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2016年12月27日11:50

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ジャングルの元鉱山鉄道 スマトラのモレック 3

本題に入る前に、まずは解説(蘊蓄)から。ネット上で調べたものや現地での聞き取りで1次資料には接してないので間違いも多いと思いますが、大きく外れてる事はないかと思います。

☆=写真拡大可

・インドネシア スマトラ島のモレックとは
ネットによるとMolek(モレック)とはMotor Lori Ekspresの略でインドネシア語の美しい女性という意味に当たるそうです。

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☆ 見方によっては美しい?し、可愛くもあるMolekわーい(嬉しい顔)

今のところネット上で私メが知りうる限りのものは日本語のものはモレック 1 でも紹介したレイルマガジンのネット、編集長敬白2011年8月15日の「絶句! スマトラの森林鉄道」と、その元になったインドネシア日本人駐在員のブログ、他ちょっとだけ何かのブログで見た様な・・・位のものです。海外まで視野を広げるとインドネシア人のブログに時々紹介されたりしてますが意外な事に蒸気機関車情報で世界的にも知られたイギリス ロブ・ディクソン氏のHP Inter National SteamでGold Mine Railways in Sumatraとして紹介されており2015年訪問レポートも上がってます。この中には1991年に当地を訪問したレポートもあり、現在とはあまりにも状況が違うので驚くばかりですが、この中の写真は2枚を除いて撮影地を全部特定できたのは自分でも呆れたりウッシッシ
さて編集長敬白では森林鉄道と書かれてますが実際には金鉱山を連絡する鉱山鉄道で正式名称がイマイチはっきりしないんですが先のInter National SteamではLebong Tandai Gold Railway(レボンタンダイ金鉱山鉄道)と書かれてますがレボンタンダイでLusan Mining(ルサン鉱山)の表記を見たので私メ的に「ルサン金鉱山鉄道」としておきます。まぁルサンの名称はこの鉱山を所有してた会社名かも知れませんが・・・
しかし蒸気機関車中心のInter National Steamに現在はモーターカーの部類しか走ってないモレックを何度も紹介しているのは、それほどこの鉄道のインパクトが強かったと言う事でしょうか? 私メから見ても確かに強烈なインパクトでありましたほっとした顔

位置的にはインドネシアのスマトラ島南西部、インド洋側にあり赤道直下の少し南側、南半球に属します。この軌道のあるベンクル(Bengkulu)州は世界最大級のの花の一種、ラフレシアの森として知られてるそうですが鉱山とは別の地域だとの事。この鉱山鉄道、ネット上の地図には詳しいものは載っておらず、米国テキサス大学オースティン校のデジタルアーカイブが上げてる米軍測量製作の1:250.000(別の見方をすると米国が他国を測量したトンデモない代物ウッシッシ)が一番詳しいと思われます。

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その地図の鉱山鉄道周辺のアップ。全長約33km、支線も見え、他鉄道とは全く連絡してない完全な独立した鉄道である事が解ります。鉱山から下流に輸送された鉱石は起点に当たるNapalPutih(ナパールプティ)から河川を使った船輸送だった事が想像できます。鉱山のあるLebongTandai(レボンタンダイ)には現在でも車道は無く、このモレックが唯一の生活路線です。

ネットでは書かれた地図は見当たらないと書きましたが、実はヤフーの日本語地図に全線の2/3程ですが記載されてます。

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☆ 左上のバリサン山脈表記の左下辺りに確かに鉄道表記があります。しかしこれ以上近付くと別のリンクに飛び、そこには残念ながら鉄道表記はありません。

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私メはGPSレシーバーを持参したので、そのログ記録から大体の線形を把握、グーグルマップに落とし込んだら衛星写真上ではズレは殆ど無いようでしたが地図にすると何故か河川が北約600m、東約200mズレており、それを修正したものを作成した次第。まだ細かい調整はしてませんが不通区間の場所、トンネルや一部の鉄橋の正確な位置出しは出来たと思ってます。

