、漆黒の画面に震えるサイモンとそれを冷ややかな眼で見下すドリームの姿が映し出されていた。

サイモン「か、彼女は・・・・!
 これほどの残酷な記憶を、幾つも抱えながら必死に生きていたのですか・・。
 これほどの恐ろしい目に会いながら、私に食事を・・!」
ドリーム「あの女は、始めから俺達とは違う次元の闇を抱えて生きてきた。
 狂気に墜ちようが闇に呑まれようがこの生い立ちを知れば誰もあの女を否定出来ない筈だ。
 だが彼女は、光の中で生きる選択をした。
 自らの姿を化物の如く変質させ、全身に凶器を仕込んで尚、あの女は誰一人憎もうとも傷つけようともしない。
 そんなひどく、『おぞましく』歪んだ女を、ただの一介の兵士がただの責任だけで最後まで見ていられる保証はあるのか?
 否だな、あの女が光ある世界に耐えきれず先に壊れてお前の責任が更に重くなるだけなのが目に見えている」
サイモン「・・・・」

 サイモンは何かを強く言いたそうにして、何も言い返す事が出来なかった。
 ドリームはサイモンを真っすぐみたまま話しを続ける。

ドリーム「あの女は、ある程度の闇がある世界の中でなければ生きていけない、自分を理解する事は出来ないんだ。
 お前があいつに出来る事は、無いんだよ」
サイモン「・・・・・・そう、かもしれませんね。
 私が、甘すぎた・・あのような姿になってまで生きた彼女の生き方を、軽んじていました・・」
ドリーム「もう君と話す事はない、さっさと去りたまえ」

 言いながら、ドリームはグラスを傾かせた。傾きが戻るのを確認してからサイモンは語りかけてきた。

サイモン「・・貴方、酒を飲んでませんね?」
ドリーム「!」
サイモン「さっきから酒を傾かせるだけで、一口も口に入れてない。
 今だって最初から量が減っていませんよ」

 サイモンの言葉につられて思わずドリームが酒の中身を確認すると、確かに中身は減っていなかった。
 ドリームは一息ついた後、グラスを机の上に置いた。

ドリーム「・・酒は酔うために飲むものだ。俺は今酔っぱらいたいから飲んでるんだ・・」
サイモン「・・・・そうでしたか。
 少し安心しました。
 それでは失礼します」

 ドリームは素早く敬礼をした後に部屋を後にする。それを見届けてからドリームは一人ため息をついた。

ドリーム「バカな奴め、俺みたいな科学者が情なんか持つものか。
 お前があまりにバカ正直に生きているから、ちょっと脅かしたかっただけだ・・」

 そう言ってから、ドリームは机の上に置いたグラスに目を向ける。酒は最初に注いだ時から全く変わらないままだった。
 それを見て、ドリームはつまらなそうに鼻をならした。

ドリーム「ふん・・」

▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △

 翌日、訓練室。
 サイモンとニバリは最後の戦闘訓練を始めようとしていた。
 ニバリは気合いを入れてサイモンの前に立ち、科学者達の半分は「やっと終わる」「気を抜くな、アイツヤバいぞ」と愚痴を言いながら準備を進め、もう半分は既に救急隊と修理工に連絡を入れていた。
 そんな中でドリームだけは、まっすぐ二人の様子を見ていた。
 そして、それを知らないサイモンはニバリにまっすぐ向き合い、宣言する。

サイモン「これより、最後の戦闘訓練を始めます。ですが構える前に一つ技を授けようと思います」
ニバリ「はい」
サイモン「その技は、これです」

 そう言ってサイモンは両腕を前に出し、肘を曲げて顔の前に立たせる。
 それを見た科学者は首を傾げる。

科学者A「なんだあれ、腕でガードしてるだけじゃん」
科学者B「いや、アイツの事だからあの変な構えから台風出したり炎巻き上げたり凄い事するんじゃないか?」
サイモン「これだけです」
科学者ーズ「「はぁ!?」」 
 
サイモン「今日は防御技を学ばせます。
 貴方は普段四足ですから、腕の代わりに動けるもの・・その両方の盾を使って守り技をやってみましょう」
ニバリ「え?これ?
 えーと、こうかな?」

 ニバリは背中に背負った盾を前の方に傾けさせる。だがこの盾は空を飛ぶユニットとして開発された道具の為にあまり動かず
、ニバリの巨体をこれで守るにはあまりにも不安だった。

ニバリ「こんなので何とかな・・」 

 ドゴオオオン!!

