第一話はこちら。
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『スイーツ指輪』
俺の名前はハサギ。
ゴブリンズを逮捕し、絶滅させる事が俺の使命。
その為に警察に入り、日々アイ達を追いかける毎日さ。
相棒のノリと共に、今日も一緒にゴブリンズを捕まえる・・筈だった。
朝、気が付いたら取調室にアイが座ってた事からこの物語は始まるんだ。
俺は目を丸くしてアイの姿を見る。
服は全身泥だらけで、銀色の腕は壊れているのか配線があちこち飛び出している。
顔は血の気が失せて非常に疲れた顔をしており、目は虚ろだ。
銀色の腕に手錠がされていないとはいえ、この状況はあまりに異質すぎる。
ハサギ「ゆ、ユウキ・・なのか?」
俺は思わずアイの昔の名前で呼んでしまった。だがユウキ・・アイは虚ろな目を返すだけで返事をしない。
俺の後ろで見ていたノリが思わず呟いた。
ノリ「い、一体どうしてこんな事に・・?」
ハサギ「俺が知りたい。
ま、まあここは取調室だ、話を聞くとしよう。とりあえず・・」
俺はアイが逃げないよう両手両足に手錠をかける。足にまでやる必要なさそうだがアイは逃げ足は早い。
す巻きにして川に落としても次の瞬間には笑ってすぐそばで立ってるような奴なのだ。
あ、す巻きっていうのは布団でグルグル・・。
ノリ「それじゃあ話を聞くッス。
どうしたんですか、アイさん」
アイ「・・あ、もしかして僕の事を呼んでるんですか?」
声はあまりに弱々しく、しかも敬語で、更に僕なんてぬかしてきた。
俺は一瞬、こいつがアイじゃないんじゃないかと疑いをかけたが、アイは弱々しく話しかけてくる。
アイ「はは、どうしたもこうしたも、自首してきたに決まってるじゃありませんか」
ハサギ「アイが自首してきたァ!?
おい、お前ほんっっとうにアイか!?」
アイ「どうか僕の事はミトコンドリアイとお呼び下さい」
アイは遂に自分の事を侮蔑し始めた。もう俺の中ではこいつは自称アイでいい気がしてきたが、真面目なノリは話を続ける。
ノリ「微妙に語呂が悪いッス、一体何があったか聞かせてください、ミトコンドリアイさん」
ハサギ「お前も割りと良い性格してんだな」
ミトコンドリアイ「あれは昨夜の事です。
僕達ゴブリンズは何時ものように金持ちの家から財産を盗んできました」
ハサギ「金持ち・・って、あの一家の事か?」
ノリ「デミアン夫婦の屋敷ッスか」
デミアン夫婦。
夫婦で別々の事業を始め、互いに上手くいっているようでプール付きの屋敷を買って生活している夫婦。
一昨日、ゴブリンズはこの屋敷の不当財産を狙うという犯行状を警察、テレビ局、そしてデミアン夫妻に送っていた。
ハサギ「それで俺達はお前達を捕まえるため網を貼ろうとしたんだが・・」
ノリ「ボク達、あの二人に警備を断られたンスよね。
『そんなモノはない、だから警備の必要はない』ってつっけんどんに押されて」
ハサギ「テレビ局もそんな対応で断ったんだよな。
だからお前達は何の抵抗もなく財産を盗めた筈だが・・?」
アイ「ええ、実はそうなんです。
警備らしい警備もなく、目当ての財産は簡単に盗めたんですよ。
今思えば、それは罠だったんです。
その夜、アジトに戻って・・」
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
注意・ここからアイ視点です。
〜昨夜、ゴブリンズアジト〜
アイ「やったー!!
今日も沢山盗んだぞー!!」
全員「イェーイ!!」
俺達は皆で盗んだ財宝の数々を肴にパーティーを開いていた。
不当財産だからか、警備もおらず非常に簡単に盗み出す事が出来て、凄く嬉しかったんだ。
ススはキラキラ輝く黄金色の冠を見ながら計算尺(計算するための定規、ススは『持ち運びしやすい』という理由から愛用している)を使い価値を計算していた。
スス「うん、これだけあれば赤字が吹き飛ぶわ!ガッツリ儲かったわね!」
ルトー「これは弧児院の分、これは生活費の分・・うん、まだまだ残るぞー!