私メが2014年に訪問した時はナパールプティから延々ジャングルの中を走り、不通区間を徒歩で通り、その先も別のモレックに乗りジャングルの中を走って着いたレボンタインダイ(LebongTandai)は確かに細々と鉱石を掘り出してますが鉱石積み込み施設(跡)などは見当たらずイマイチ経営主体がはっきり見えてきません。
ネットや聞き取りで歴史を簡単に辿ると開通は古く1910年、軌間600mmの蒸気機関車による運行で1920年代の古い写真では人員輸送用のシンプレックスタイプのモーターカー3台が写っており、1991年時点では既に内燃機関車による列車運行だったようです。オーストラリアの鉱山会社が鉱山鉄道としての機能を有してたのは1994〜1996年頃までで鉱山会社が運営してたのは2011年春頃まで(会社倒産とも聴いた)。現在(2014年当時)は個人運用?のようで個人がモレックと呼ばれるワンボックス形状の動力車を所有、鉄道管理のボスに使用料を日本円換算で1日約500円を支払い、モレックの運行者が乗客から運賃を徴収して運営されてます。運賃は数年前で片道Lp20.000(約200円)、これは不通区間の前後の通し運賃かは未確認。我々はモレックをチャーターしましたが、これが不通区間の前と奥とでは別に費用がかかり聞いたところでは計Lp600.000(約6000円)、不通区間が無ければ、これの半額で済んだ訳ですが、この不通区間の影響で運用時間が普段と変わっていたおかげで終点のレボンタンダイでの滞在時間が長く取れました。
保線などは30年間行われてないとあり、途中軌道を掘り返したような跡を何カ所も見たのを保線作業跡かと思ってましたが、これはどうやら森の動物が餌探しで掘り返した跡だったようですたらーっ(汗)

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☆ 線路は鉄枕木で固定されており、泥に埋まった軌道も何とか軌間を保ってますが永年の無保線軌道は劣悪極まるもの?で、波打つへろへろレールは当たり前、ジョイントが完全に外れてたりレールが横倒しになってるところもありますが重量の軽いモレックは平気でそんな所も走って行きます。元鉱山鉄道だけあってレールは太く、多分12〜15kg/m位はありそうです。(参考までに日本の森林鉄道で多く使われてたのは9kg/mレール)

さて現在の動力車は1種類で先にも書いた通りワンボックスタイプのモレックが約20〜30両はあり、地元の工房が鉱車かボギー台車の1つを動力化改造、木造のボディーを架装、外見的には基本皆同じ形状ですが窓形状に3種類位の形状差が見られ、工作所の違いか造られた時期の差と思われます。

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☆ 窓が真っ直ぐなタイプ。

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☆ 一番前の窓が斜めに下がってるタイプ。

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☆ 窓に大き目のRが付いたタイプ。車長は約3.3m、偶然にもショートホイールの旧型ジープと同じです。何か親近感が湧いてきた?目がハート

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☆ これはレボンタンダイの社長が乗ってくるヘリのヘリポート横にあったもので、社長専用車? 社長と言うより金鉱山仕切りのボスなのかな? 他車とは違い全窓にアクリルがはまっており、車内も布クッション位の、他よりちょっと丁寧なシート装備だったかと。

モレックの前面の顔やカラーは各所有者のカスタムのようで派手な色が多い上に実物の照明(ライト)以外に板でヘッドライトが表現されてたりと結構楽しめます。

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☆ 荷物が多い時は平トロが連結され、ここに山のように荷物が積み上げられます。

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☆ 置かれてる平トロを見てるとモレックからの動力解除車の格下げ車?も多くチェーン用のスプロケットがはまってますが、よく見たらスプロケットを半分に切断、トロッコの車軸を噛ませて再び溶接したワイルドなもの?ですうれしい顔