 る、言い切る前にニバリの顔面にサイモンの巨大化した拳が叩き込まれる。
 ニバリはまともに攻撃をくらい、吹き飛ばされ床がガリガリ削られた。

科学者A「ぎゃーーー!あのバカ何やってんだ!」
科学者B「もしもし修理工?今すぐ新しい床の準備をお願いします!」
ドリーム(あのバカ・・!)

ニバリ「う、うぐぐ・・」
サイモン「立ちなさい、ニバリ・フランケン!貴方は守り技をこの戦いで身につけるのです!
 でなければ死にますよ!」
ニバリ「し、死ぬ?
 そんなの嫌だ、もう一度守るよ!」

 ニバリは盾を前に向け、飛行ユニットを展開させる。虹色の膜(バリア)が広がり、ニバリの前に展開された。

ニバリ「こ、これでど」

ズドオオオン!!
 ガキイイイ!!

 う、と言い切る前にまたサイモンの拳が飛び出し、まるで大砲をぶっぱなしたような打撃音が室内に響くが、今度はバリアが攻撃を防ぎ拳はニバリの顔すこし前で止まる。

ニバリ「ぐぐ・・あ、できた!」
サイモン「・・・・『膨張(パンプアップ)』」

 サイモンは拳を戻し、右腕を更に巨大化させていく。そして、更に強烈な一撃をニバリに向けて放った。

ニバリ「ぎゃーー!バリア最大展開ーー!!」
科学者B「ば、バカ!
 あのユニットにそんな用途は想定されてない!バリア同士がデタラメに結合して爆発するぞ!」
科学者A「やめろニバリ!やめ・・」
ドリーム「黙れ」

 科学者がマイクのスイッチを入れて止めようとするが、ドリームがマイクを素早く奪った為に声はニバリ達に届かなかった。

科学者A「博士、何を・・!」
ドリーム「あの二人の気が済むまでやらせろ。どうせ今日で最後なんだ。
 派手にやってくれた方が思い出話にはなるだろ?」

 科学者達がそんな事を言っている間に、ニバリはバリアを最大出力で展開させる。
 しかし、バリアをうまく繋ぎ合わせられず壁に穴が開いてしまう。
 目の前には先ほどの倍以上の大きさがある拳が迫っていた。

ニバリ「くっつけられない・・そうだ、なら重ね合わせて・・!」

 ニバリが右のバリアを少し後ろにずらし、再度合わせようとすると今度はうまく重なりあい、バリアの壁に穴が無くなり外の世界から完全に遮断される。
 その次の瞬間、ニバリの体を覆い尽くす程の巨大拳がバリアに襲い掛かる。
 
ドッガアアアアアアン!
バシイイイイ!!

 巨大な鉄球を床に叩きつけたような音と、先ほどより強力な音が響き渡り、衝撃が室内中を駆け巡る。

科学者A「わーーっ!なんだこの衝撃は!?」
科学者B「あのバカ能力者マジで全力で攻撃してやがる!!
 もう頼むからやめてくれ!修理費ヤバい!!」
ドリーム(・・・・ニバリ!)

ニバリ「ぎゃああああああああああ死ぬううううううううう!!」
サイモン「ハアアアアッ!」

 サイモンが更に強い力を込めていく。
 バリアにヒビが入り、ユニットの負荷がかかり煙を上げる。
 それでもサイモンの攻撃は止まらない。
 足に力をいれ、更に力を上げていく。
 あまりに強いその威力に、ニバリのバリアが浮き上がり、後退してしまう。
 床がガリガリ削られながら後退し、壁に激突してしまう。

科学者A「我々の予想値をはるかに上回る攻撃力!あ、アイツ今までこんな力出した事無いぞ!」
科学者B「もうダメだ、おしまいだ!
 No.5392を助けに行かなきゃ・・!」
ドリーム「黙ってみてろ!」
ニバリ「わああああっ!!ふぬうううう!」

