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2015年05月28日19:22

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角が有る者達 第99話

第99話 絶対無敵最強の鬼、ライ


ー俺は、英雄になりたかったわけじゃないー

ー報酬が欲しいわけでも、自己満足が欲しかった訳でもないー

ーだから、だろうか?ー

ーいつの間にか、何も欲しなくても生きられる存在になってしまったのはー




〜アタゴリアン国・城内食堂〜

ドレスに着替えた果心はパスタを食し、ナンテ・メンドールは目を丸くしている。

ナンテ「あり得ません」
果心「何が?」
ナンテ「ユーという小娘ですよ。
この計画はあの小娘にダメージを与える事にこそ意味があります!
世界中の組織に狙われ、一般人から忌み嫌われ、自分の居場所を完全に無くし自ら人を襲うようにする……それでこそ、この計画は輝くというのに!
何故アイツはあの怪物を『娘』と呼ぶんだ!?」
果心「細胞的には同じ個体だから、その呼び方で合ってるんじゃないの?」
ナンテ「確かに彼の細胞も含まれていますが、
半分は血染め桜なのですよ?
あんな怪木の血を引く奴を、受け入れる人間はいませんよ。
あいつやっぱり普通じゃない、狂った愚かな人間です」

ナンテ達はざわざわとざわめきながらアイを非難し続け、果心はパスタを食べ終え、水を飲み干す。

果心「それで、これからどうするつもり?
貴方の計画は今確実に狂い始めた。止める事は出来ないわね」
ナンテ「……それはどうでしょう?
これを見てください」

ナンテはリモコンを操作し、別の映像を写す。
それは沢山の戦艦が、WGP号を取り囲んでいた。

果心「……そう言えば、いたわね」
ナンテ「彼等にはあらかじめユーの事をこう伝えてあります。
『ユーは不老不死であり、その体を調べれば不老不死の秘密を知る事ができる』と。
だから彼等があの船を襲うのに何の支障もありません」
果心「でも攻撃は全てバリアで防がれているわ。
どうやってあの砦を攻略する気?」
ナンテ「勿論、巨石を投じて壁を破壊するのですよ。
その為に彼等を呼んだのですから」

ナンテ・メンドールはニヤリと笑みを浮かべる。

ナンテ「さあ始まりますよ、恐怖のショーダウン第二幕です!」


〜WGP号・ダンスホール〜


ユー「皆……ごめんなさい!
私のせいで皆に迷惑をかけてしまって本当にごめんなさい!」

ようやく気持ちを取り戻したユーがゴブリンズ達にかけた言葉の第一声が謝罪だった。
頭を下げ、体を震わせている。
それを見たメルが頭を下げなくていいよと言う前に、ススがユーの前に躍り出た。

スス「ユー!」
ユー「…!」
スス「顔を上げて?私は怒ってないわ」
ユー「で、でも、私は…パパに、酷い事を…!」
スス「ユー……もう、我慢できない!」
ユー「え?」

ユーが思わず顔を見上げると、ススの洋服(胸部分)が目の前にあり、周囲をススの腕が覆って、自分が抱き締められている事に、ユーはようやく気付いた。そして胸が大きくて息が出来ない事にも。

ユー「わぷっ!?」
スス「もー、可愛すぎじゃない!
さっき抱きつき出来なかった分沢山抱きしめちゃうんだから!
お姉ちゃんの胸で甘えなさい!」
ユー「す、ススちゃ……離し、て…!」
スス「えー、さっき抱きしめ拒否されたんだから許しません!
このこのー!」
ユー「は、恥ずかしい……」
スス「さっきまで派手な事していた人が言うセリフじゃないわ!
離さないんだから!」


ススはユーをぎゅうぎゅうに抱きしめ、ユーは暫く抵抗していたが、やがて諦めたのか両手をだらりと下げた。
その後ろでメルが恥ずかしそうにしていた。
カスキュアまでドン引きしていた。

メル「ススさん……」
カスキュア『あれは可愛がりすぎてペット死なすタイプね……』

そして2階、三階から見下ろしていた野次馬達(主に男性)は歯ぎしりをたてていた。

野次馬(なんだこの映像は!!
美女が幼女を抱きしめている!?
うらやましい……羨ましい!)
野次馬(ユーちゃんそこ代われ!)