さいっこうだな!」
シティ「これもルトーが色々調べてくれたおかげよ!今日のルトーは最高だわ!」
ルトー「ははは、そんなたいした事、あるんだけどね(キリッ)」
ルトーはどの宝をどこに送るか決めていたが、その表情は非常に緩かった。
シティに至っては音楽をかけて踊っているし、俺達は至福の時間に浸っていたんだ。
その中で声をあげたのはダンクだった。
ダンク「あ、これ!
ここにあったのか!」
アイ「なんだ?なんか目当ての物を見つけたのか?」
ダンク「ああ、その・・。
昔俺が作った呪いのアイテムが混ざってたんだ」
アイ「呪いのアイテムだぁ?
お前、そんなの作ってたのか?
どれ、見せてみろよ」
ダンクが俺に見せてきたのは、小さな指輪だった。銀色の輪の中に青い宝石が組み込まれている。割と手の込んだ作り方だ。
アイ「ふん、随分綺麗な指輪だな。
ダンク、こんな器用な事が出来たのか?」
ダンク「いや、俺はこれに簡単な呪いをかけただけだよ。
二百年前、俺がある屋敷で何日か滞在していた時に奥さんに「夫をこらしめる道具を作って欲しい」って言われてな。
それでこの指輪を所持した者がある事をしたら不幸が起きるように呪いをかけたんだ」
アイ「ある事って・・」「そ、その奥さん、美人さん!?」
話に割り込んできたのはシティだ。ウォッカを一気飲みしたんじゃないかってくらい顔を赤くしながらダンクを睨み付けてくる。
ダンクもダンクで空気読まずにばか正直に答えてくれたよ。
ダンク「ああ、結構な美人さんだったな。
夫がなんであの人を置いて浮気してたか分からないぐらいに・・」
シティ「へーー、美人さんなんだ、へええええ」
シティは何故か機嫌を凄く悪くしながら右手を上げる。あ、あれは能力発動の合図・・。
ズドオオオオオオン!!
ダンクの直ぐ近くに電柱が天井を突き抜けて現れ、床に沈んでその姿を消していく。
天井と床の二つの穴だけが電柱が落ちた事を証明していた。
シティ「美人さんの話は誰でも聞くんだ、へえええ。こぉんな綺麗な指輪を貰っちゃったんだ、へえええ!」
ダンク「ま、まてシティ、落ち着け。
この指輪は奥さんが使うものだったし、それにこれはシティが考えているような話とは色々と違うんだが・・」
シティ「問答無用、でやーー!」
シティはダンクの腕をつかみ、一本背負いの要領で床に叩きつける。中身が空なのでダンクにダメージが入らないとはいえ、いきなり投げられて目を白黒させるしかないダンク。
いや目が無いのに白黒させるって表現もおかしいけどさ。
シティはすっかり機嫌を悪くしたみたいでダンクに背を向けたまま『今日は寝るわ、おやすみ!』という言葉を残して部屋を出ていってしまった。
途中から計算をやめて二人の様子を見ていたススがダンクに慌てて駆け寄ってくる。
スス「大丈夫、ダンク」
ダンク「俺は大丈夫だ、だがなんでシティはいきなり怒ったんだろうな」
スス「あーー・・。ジェラシー、じゃない?」
ダンク「ジェラシー?
なんかあったか?
あ、もしかしてこの指輪お気に入りだった・・?」
ススは「あー、わかってないなー」と言いそうな顔のままダンクを見つめる。
俺も分からない。もしかして、
ダンクを一撃で仕留められなかったのが悔しかったのか・・?
スス「ここの男どもはどうしてこう分からず屋なんだか・・。私はもう少し会計をしておくわ。明日に持ってくのも嫌だしね」
アイ「わりーな、スス。
それじゃ俺は一足先に寝るか、おやすみ、スス、ダンク、ルトー・・?」
そこで俺は気づく。ルトーの姿が何処にも見えないのだ。
アイ「あれ?
ルトーはどうした?」
スス「あれ、私は知らないわよ。
何時の間に部屋に戻ったのかしら?」
アイ「うーん、ま、いいか」
いざ寝よう、という時に何か起きた時、人は眠気に抗う事は非常に難しい。
今の俺が正にそれで、ルトーが何処に行ったかダンクが何を話したか、なんて何一つ気にしちゃいなかった。
今思えば、俺はなんて恐ろしい選択をしてしまったんだろう。ここで眠気に抗えっていれば、僅かに違う結末が見えたかもしれないのに。
いや、たらればは今はよそう。考えても意味がないのは、俺が一番知っている。
俺は何も知らないまま、何も抗おうとしないまま寝室に入って、両手の義腕をはずし、ねむりこけてしまったのだ。
俺は眠るとき夢を見ない。
だからあの時聞こえたのは間違いなく、
誰かの悲鳴だったのだ。
それは俺が眠り一、二時間も経った頃だった。不意に誰かの悲鳴が聞こえてきたんだ。
それで俺は慌てて目を覚まし、両足を器用に使って義腕を装着した後、部屋の外に出た。
すっかり暗くなった廊下の真ん中で、パジャマ姿のススが体をガタガタ震わせながらダンクの部屋の前でうずくまっていた。
それで俺は思わずススに駆け寄り、肩を掴んだんだ。
アイ「スス、大丈夫か!?