 ニバリは必死にユニットを展開させていくが、バリアのヒビが大きくなり壁がめり込んでいく(そして修理工と科学者が悲鳴を上げる)。
 それを見ながら、サイモンは叫ぶ。

サイモン「ニバリ・フランケン!
 貴女はなぜ抗うのですか!なぜまだがんばるのですか!」
ニバリ「い、いや今がんばるのやめたら死ぬし、死ぬの怖いし」
サイモン「死ねばいいでしょう!
 死ねば何も辛い苦しみに苛まれる事もない!死ねば生きてる自分に恥じ続ける必要もない!死ねば全ての責から抜け出せる!全ての圧から解放される!」
ニバリ「・・・・!」
  
 サイモンの脳裏に浮かぶのは、独房で一人絶望していた自分。
 仲間を守れなかった、ただ一人のうのうと生きていたと毎日まいにち死神が訪れるのを待っていた自分。
 その自分が、目の前で死に抗う女性に叫ぶ。

サイモン「なぜ生きようと抗う!
 なぜ守ろうと思う!
 命なんてちっぽけなもの、誰も大事にしないと分かってるのに!」
ニバリ「そ、それは・・」

 サイモンの拳が更に体重をのせていき、力を増やしていく。バリアがどんどんヒビが入り、ニバリのユニットがついに火を噴いた。

科学者A「ぎゃーーー!遂にユニットが壊れたあああっ!?」
科学者B「いい加減止めてくれええ!」
ドリーム「・・・・」

ニバリ「な、なんで死ぬのが怖いかって?き、決まってる!ニバリが死んだ後に、セキタとたくさんお話したいからだよ!」
サイモン「・・!」
ニバリ「ニバリは生きたい!世界は怖いし自分も怖い存在だけど、それでも生きて何かをしてみたい!
 獄中で死んだ団長みたいに何も変えられず死にたくない!
 薬に抗えなかった仲間みたいに何も出来ず死にたくない!
 ニバリは、ニバリは大切なモノを沢山作って、死んだ後でもみんなに自慢してみたいんだ!」
サイモン「・・・・みんなに、自慢したい。
 それが、貴女の生きる理由・・・・なのですか?」

 サイモンの拳の重みが少しだけ取れていく。ニバリは言葉を続ける。

ニバリ「み、みんな死んだ!みんな居なくなった!だけどニバリは生きている!ここにいる!
 なら頑張らないと!ニバリは、今までの思い出も、これからの未来も守りたいんだ!」

 ニバリの脳裏に浮かぶのは、過去のセキタの記憶。優しさなんて一切なかった団長の息子でありながら、ニバリに優しくし、ずっと手紙でやり取りしていた彼との記憶。
 それを思い出すと、何故かニバリはまだまだ戦えるような気がして、ユニットの出力を上げていく。

ニバリ「ニバリは、まだ何も出来てない!
 だから何かをしたいの!
 ニバリが何かをしたいの!だから絶対に死ぬのは嫌!誰かが死ぬのも嫌!サイモンが消えるのも、本当は嫌だ!」
サイモン「ニバリ・・」

 ニバリの真っ直ぐたちむかおうとする言葉に、サイモンは手が止まってしまう。
 能力を解除し、手が小さくなりサイモンの腕に収まる。
 対してニバリのバリアはヒビが入り、ユニットはメラメラと燃え上がっていてもはや使い物にはならなくなったが、それでも彼女は死なず、その場に立っていた。
 それを見てサイモンは笑みを浮かべ、優しく語りかける。

サイモン「・・・・合格です、ニバリ・フランケン。
 私から貴女に教える事はありません。
 貴女はこれから、大切なモノをを守る為に生きてください」
ニバリ「あ・・・・ありがとうございます!」
サイモン「私は少し、疲れました。
 寝ます」

 そう言うと、サイモンはばたりと仰向けに倒れ、ぐっすりと眠り始めた。
 それは彼が捕虜として捕まり、初めて安堵出来たからこその、深い眠りだった。
 それをニバリは、じっと見ていた。
 やがて実験は中止宣言され、この場にいたものは散っていく。

 科学者達はそれぞれの仕事に戻り、
 ニバリは新たな戦いの為の備えになり、
 ドリームはその備えの為に準備を初め、
 サイモンは新しい捕虜収容所で生活する事になる。

 彼等はその日の事を語らず、しかし忘れる事もなく大切に抱えながら生きていく。

 やがて、戦争が終結し、サイモンは教師の道になる。
 大切な記憶を手に入れる為に、仲間を守れる強さを新しい世代に教える為に。
 そして、その日が訪れる。

ゴブリンズが、大罪計画の邪魔をするために学校に訪れる日がーーー。


            本編に続く 。 
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