mixiユーザー(id:10039230)

2021年02月26日20:48

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悪魔の涎


そもそも出だしのタイトルが気持ち悪い。
ただ自分で付けた訳じゃないので説明すると
穏やかな秋の日などに空中に浮遊する
細い蜘蛛の糸、という意味だそうだ。
別名ゴッサマーとも言うらしい。

作者がなぜそんなタイトルを付けたかは
読めば分かるかと思うがこの短編集は
自分の中では当たりだった。
幻惑的な現代の寓話物。
安部公房やカフカ好きには
たまらないかもしれない。

10編からなる本だが特に好きだったのが
「南部高速道路」という小品。
ネタバレするが少し説明すると、
主人公が片側6車線の高速で大渋滞にはまる。
理由はもちろん最後まで説明されない。
皆イライラし罵詈雑言を吐きはじめる。
解消しない渋滞の中次第に秩序が生まれ
リーダーを決めグループが出来始める。
そして生活が始まる。
季節が変わってくるので最低でも半年は
渋滞にはまってるんだと思うが、
時間の概念が重要では無いらしく
やはり明確な記述はない。
その生活の中で主人公は隣の車の女性と恋に落ち
子供も授かる。
大渋滞の中での生活が日常となり充足してくる。
そして渋滞が解消される。
今まで周りに居たグループ、コロニーみたいなの?
が崩れていく。
皆散りじりバラバラになり隣の彼女の行方も
分からなくなってしまった時、主人公は
これまでの生活が一瞬の内に崩れ去ってしまい
途方に暮れている、という内容。

他の小品も全体的に良かった。
ここでの良かったとは、恐ろしかったと同義語となる。
口の中から子兎を産み落とす男の話とか。10匹も!
いずれにしても好き嫌いの分かれる作家だと思った。

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