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2017年03月10日22:46

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「カピタン」研究(95)

 最後の作品はCPIAの著者の一人、J.M.Rice氏が、自ら「超モダン作」と云う、Cyclic-patternの表現の限界を極めた作品である。

(I)John M. Rice
problem 1961, 1st Prize
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#2(6+8)

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(紛れ 1.Sb6+??には1...Ke7で逃れ)

 やった!やりました!!Setと紛れと正解の3通りの手順の中で見事ZagoruykoのテーマとAB:BC:CA形式のCyclic-patternを画きました。これほど完成した純粋なCyclic-patternは考えられません。現代創作技術の勝利!チェスプロブレム万歳!
 だがちょっと待って下さい。冷静に見ましょう。初手1.Sf6+は両王手です。チェスプロブレムでは「王手は悪手」です。まして両王手の初手なんて、すごい悪手です。また、ジッと待つような初手(好手)にはQd4の逆襲がありますから、正解(王手)は殆ど選択の余地のない手だということもすぐ判ります。些か興ざめですね。ここらが、作者自ら(苦笑交じりに)「超モダン作」と云うゆえんでしょう。(I)図を傑作と見るか、見ないかは主観の岐れるところです。
 こう云うチェスプロブレムの鑑賞は一苦労です。「正解」だけを発見しても駄目です。「正解」なんて作意全体のごく一部であり、「紛れ」や「Set」を含めた全体を解読しなければ、作者の意図も作品の真価も判らないのですから。作者の意図が判らず、おかしな批評が出るのでは、と心配にもなります。

 チェスプロブレムの世界。彼らの到達した境地が御判りでしたか。かなり意外な結末だったのではないでしょうか。「2手問題」の世界は、退廃しかかった文化を思わせます。しかしチェスプロブレムのこんな行き方に一面、疑問を感じながらも、「たった2手の極限の空間」でこんな事をやってのける彼らの世界にたまらない魅力を感じます。チェスプロブレムの行き方を理解し、日本にも多くのファンが増えることを期待して拙稿を終えることに致します。
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