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2017年06月26日19:15

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長編小説2 担うモノ達 『ウォルスター・クレイン』

クレイン「はじめまして、君はドワ。空豆人形(フェーブ・ドール)さ。
 君の物語はこの後始まるが、先ずは君が生まれるまでの僕の経歴を話させてくれ。
 僕の名前はウォルスター・クレイン。
 メリアード歴305年、ワルド一家の三男としてこの世に生まれた。
 僕の兄達はとても優秀で、毎年何かしらの賞を取っていたけど、僕は殆ど賞をとれなかった、いやそれどころか教師達から相手にされる事すらなかったよ。
 僕が三男だったのと、どうしようもなく下手だったからだろうね。
 僕は学生時代も下手な事ばかりで授業も殆ど上手くいかなかった。
 十六歳から通う学院も他の一番頭が悪い所だったけど、友達には恵まれた。
 皆で色んな所に遊びに行ったし、沢山の冒険をした。
 だけど卒業する年になった時に友達を事故で一人失ってしまってね、あの時はとても辛かった。
 だけどその友人が夢にしていた職業が人形師だったから、僕は彼の夢を担う形で人形師を目指したんだ。
 僕は学院を卒業した後、レイナップ師の元で空豆人形師として修行する事になり、沢山様々な事を学んだ。
 人形を作る技術や、人形の種類や、勘定の仕方など、それやこれやを学んでいる間に、世界は大きく変化していった。
 僕はやがて師の元から離れて独立し、空豆人形を入れる御菓子の名前ガレットからガレット工房を設立したんだ。
 始めこそ誰も来なかったが、新しく作られた『魔法人形呪符』を組み込めるようになってからは人形が注目され、僕の人形は飛ぶように売れたんだ。
 だけどそうすると忙しくて旅行にも少し先のお気に入りのパン屋に食べにいく事も出来ない。だけどこの工房の中だけで生きていては様々なアイデアや新しい発見に気付く事が出来ないかもしれない。 
 だから僕は、君を作ったんだ。
 君、ドワはこれから沢山の旅行客と世界中を旅をするんだ。
 そのカバンの中には豆本がある。君の体には記録魔術が備わっていて人や魔力があるものから僅かばかり魔力を吸収し自動的に状況を記録する。
 あと声が分かるよう、君の頭に声帯認証魔術を組み込ませた。僕の話の始めに僕の名前が出てきただろう?名前が分かる相手の声が聞こえたら、その声を優先的に記録できるようにしたんだよ。
 そして記録された状況はその豆本の中に溜め込まれていくんだ。
 ドワ。
 君はこれから沢山の人や意思や世界をその小さな体で目一杯受け止めて、記録するんだ。それがどんなに嬉しい事でも、その逆でも。
 そして最後には僕の所に戻り、その話を聞かせてくれ。
 僕はこの工房で、君の帰りを待ってるよ。
 それじゃあ、『行けるべく所まで生き、然るべき所で歌え』」



3031/06/12・・・・・・ウォルスター・クレインの物語を記録しました。
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