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☆ 車軸を切断、再び繋げたものも見かけましたが、これでよく車軸の中心が保てるなと思ったら、やはり偏心してしまったものもあるんだとかあせあせ

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☆文章が前後してしまいますがモレックのエンジンは台車上に固定されミッドシップに当たります。

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☆ エンジンは中国の三輪トラック等に搭載されてる王(ワン)エンジンでディーゼルとありますが焼玉単気筒エンジンです。

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☆ 時たまクボタなどの日本製エンジンも見られました。

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☆ 運転席は車内シート第2列目にあり、エンジンからトランスミッションへはベルトドライブ、ミッションからは2本のレバーが出てますが一本は通常の変速レバーで使っても2〜3速までとか。もう一本は複変速機でジープのようなハイとローに切り替えられるようです。ダイハツの刻印が見られたのもあったので調べたらダイハツの軽トラで複変速機が付いたものがあるようです。

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☆ 速度調整は足元の右アクセル、左はクラッチと自動車と同じ。ハンドルはブレーキです。ここからはチェーンで車輪に伝達されます。

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古いミッションが置かれてるのを見かけましたがレバーが1本なので以前のモレックは複変速機が無かったと思われます。

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☆ 前後車輪共チェーンが掛った全輪駆動でベアリング以外にクッションが無いので軌道状態の悪い所では一輪浮いてしまってますたらーっ(汗) チェーンの調整も車軸留めボルト穴が横方向に楕円に開けられてるので、これで調整するようです。しかし元々無動力車からの改造ですから車輪のタイヤ部の厚みが薄い事・・・空転も多いのでレール接地部の擦り減りも見えます。軸受カバーも無くベアリングが露出しており、泥の中を走るような事もあるのでベアリングが泥砂を噛み込んでると思いますが大丈夫なんでしょうか?

このモレック、1台15万円程で造ってくれるそうです。

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☆ しかしモレック全車、真横から見ると3.3mの車長に対して鉱車等と流用してるらしい台車部のホイールベースが1m以下と狭く、著しくアンバランスです。これで状態の悪い軌道を爆走するので、当然ながら著しく揺れまくります。画像では2列目が運転手。

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☆ そして乗員が片側に集まるとバランスを崩して当然こうなる訳でしてげっそり しかしこのアンバランスが現地で見ててわざとである事に気付きました。モレックは鉄道車両にあるべき逆転機を持たない自動車と同じ方向性のある、いわゆる単々(タンタン)に当たる為、終点では方向転換の必要がありますが、これがアンバランスを利用し一人でもヨッコラショと持ち上げ1軸状態にして方向転換させてしまう訳です。これを応用して側線入線や、車両の入換え時には線路の無い地面の上を走って入換えさせたりしており、先に書いたレールが横倒し状態の走りも含めてレールの無い所も走れる、他では見られない? ブッ飛び軌道ぶりですわーい(嬉しい顔)

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☆ モレックは個人所有と言う事もあり、オーナーの家の前などには側線…車庫線が日本の保線モーターカー側線のように線路と直角に延びており、殆どの場合はレール変わりに角材レールが使われ本線部は廻し易いように板が敷かれてます。

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☆ 場所によっては側線レールが、ただの丸太のところもうれしい顔 日本で言う木軌道の原始判?うれしい顔

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☆ 保線が行われて無い本線は劣悪状態で普通にベコベコ軌道が続く所が殆どですが場所によっては泥の堆積がレール上面を上回り、地面に対してレール面が凹んだ状態の所も多く見られました、勝手にプラレール状態を呼んでますあせあせ

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☆ 本線の丁度中間部より少し上流寄りに2013年の地震で鉄橋が落ちて、今現在でも不通状態が続いてます。ここは徒歩連絡で上下からモレックが到着するとジャングルの中が、とても賑やかになります。