何があったんだ!?」
スス「ダ、ダ、ダンク、ダンクが・・!」
俺は慌ててダンクの部屋を見る。
簡素なベッドと机、閉じた窓の他には何もない。
いる筈のダンクの姿が何処にもない。
俺は部屋に入り込み、部屋中を探し出す。灯りをつけようとするが、何故か電気がつかない。窓からこぼれる月明かりを頼りに部屋を探し回ったが、何処にもダンクの姿が見つからなかった
アイ「な、なんだ、ダンクは何処に・・?」
スス「だ、ダンクはここよ!」
俺が振り返ると、ススは何かを手に持っていた。よく見るとそれはダンクの姿を模したソフビ人形だ。
俺は眉をひそめる。
アイ「まさか、それがダンクだなんて言わないよな?」
スス「これがダンクよ!
私、私眠くなって、ダンクと一緒に上に上がって、別の部屋で別れを言おうとしたらダンクの部屋が急に光って・・様子を見に行ったらダンクがいなくて、代わりにこれが・・!」
俺はダンクの人形を手に取る。
着ている洋服から包帯の数まで全部ダンクと一緒だ。
アイ「まさかこれがダンク・・?」
スス「わ、分からないわよ・・何でこんな事に?」
アイ「・・・・緊急にみんなを集めなきゃ!
おーい、皆ー!
ゴブリンズ全員集まれー!」
俺が声を上げて皆を呼ぶよう叫ぶが、誰の声も聞こえない。ススはすっかり怯えた表情で俺にしがみついてきた。
スス「み、みんないないの?
シティーー!ルトーー!」
しかし、ススがいくら叫んでも声は聞こえてこない。夜の静寂は容赦なく俺達の心の安寧を削っていく。
スス「な、なんで・・?
なんで皆起きないの!?」
アイ「落ち着け、スス。
皆はまだ寝ているんだ。寝ているから起きないだけだ」
スス「ええ、そう、そうよね・・」
アイ「今から二人がいるか確かめにいく。
ススはここで待ってろ」
スス「い、い、嫌、嫌よ!
わ、私もいくわ、一人にしないで!」
歩き出そうとする俺の背中にススがぴったりとくっつく。震えた吐息が僅かに聞こえ、背中に何か柔らかい物が触れてる気がするがそんなの今は気にしない。
俺達はルトーの部屋に向かい、扉の前に立つ。軽くノックするが、返事はない。
アイ「ルトー、いるかー?まだ作業中かー?
貴方の上司が呼んでます、早く起きて挨拶しなさい。
・・開けるぞ」
ルトーの部屋はまるで機械の博物館じゃないかと言いたくなる程、沢山の機械
普段なんかの機械が動いている筈なのにそれが全く聞こえない。
部屋に入り込み布団を確認するが、ルトーの姿は何処にも見えなかった。
アイ「ルトーが、いない・・」
スス「ルトー・・!
し、シティ!シティの部屋も確認するわよ!」
ススがシティの部屋の扉をノックもせずに開ける。壁を一つ破壊し、開放的なその部屋には、まるで最初からそうだったかのように、誰もいなかった。
俺は言葉を失い、茫然とするしかなかったが、ススは逆に憤慨したのか青ざめた顔のまま俺に詰め寄る。
スス「ちょっと、悪い冗談はよしてよ!
幾ら貴方達が悪戯好きでも限度ってもんがあるでしょ!?」
アイ「まて、まて!
俺は何も知らない!こんな悪戯、幾らなんでも質が悪すぎる!」
スス「いいや、貴方の悪戯に決まってるわ!
じゃなきゃ、そうじゃなきゃ皆が消えた事に説明がつかないじゃない!
早く皆を、皆を元の場所に戻してよ!」
ススは女の子とは思えない握力で俺の首裾を強く握りしめる。あまりに強く締めるから息が辛くなってきた。
アイ「まて、まてまてまて!
俺にこんな事出来ない!出来ないから!」
スス「じゃあなんで!?
