「カピタン」研究（48）

213号[73-10]に花沢氏が自殺詰を3題発表。

#99 花沢正純 213号

自殺詰　20手

解　
27金、イ同香生、29桂、同角生、Ａ18歩、同角生、29桂、同角生、18歩、同角生、
29桂、同角生、18歩、同角生、29桂、同角生、28銀、同香生、18銀、同角迄20手。

・初手は27を埋めながら書く筋を通す絶対手、対して(イ)で同玉とか同香成は18銀で早詰なので香生は必然。続く2手も他に手がない。問題はこのあと12手かけて持駒の桂3歩3を捨ててしまう不思議な手順です。持駒が減るだけで意味のない着手にみえるからです。
　試しにＡで直ちに28銀、同香生、18銀、同角成としてみましょう。

（図1）


　これは詰上がりでしょうか？詰棋の感覚からいえば確かに19玉は詰んでいます。しかしこれが自殺詰であることを忘れてはいけません。
作者―この形「29か39に合駒せよ」と後手に主張する権利があるように思えるのですが…。
・つまり合駒をどう処理するかは後手の自由な訳で、双方の目的が詰棋と違うのだから、この図では詰上がりとは認められないのです。
上図からは王手連続の義務との兼ね合いから29桂と打つ一手ですが、同飛（同香成等）とは取ってくれません。27玉（同角生も可）でアウトです。ここに至って、本局の構想が明らかになりました。持駒が邪魔駒！！

#100 花沢正純 213号

自殺詰　146手

解　
22金、同玉、Ａ「23歩、11玉、22歩成、同玉」×17
23龍、11玉、Ｂ43香成、イ88歩、同角、77歩、同角、66歩、同角、55歩、
同角、44歩、同角、33歩、同角生、22歩、同角生、21玉、32杏、同金、
同龍、同玉、33金行、21玉、12香成、同玉、
「13歩、21玉、12歩成、同玉」×8
11金、同飛、13角成、21玉、12馬、同玉、22金、13玉、23金、14玉、
24金、15玉、25金、16玉、26金、17玉、27金、同玉迄146手。

・Ａで持歩の全捨てをするのはＢで明王手をするための準備です。これは#99と同じ意味。99角の王手に対して同飛は詰！なので合駒は絶対です。ここで後手が先手にできるだけ駒をたくさん渡しておこうというのが本局の主眼です。#99の逆筋ですね。
連続中合の意味は単純な手数伸ばしです。以降も持歩の全捨てがあり、収束はヒモもついていない金の縦引きで鮮やか。
　この局は筆者に自殺詰の面白さを教えてくれた思い出の作です。変化紛れが少ないのが筆者好み。

#101 花沢正純 213号

自殺詰　114手

解　
25と左、13玉、24と、12玉、23と、イ11玉、12歩、21玉、22歩、31玉、
32と、同玉、42香成、33玉、43杏、34玉、44杏、35玉、36銀、同玉、
37と右、35玉、34杏、同玉、25と、33玉、24と、ロ32玉、23と、31玉、
21歩成、同玉、11歩成、ハ31玉、21と、同玉、32金、11玉、12と、同玉、
22金、13玉、23金、14玉、24金、15玉、25金、16玉、17と、同玉、
28と寄、16玉、15金、同玉、26と、14玉、25と、13玉、24と、12玉、
23と、ニ11玉、12歩、21玉、22歩、31玉、32と、同玉、42金、33玉、
43金、34玉、44金、35玉、45金、36玉、37と、同玉、38と右、36玉、
48桂、同龍、35金、同玉、26金、34玉、25金、33玉、24金、32玉、
23金、31玉、21歩成、同玉、11歩成、31玉、21と、同玉、32金、11玉、
12金、同玉、22金、13玉、23金、14玉、24金、15玉、25金、16玉、
26金、17玉、28と、同龍迄114手。

変化：イ21玉は12銀、31玉、32と、同玉以下早い。
ロ22玉は23と、31玉、42金、21玉、32と、12玉、22と以下作意通りで早い。
ハ同玉は12と、同玉、22金以下作意通り。
ニ21玉は12金、31玉、32と、同玉、22金以下。

・何ともねちっこい趣向で、同氏の自殺煙詰（#63）の前半の雰囲気と似ている？玉の逃げ方の練習といった感じです。この形で114手かかるのだから
、自殺詰ルールの玉のしぶとさは相当なもの。花沢氏の本領は、前局のようにスカッとしたものより、本局のようなねばっこさにあるようだ。

　花沢氏は引き続いて215号[73-12]のサロンに2508手詰！の自殺詰を載せている。
作者―当初はこんな長手数を狙うつもりはなかったのですがモテ遊んでいるうちに2000手を超えてしまいました。手順前後、着手非限定を気にしなければ大きく引き伸ばせます（1万手を超えるかもしれません）。
・惜しいことに本作には早詰が成立していました。指摘は森茂氏とのことです。