仮設住宅の集会所に来るおばあちゃん

こっちの言い方では「おばんつぁん」なんだけどね。
仮設住宅の集会所で、おばちゃんたちがお茶のみしていると、
ときどき来るおばあちゃんがいて、
震災のときに亡くなったおばあちゃん、とみんな知っている。
でも、誰もそういうことは言わず、驚いた様子もしないでふつうにお茶を入れて、
おばあちゃんは座って自分からは話はしないけどみんなの話を聞いているんだが、
何か用事を思い出したようにふと立ち上がって出ていくんだそうだ。
おばあちゃんが出ていったあと、みんなは
「忘れっぽい人だったから、自分が死んだのも忘れてるんだべね」と言い合うそうだ。
いい話だな、と思った。
その仮設住宅も引っ越す人が増えて、集会所は閉鎖されてしまったが、
おばあちゃんはどうしただろうか。

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