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2017年02月21日22:40

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「カピタン」研究(83)

 以下の説明は、M.Lipton, J.Rice, R.C.O.Mathewsの共著「Chess Problem : Introduction to an Art」(CPIA)の解説順によるが、例題の大部分は他の著書からピックアップしたものである。

チェスプロブレム2手問題のテーマ 


 現代の2手問題は、たいてい何らかの「テーマ」を表現している。「テーマ」は何通りかの変化の中で反復的に表現される。「テーマ」を持たぬ2手問題は、「テーマ」を持たぬ長編詰将棋と同じで、コンクールなどで入賞することは、まずあり得ない。「テーマの表現」は2手問題の最低必要条件である。次にポピュラーなテーマを幾つか紹介しよう。

1)玉方・自己妨害のテーマ(Black self-block)

 攻方の初手の狙いを防いで、玉方がある駒を動かして受けたとする。ところが結果的にその駒が自玉の逃げ道を妨げる邪魔駒になってしまい、新しい詰め方が生じるのが「自己妨害」である。自己妨害はユーモラスな感じがあり、よく取り上げられるが、偶発的にも発生するので、テーマとして表現する場合には、一つの作品の中で何回も自己妨害を発生させねばならない。

(A)Charles Gold Watney
Good Companions 1920
フォト
#2(6+4)

1.Bf4 zz
1...Kf1 2.Se3#
1...f1=Q 2.Sgf2#
1...f1=S 2.Qd5#
1...Kf3 2.Sf6#
1...Kh1 2.Qd5#
1...h1=Q+ Sh2#
1...h1=S 2.Se3#

 玉側のP成(4通り)が、それぞれ有力そうな応手に見えるが、そrをそれぞれ邪魔駒(自己妨害)に逆用して、「あなたのその手が悪かった」と詰め上げるユーモラスさが狙い。
 なお、アンダーラインの手は「本手順」なので最終手であっても別詰の存在は許されない。(本手順以外の変化の別詰は、大きなキズと考えないが)


2)玉方・自己干渉のテーマ(Black self-interference)

 前項と似ているが、攻方の狙いを消した玉方の応手が別の玉方の駒の利き筋を遮る結果となり、新たな詰め方が生じるのをテーマにしたもの。BとRなどの間に良く生じる。やはり、一つの問題中に何回も表現することが必要である。

(B)Lev Loshinsky
The Problemist 1930
フォト
#2(6+7)

1.Qf2(2.Qxa7#)
1...Bd4 2.Qxe2#
1...d4 2.Bc4#
1...Rd4 2.Rh6#
1...Sed4 2.Qa2#
1...Sfd4 2.Ra3#

 攻方Qf2のa7への利きをd4の地点で食い止めようと云う訳だが、その都度その駒が他の守備駒の利き筋を妨害して新たな詰め筋ができてしまうと云う構成。1局で5通りも自己干渉を表現したのが作者の腕前。


3)Un-pin(釘付け解除)のテーマ

 Q,B,Rなどが相手方の駒を「動けば王手だぞ」と牽制して動けなくしている状態を「釘付け」(Pin)と云う。Un-pinはこの逆で、折角攻方の駒を釘付けしていた玉方のQ,Bなどが他所に移動してしまい、釘付けから解放された攻方の駒が詰に参加してくることを云う。別の見方をすると、攻方は、初手の効果で、問題の駒をUn-pinしたとも云える。
 Un-pinも興味深いチェスプロブレムのテーマである。勿論1局の作品の中で何通りもUn-pinを表現しなくてはならない。

(C)Arnoldo Ellerman
L`Alfiere di Re 1925, Guidelli-Memorial 1st Prize
フォト
#2(9+6)

1.Rd8? 1...Qf2!
1.Rd7! (2.Qf4#)
1...Qxb7+ 2.Bxb7#
1...Qd4 2.Sd6#
1...Rd4 2.Re7#
1...Qe5 2.Sc5#
1...Qf2 2.Sd8#
1...Bf2 2.Qxh1#
1...Bf3 2.Qd3#
1...Qh8+ 2.Sd8#

 Sb7を釘付けしているQb2が防御に出動してしまい、解放されたSb7が詰駒として暴れだす。Qの移動先に応じてSの跳び先が変わるのがテーマ。初手Rd7はチェスプロブレム好みの妙手で、d7に限定しているのがイノチ。玉方Qh8の逆王手を避けて初手Rd8が本手みたいだが、それだとQf2の妙防がある(Rd7の本手順なら、その時Sd8の詰み)。又Rd6でも良さそうだが、その時はQd4の妙防(本手順なら、その時Sd6の詰み)があり、更に初手Rd1にはQd2の妙防が準備されている。本題は非常な名作で、上記の本手順は玉方の自己妨害や自己干渉も表している他、攻方の紛れは攻方の自己妨害を表すなど、豊かな内容を含んでいる。

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