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2016年12月25日10:38

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双子の経膣分娩のいやな思い出

第一子出産後に助産師が手を突っ込み逆子と判明→一時間後子宮口が閉じてしまう(あるんでしょうか?双子出産って大変ですね…)→約一時間半後に第二子逆子で出産→30分後退院
…という流れです。

上記は某マイミクさんから、某ママQに書いてあったという話です。

ふたごは、今はけっこうな確率で帝王切開になっているのではないでしょうか。
もし万が一何かあればふたりの赤ちゃんの命が危なくなる、
場合によっては母親含め3人が危なくなるのですから。
経膣分娩できるのは、「二柔毛膜二羊膜」といって
「ふたつのふくろに別な胎盤につながったふたりの赤ちゃんがいる」つまり
「二卵性のふたご」の場合のみです。
ふくろがひとつだったり胎盤を共有したりしていれば、
ひとりだけを外にだしているうちにのこりひとりの命は確実に危なくなります。

わたくしが尊敬している前の前の職場の上司(今は開業している)が言ったことです。
たとえ「二卵性のふたご」であっても
「ふたごの経膣分娩のときは、赤ん坊ひとりにつきひとりずつの小児科医と産科医が必要」
つまりふたりの子それぞれに何かあったら小児科医ひとりでは手が回らないし、
万が一分娩経過が悪くなれば手術や輸血の手配、素早く帝王切開にもっていくのに
ふたりの産科医が必要だから、という意味です。

わたくしの経験をふたつ書きます。

ひとつめは、上に書いた上司のもとでの経験です。
ふたごの経膣分娩で、分娩開始が夜になってしまいました。
産科医はわたくしと上司と研修医がひとりいました。
(この場合研修医はあくまでも副の立場で、「ふたりの産科医」に含まれません)
ひとりめはけっこうするっと出てきました。
すぐに小児科医に渡しました。
その直後、陣痛が停止、子宮口も閉じてしまいました。
ひとりめの赤ん坊の胎盤は子宮内にはいったままです。
子宮が動かないので出血もしません。
30分待ちました。まだ陣痛は再開しません。
ただし子宮からの出血が少しずつ増えてきました。
陣痛誘発剤を開始して弱い陣痛をつけ、
手の細いわたくしが子宮に手をつっこんで(お母さんはかなり痛いはず)破水させました。
どっと流れた羊水の中で頭からおりてきた赤ん坊を子宮内でひっくりかえして逆子にし、
足をつかんで一息に引き出し、小児科医に渡しました。
(彼はずっと「早く終わらせてくれよー」光線を出していらいら待っていました)
(気の毒です、お産はいつ終わるかわからないから)
陣痛促進剤を最大量にアップ、子宮収縮剤注射をしました。
ふたごが出て大きかった子宮からはいくらでも出血するので、すばやく収縮させないとダメです。
幸いなことにすぐにふたつの胎盤は排出され、子宮はいい具合に収縮しました。
これでもし胎盤が出ないともう一度手をつっこんで胎盤をつかみ出すところです。
そうしないと蛇口をひねったような大出血がはじまります。
分娩が無事に終わっても油断はできません。
分娩後3時間以内の大出血の可能性が低くないので、
子宮収縮剤入りの点滴をつないでいてもらいます。

もうひとつの経験は、わたくしが医者になって3年目くらいのことです。
ふたごは帝王切開、と誰も教えてくれない時代です。
陣痛開始したのは朝早くでしたが、その日、大きい学会が東京でありました。
3年目の医者が当番しているなら、誰か上司が残って当たり前ですが、
その病院は「上司」の立場の人間が4,5人いて全員仲が悪く、
お互いで融通してサポートする体制にありませんでした。
双子のお産は、ひとりめはすんなり出ましたが、そこで陣痛が止まりました。
ふたりめのお産を待つ間に、どんどん胎児心拍が落ちていきました。
助けを呼びたかったのに電話した「上司たち」は全員不在でした。
何も考えられないくらい混乱してきたころやっと陣痛が始まり、
ぐったりしてふたりめが娩出されましたが、かなりの仮死状態でした。
この話はのちに訴訟ざたになりそうになったようですが、
上司たちはさすがに自分たちにも非があると思ったのでしょうい。
わたくしには何も言わないで、うまくおさめてしまったとのことを
ずっとあとになって聞きました。

わたくしの分娩を扱った人生は約20年です。
その間に、このふたつを含めてふたごの分娩ではずいぶん怖い思いをしました。
数をこなさないと怖いことにはあたりにくい。
だから年間たかが100件に満たない分娩数しか扱わない助産院では
わたくしと同じ20年の経験でも「ふたごなんて何も問題ない」と言い切ることもできるでしょう。
ただ、自分が経験しなかったことは「起きる可能性のないこと」ではありません。
たまたま運よく当たらなかっただけ。

自分は何件くらい分娩を見たかな、と今ちょっと計算してみましたが、
年間分娩数1千として半分に関わって20年で1万です。
1万分娩は、経験値としてめやすになるかどうかわかりませんが、
年間100の20年、2000件よりもずっと経験値としては高いと思います。
それだけ怖い思いをしてきたので、
どんなに評判がよくても、助産院分娩には絶対に賛成できません。

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