その様子を見ていたハサギはフッと笑みをこぼした。

ハサギ「やれやれ、ゴブリンズはどんな奴も受け入れるとは聞いてたが、まさかユーまで受け入れるとはな。
全く持ってたいした奴だよ、アイは」
アイ「なら早くこの拘束を外してくれないかなぁ!?
しかもボコボコに殴られてあちこち痛いんだけど!」

ハサギの後ろでアイは縄でぐるぐるに縛られボコボコにされていた。
ノリはアイにフッと笑みを向ける。

ノリ「ダメッスよ。
アイは自分からドリルに頭を突っ込ませて自殺しかけてユーちゃん悲しませたんスから、これくらいしないと」
アイ「いやいやいや、これくらいの基準が分からないぞ!?
なんで蘇った途端ボコボコに殴られ拘束されなきゃならんのだ!
俺はまだユーの近くにいたいんだぞ!」
ハサギ「それだ!そのリア充根性が腹立つんだよ!
俺はずっとモテた事無いのになんでお前ばかり……リア充はすべからず爆発しやがれ!」
ノリ「ぼ、ボクはハサギさん一筋ッスから……(小声)」
アイ「ただの嫉妬じゃねーか!
へ、そんなんだから彼女できねーんだよバーカバーカ!」
ハサギ「んだとぉ!?
アイの癖に生意気なぁ!」
アイ「やるかコラァ!」(ぶちぶち)
ノリ「あ、拘束を無理矢理引きちぎった…」

アイとハサギ、長きに渡る因縁の対決の火蓋が今、切って落とされた!
唸れ、リア充になれなかった者達の怨み!
轟け、リア充になった者の傲慢な笑い声!
果たして勝つのはどちらか!
そんなどうでもいい対決がはじまりそうな瞬間、船の外から大きな爆発音が響き渡る。

ドッゴオオオオオオン!!

ハサギ「な、何だ今の爆発ぐふぉ!」
アイ「フハハハハ!
余所見した奴は負ける宿命なのだよ!
しかし今の爆発……まさか、な?」
ハサギ「おのれ……覚えてろ……」


〜WGP号・バリアの外〜

様々な戦艦やヘリ、戦闘機から潜水艦が揃ってWGP号の周囲を囲む中、1台のヘリからライに通信が届く。

『ライ!遂に命令が来たぞ!』
ライ「来たか、なんて命令だ!?」
『あのWGP号の砲撃許可が遂に下りた!
いくらでも撃っていいそうだ!』
ライ「待ってたんだよそういう派手な命令!
それじゃ行かせて貰うか!」

全身を銀色の鎧『ライジングヒーロー』で身を包み、背中に付けたバックパックで空を飛ぶ男、ライ。
彼は鎧の奥で狂気的な笑みを浮かべ、右手に持っていた砲身2メートルはあるバカでかいバズーカを握り締める。

ライ「遂にこいつを使う時が来た!
あのWGP号を一気に沈めてやる!」
『バカ、そしたらユーを見つける事が難しくなるだろ!
先ずはバリア発生装置を破壊するんだ!』
ライ「ち、一気に沈めたかったのに……。
能力発動、『ライジング』!」

バズーカの周囲がバチバチと輝き、エネルギーが貯まっていく。

ライ「俺は『体内から発生した電気を自在に操る能力』!
一見地味な能力だし他にも使える奴は一杯いるが……俺にはこいつがある!」

ライは軽くバズーカをたたく。

ライ「対衛星長距離電磁砲、通称『333mm(トリプル)』!!
天才軍から奪ったこいつと、今着ている特殊スーツ『ライジングヒーロー』のお陰で、俺は『電気を操る能力者』の中で最強を誇る事が出来たんだ!
さあ電磁砲よ!また輝く時が来たぞ!
一撃で奴等の頭を覚まさせろ!!
俺が無敵と脳味噌に刻み込ませろ!
俺は、絶対無敵最強の鬼、雷鬼のライだ!」

バチバチバチバチ!!
電力を一気に流し込み、バズーカの筒の中が光輝く。
それと同時に、エネルギー満タンを知らせる警報が響いた。

ライ「瞬く間に全て砕けろ!!」

ズドオオオオオオオン!