なんでこんな事になったのよ!
お願い、教えてよ・・!(首ギュー)」
アイ「ま、まて、まず・・手を・・」
ヤバイ、マジで息が辛くなってきた。
だけどここで手を離したら余計に暴れそうだし・・俺、ここで、死ぬ、?
シティ「あれ?
二人とも私の部屋で何をしてるの?」
スス「シティ!お願い、どうしてシティが消えたか教えてよ!」
シティ「え、私はただむしゃくしゃしてたから空中散歩してただけよ?
て言うか、リーダー死にかけてるけど良いの?」
スス「・・え?あ!
り、リーダー!!しっかりして!!」
アイ「ブクブクブクブク」
俺、初めて口から泡吹いたよ。
案外簡単に出せるんだね、知らなかったよ、はは・・。
スス「りいいいだあああああ!」
それから十分後の食堂。
俺達は椅子に座ってこれからどうするか話し合う事にしたんだ。
ススは俺の首をぐいぐい締め上げた事を引きずってるのか完全にしょんぼりしている。
ソフビ人形になったダンク(?)を見ながら、シティは俺に話しかける。
シティ「・・悪戯の可能性、無いんじゃないかしら」
アイ「他にどんな可能性があるんだよ」
シティ「さっきダンクが言ってたじゃない、呪いをかけた指輪よ」
シティはそう言いながら胸元から先程の指輪を出し、机に置く。おい、何処にしまってんだ。
アイ「指輪だぁ?
それって確かお前が持っていた奴じゃないか、何でそれがこの状況になるんだよ?」
シティ「そうねー・・。
さっきむしゃくしゃしながら考えてんだけどさ、指輪にかけた呪いって、夫にかけるつもりだったんじゃないかなって思ったのよ」
アイ「奥さんが、夫に?」
シティ「ええ、たとえば不倫したら指輪が締まるようになる、とか。
そうすれば不倫出来なくなるじゃない。
互いに互いを思い合えば、一生仲睦まじく生きていられるー、とか」
アイ「なんだそのスイーツ呪いは・・」
でももしそう言う考えがあったら俺は今頃あいつに殺されてるかもなー、なんて呑気に思いつつ話を進めていく。
アイ「つまり、お前が言いたいのは今回の件がそのスイーツ脳の指輪が引き起こしたと言いたいのか?
ダンクをソフビ人形に変えて、ルトーの姿を隠して・・それで何が変わるってんだ」
仮にこれが指輪の仕業だとして、ダンクとルトーをどうにかして何がしたいというのだろうか。だが人形に変える意味は無いだろう。俺は何気無く指輪にさわり観察するが、指輪はやはり指輪のままだった。
シティ「そこよねー・・。
仮にこれが指輪の仕業だとして、何がしたいのか不明だわ・・」
スス「・・二人とも、これを見て・・」
不意に、ススが非常に重苦しい声で俺達に声をかけてきた。振り返るとススが手に何かを持っている。
俺はそれを見て、目を丸くした。
なぜならそれはルトーそっくりのぬいぐるみだったからだ。
まさか、先程一番最初に呪いにかかったのはルトーだったというのか!?
俺達はそれを知らないまま普段通りに過ごしていた・・?
スス「リィダァァ!」
アイ「わぷっ!?」
恐怖のせいか、ススが俺に抱き付いてくる。そう言えばススは感情が高ぶると抱き癖があるんだった。
ススは俺の背中にしがみつき、弱音を吐き出していく。
スス「わ、私、怖いの!
こんな変な指輪の呪いで人形になんて、なりたくない・・!」
アイ「わ、分かった分かった、分かったから少し落ち着け・・」
その時だ。
俺が手にした指輪が僅かに輝いたのは。 それはほんの一瞬で、すぐに消えてしまった。
俺は眉をひそめたが、すぐに違和感に気付く。ススの声が聞こえない。
急いで後ろに目を向けると、ススの姿は無く、代わりにススの姿をした人形が床に転がっていた。
アイ「・・!!」
シティ「す、スス!?
そんな、そんなの嘘よ!?」
シティが慌ててススの人形に近付き、静かに抱きしめる。それから俺の手にある指輪を睨み付けた。
シティ「これで決まりね。
その指輪が元凶なんだわ。
持ち主が好きな人以外とイチャイチャすると呪われて人形になるのよ」
アイ「この、こんな小さな指輪が・・皆を人形に変えた・・?
