つぶやきで書いたらけっこう読みにくる人が多かったので日記も書きます。
ちなみに自分は産婦人科医です。
子宮内膜症という病気は、けっこう理解が難しいんです。
「子宮の中にある子宮内膜が子宮の中以外にひっこしてしまう病気」。
これが一番簡単な説明です。
じゃあ子宮内膜って何?
これも簡単に説明すると、生理のときに落ちてくるのが子宮内膜です。
生理って「血液を出す」ためじゃなく、子宮内膜を出すためのものです。
前回月経で子宮内膜がきれいにはがれて、次の排卵周期がはじまると、
もしかしたら来るかもしれない受精卵のために「卵を受け止めるベッド」を作っておく。
これが「子宮内膜」です。
子宮の中を内視鏡で見ると、増殖した子宮内膜は「オレンジ色の草むら」のよう。
ふわふわそよいで、この中に受精卵がきたら気持ちよく成長できそうな感じ。
でも受精卵が来なければ?
排卵後一定時間がたつと内膜の寿命が尽きて、崩れて流れ出ます。
これが生理。
つまり子宮内膜ってのは排卵周期とともに「増殖する」「崩れて流れ落ちる」を繰り返す。
子宮の中にいれば流れ出る口もあるけど、これが子宮の中以外に行ってしまうと、
出先でもホルモン刺激によって「増殖」「崩壊(出血)」を繰り返すので、
卵巣にできれば「卵巣チョコレートのう胞」という卵巣腫瘍になり、
子宮の筋肉内にできれば「子宮腺筋症」といって、
子宮全体が充血して腫れ上がり、生理の量や痛みがひどくなり、
卵管だの腹膜だのにできれば、その部分が腫れてふさがったり癒着したり、と
いろいろな症状を起こすわけ。
ちなみに「チョコレートのう胞」だけしかないと生理痛もひどくないし生理量も増えないので、
たまたま子宮がん検診みたいなときに卵巣超音波ではじめてわかったりします。
子宮の中にいるもんがなんで他に引っ越すのよ?
…これがけっこう難しい話で、世界中でたくさんの研究者が内膜症に取り組んでいますが
今だにはっきりと解明されていません。
そもそも子宮内膜症になるのは人間だけなので動物実験も難しい。
(わざわざ子宮内膜移植してモデル作ったりするけどね)
がんの転移と似た仕組みがあるらしい、ということまではわかっているので、
がん専門から内膜症専門研究者になる人もけっこういたりします。
患者さんにとっての不利益は、やっぱり生理に関することでしょう。
生理の量が増えてくる、期間が長くなる、痛みがひどくなる。
ホルモン依存性疾患なので、女性ホルモンが出ている限り悪化する。
卵管が癒着して不妊になる、チョコレートのう胞ががん化する、などなど。
薬物治療でいったんよくなっても数年で再発することがすごく多い。
かと思えば、何かのきっかけでけろっと治癒して再発しない場合もあり、
謎の多い疾患です。
治療方法もその人の症状とかニーズ(こども生みたいかどうかとか)に合わせていろいろ。
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http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=137&from=diary&id=4321071
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