短編小説
全人類均一化計画
『全人類均一化計画』
貧困、環境汚染、戦争、政治…。
様々な問題を解決するため、ある一人の学者が装置を開発した。
それは人類均一化装置。
この装置に入る事で、人間の思考、世界観、判断基準、外見は一定となり世界を均一化する。
それはすなわち世界の文化、歴史、価値観を破壊する事に他ならない。
初めは反対する人が大勢いたが、均一化されてない彼等の意見が揃う事はなく、身内同士で争うだけに終わってしまった。
それを見た博士や政治家はこぞって価値観の均一化を推進し、世界中の人間が装置により均一化する事が決定した。
これが均一化された人類の姿である。
そして、数年の月日が経ち、装置は全人類を均一化させた。
思考、外見、世界観を均一化された人類は争いが無くなり、銃を持つ意味を失ったかに見えた。
しかし均一化された人類は仕事をこなす事が出来なくなっていた。
子育ての仕事をする者は子育てができなくなり、
警察や軍人は自分の行動に自信が持てなくなり、解体された。
均一化された人類は仕事に自信や才能を見出だす事ができなくなり、芸術は完全に死滅。
小説、宗教、漫画、音楽、絵画、造形、更には工業、料理までもが存在の意味を無くした。
均一化した彼等だが感情を失った訳ではない。
人々の感性があくまで均一化されただけで、怒りや悲しみはある。
そのため仕事が出来なくなった者達は悲観し、自殺したり異常行動を起こすようになる。
だが異常行動を起こした者は反逆者として裁判に掛けられ、死刑となる。
均一化された世界に残された最後の個性、それは法律だったのだ。
それに気付いた者達は法律を大切にするようになる。
新しい法律を作る事は国の行事のように大切になり、人々は国の法律をまるで神のように崇めていく。
これが彼等から見た神々しい法律の姿だ。
しかし法律は世界均一ではなく、国一つ一つに合わせた個性だった。
法律を大切にするようになった人々は、違う法律にケチをつけるようになる。
我が国の法律はここが素晴らしいのに、君達の国の法律はそこが違うのだ、と。
それが発端となり、人々は銃を持つ意味を取り戻す。
人々は自分の法律の為に、相手国の法律を崇める人々を殺し、自らの国の法律によって死刑になり殺される。
それを見た人々は彼等を英雄と崇めるようになり、彼等の均一化した感性の中で光り輝く存在になる。
また殺された法律の国の人から見れば彼等は敵として憎まれるようになり、均一化した感性の中で闇の感情の中心となっていく。
このままでは戦争が始まってしまう。
その危険性を考慮し、再度均一化の為の装置が動き出した。
しかし、再度均一化の装置が動き出してしまった為にある事実に人類は気付いてしまう。
『人はそれぞれ、少しずつ違って存在しているのだ』、と。
気付いてしまった人類はもう均一化を讃えていた時代には戻れない。
そして気付いた人類が最初に行ったのは、失われたモノを取り戻す為に均一化解除装置を作り出す事だった。
Fin
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