このやろう、俺の仲間を返しやがれ!!」
俺は指輪を投げつけたり壊そうと力強く握りしめるが、指輪は壊れない。
力一杯床に叩きつけるが、指輪は傷一つつかない。
シティ「なんなのこの指輪・・びくともしないわ」
アイ「ダンクめ、普段中身空っぽミイラの癖にたまに嫌な仕事しやがって・・。
しかも一番に人形になりやがって!
ソフビ人形とかマジ何なん!?
人形になっても中身空っぽとかふざけんなー!」
シティ「リーダー、ステイ」
アイ「うぐぐ・・。
塩対応で腹立つがイチャイチャすると呪われてしまうかもしれないと思うと強く言えない・・!」
シティ「いや普段からリーダーには塩対応よ?」
アイ「呪いの、せい!
呪い、な!」
シティ「・・・・・・」
アイ「・・・・・・」
お互い黙ったまま、時間だけが過ぎていく。一度部屋から離れれば、戻った時にいきなり消えるかもしれない。何か相談したいけど、何がきっかけで呪いが発動するか分からない。
そのため、何も言わずにじっと何かが起きるのを待つしかなかった。しかしただでさえ騒ぐのが好きな俺達が、
ただ、
黙っとるだけ、
なんて無理だった。
シティ「うっがああああああ!!
こんなの嫌だああああああああ!!」
アイ「俺もじゃああああああ!!
なんかねぇかああああ!!
ダンクウウウウウウ!!
ススウウウウウウ!!
ルトオオオ、は、いても意味ねえやなんかこの状況を抜け出せるのが出来る奴いねえか!?」
シティ「私に分かるわけ無いでしょバーカ!
ダンクが、ダンクがソフビ人形じゃなきゃなんとかなったんだよ!?
大体なんであいつが人形になってんの!?
その、好きな人以外に、イチャイチャしたらじゃ・・!」
何故かシティが異常に慌ててるが、俺も割りと焦ってる。
このままじゃ全員、人形になる。
発動条件がバカバカしすぎてマジでどうすれば良いのか分からない。
シティ「あー、もうこうなったら解散!
いっぺん解散して、なんとかこの状況を打開するんだ!」
アイ「えーーーーっ!!」
▲ ▽ ▲
警察署内・取調室
アイ「そうして俺達ゴブリンズは一度解散、職なし(?)になったんでここにいるわけさ。
笑ってくれよ、ハッハッハッ」
ハサギ「ただの自業自得じゃねぇか!」
ノリ「ホラーなのかバカなのか分からないッス・・というか、今までの話しは、本当の話しなんすか・・?」
ノリがボソッと呟いたそのセリフ。
俺はそのセリフを待っていたんだ。
先ずはちゃちゃっと手錠を外してっと。
次は隠しポケットからあの指輪を取りだし、机の上に置いた。
アイ「こいつが例の指輪だ」
ハサギ「持ってきたのか!?」
アイ「警察は証拠を欲しがるものだろう?
ほれ、これが組織を一つ崩した呪いの指輪だ、よく見とけ」
俺は指輪を指で弾いて二人の方に飛ばす。
それと同時に、足の手錠を外して、不成者格闘術(ナラズモノコマンド)、影鬼ノ歩(カゲオニウォーク)を発動して、と。
ハサギ「これが、例の指輪だと・・?」
ノリ「綺麗な指輪ッスね。
本当にこんなのに皆人形にされたんスか?
・・・・・・あれ?」
ノリは俺が座っていた席を見て、俺がいない事に気付く。それを背後から眺めた俺は今回の悪戯の仕上げの言葉を囁いた。
アイ「ああ、嘘だ。
だから、お前らにくれてやるぜ」
二人「え?」
二人が振り返るより早く俺は扉を蹴破り、外に出た所でアイスボムを放り投げる。
アイスボムが空中で破裂し壁を生成させて二人が逃げられなくなった所で、ここに来て初めて笑みを浮かべた。
アイ「じゃあな!」
ハサギ「ま、まてアイ!
おい、何を・・!」
ノリ「な、なんすか!指輪からガスが・・あはははは、ハハハハ!」
ハサギ「ハハハハ!ハハ、笑気ガスだ!
あ、あの野郎め!必ず捕まえてやる!
ハハハハハハ!」
指輪に仕込ませた笑気ガスは充分効果的なようだ。
さて、俺は今の内に警察署を抜け出してっと。
アイ「悪戯した時に追いかけてくる奴がいないってのはつまらないからな。
今度は追いかけてこいよ、ハサギ」
俺はそう言って、皆が待っているアジトに戻っていった。
続く
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