運転はモレックの定員は8人程なので決まった時間に5〜6台以上が続行運転、チャーターも基本同じです。信号システムなどありませんが衝突を避ける為に一応の決まり事はあるようで、我々の行った不通区間がある状態では下のナパールプティと上のレボンタンダイをほぼ同時刻に出発、丁度中間点の不通区間で両モレック群が同時に到着、乗客はそれぞれ反対側のモレックに乗り換えて先を進むシステムで中間折り返しの1日1往復ですがレボンタンダイでのチャーターでの下りは夕方までに下から坑木を積んだモレックが最後に上がってくるので、これを待ってからナパールプティ(正確には中間不通区間)に向けて出発します。不通区間が無い時代はナパールプティを朝に出発したモレック群が昼頃にレボンタンダイに到着、1時間強程で折り返してナパールプティに戻って行くもので、レボンタンダイではゆっくり見る事が出来なかったそうです。このレボンタンダイが、まためちゃくちゃ面白いんですけどネ。

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☆ レボンタンダイでは何カ所か坑口が確認できましたが軌道が入ってるのは1カ所のみ。坑内軌道と鉄道線が共通というのは海外では、よく見られるシステムですが日本では昔の神岡鉱山鉄道(軌道)が代表例かな?
坑口上に書かれてるのは「M.G.BAILLIE PORTAL MARCH 1987」
資料によるとLevel 6と書かれており、このレベルでの奥行きは約3km、坑口標高がグーグルアースでは223m、内部の支線&採掘坑道は図によると上は約350m(標高)、ルサン川対岸の左岸側に至っては標高約400m,、下は海面下約200mまで、約20段のレベルで採掘されてたようです。その地下大国のメイン入り口!

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☆ レボンタンダイ集落内では鉱石輸送にも使われてますが各坑道からは土嚢袋に原石を詰めて人力で運び出され、軌道のある所は平トロに積まれて運ばれてます。

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☆ 周りの人々は押しているのではなく下り勾配があるのでブレーキ代わりの押さえ役です。平トロによってはブレーキてこの付いたのも見ました。

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☆ 運びだ出された原石は筒に入れられ水車動力で回転されながら細かく砕かれ、最終的には水と水銀で金を取り出します。この水車風景が凄く、最初に見た時は21世紀に、こんな風景が見れるのかと言葉を失いました。これが集落内数カ所にあります。

採掘されて選り分けられた砂金は、どのように処理してるのかと疑問に思ってましたが、最近になってSUMATRA COPPER & GOLD plc(スマトラ・カッパー・アンド・ゴールド=スマトラ銅&金)のHPにLebongTandai(レボンタンダイ)の鉱山に関連したTandai Projectと紹介されてたので、現在の採掘権等を持っている会社で採掘された砂金も、ここで処理されてると思われます。このSUMATRA COPPER & GOLDは近隣地域でも数か所鉱山を運営しており、場所によっては露天掘り+下部方向へスパイラル坑道採掘(多分トラックレス=軌道を使わないシステム)を行ってるようです。


ところで今年の春頃に何気にモレックの事を調べてたら2015年12月にレボンタンダイの集落で土砂崩れが発生、複数名が埋まったままというニュースとブログに行き当たりました。ニュースはインドネシア語でネットの機械翻訳でしか解らない上に上がってる写真も崩れた場所だけで集落の、どの辺かが解りません。救助隊が線路を3時間半歩いて向かったとか(不通区間から歩いて向かう距離=時間に一致する)、車道を開通させてほしいとかのインタビュー(車道が開通するとモレックの存在そのものが危うい?)が見られましたが、これを聞いた知人が今年の夏に現地に行ったそうですが、いつもと変わらぬ風景で土砂崩れはどこ?という事だったとか。結果的にモレックに被害が出てなかったようですが、あのニュースの現場はどこだったんでしょうか??

次はいよいよ本題へ。

この日記、多分書き足しや訂正も今後多く発生すると思うので、書き足し等が出たらボイスで告知していきます。


続きのレポート
4
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1957696649&owner_id=1335677

2
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2014年リスト
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1941249429&owner_id=1335677


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