ライがバズーカの発射スイッチを押すのと同時に強力なエネルギー弾が爆音と共に発射され、海を裂きながら真っ直ぐ船へ向かう。
そしてエネルギー弾はバリアに衝突し、瞬く間に破壊する!!

バリイイイイン!!

エネルギー弾はそれでも止まらず、三階部分を掠め直進し続け、地平線の果てで爆発した。

ライに「ひひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!
流石『トリプル』!流石『ライジングヒーロー』!流石俺ェ!
無敵の名を頂くのは、この、『雷鬼』ライ様だぁ!!
ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」



〜WGP号・コントロールルーム〜

イシキ「なんじゃ、今の爆音は!?
バリアはどうなった!?」
乗組員A「バリア……消滅!
今の一撃で完全に破壊されました!」
乗組員B「バリア発生装置再起動までに要する時間は一時間です!」
イシキ「遅い!
それでは奴等の的にされてしまうぞ!もっと早く出来ないのか!?」
乗組員B「やってみます!」

イシキと乗組員は騒ぎながら状況を対処しようとする。
だが、ルトーが一言言うとそれは止まった。

ルトー「だ、大丈夫だよ!」
イシキ「何が大丈夫なんじゃ、小僧!
バリアが砕かれれば奴等の攻撃を防ぐ者は何も無くなるんじゃぞ!」
ルトー「だって、僕達には最強の味方がいるんだから!
ほら、見てよ!」

ルトーが無数にある監視カメラのひとつを指差す。
そこには、船から飛び出す二人の女性の姿が映し出されていた。


〜WGP号・船外〜


ライ「さて、後は戦艦達がドカドカミサイルを撃って沈めてくれるだろ?沈む前にユーを見つけてかっさらえば、俺達の勝ちだ!」
『最高だな!
さあ少し船から離れて……待て!
今、船から何か出てきたぞ?』
ライ「あ?」

ライが船へ振り返ると、二人の女性が空を飛んでいた。
一人は鉄板に乗って、もう一人は何の推進力も使わず空を飛んでいる。

ライ「!?」

そして二人の女性は、目を丸くするライの横を通りすぎた。
ただ一言、「ありがとう、私を檻から出してくれて」と去り際に言葉を残して。
ライは思わず呆然としていたが、やがて有ることに気付く。

ライ(何だ……この、お腹から来る感じは……?
もしかして、これが恋?)

そして、自分の腹部を4発殴られ、30メートル吹き飛ばされていた事にようやく気付いた時には、電柱が自分の背中にのしかかっていた。

ライ「は!? 電柱!?
ここは海の上……」

だぞ、と言い切る前にライは海に叩きつけられ、ゆっくり沈んでいった。
それを尻目に二人の女性、シティとペンシはまるで鬼のような笑みをこぼしていた。

シティ「ねぇペンシ!
私思う事があるのよ!
ここで私達を倒すよりさあ、あんな硬い船で高見の見物してる悪い奴ぶっ飛ばしたいって思いたくない?」
ペンシ「奇遇だな!
私も思っていた所だ!
傲慢な奴等の鼻をへし折り煮て焼いて食わずに海に捨てて、雑魚の餌にするのも面白そうだ!」
シティ「いいわねそれ!どっちが多く潰せるか、勝負よペンシ!」
ペンシ「望む所だ!
まあ勝つのは私に決まってるがな!」
シティ「言ってくれるわね!
勝つのは私なんだから!」

シティとペンシはニヤリと笑い、無数の戦艦に向かっていった。

続く。

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