以上で第1章を終わるつもりだったが、ここにひとつ鬼子がいました。自殺詰です。
ルール 1.先手の玉を後手に詰めさせるのが目的
2.後手は先手の方針に極力抵抗する
3.先手の着手は王手の連続。ただし後手玉を詰めてはいけない。
すなわち先手の方針は後手玉を逃がさぬように、しかも詰めないような綱渡りとなります。これはフェアリーチェスのセルフメイトの翻案です。セルフメイトは13世紀!に既に存在しているそうです。わが自殺詰の第1号は?
#24 加藤 徹 188号[71-9]
自殺詰 10手
解 88銀、同歩生、98銀、同角生、89桂、同角生、96龍、同飛、87馬、同玉迄10手。
これが自殺詰の第1号局です。面白いと思いませんか?自殺詰はフェアリー詰将棋の中でも人気のないジャンルで、発表作はかなり少ない。作図、解図とも難しいのが原因だと思う(他の詰棋が易しいかと言われると困るが)。変化に乏しく紛れが多いのが一般的な傾向。
この分野は花沢正純氏が第一人者で煙、7連合、6000手オーバーの超長編など高度な作を発表している。
追加
A 玉以外の駒を詰める詰将棋
蟹江悦蔵 旧パラ[52-3]
91飛を詰める 7手
解:73角成、イ92飛、62飛成、同歩、83銀、93飛、82馬迄7手。
イ82合は同馬以下。93飛は82銀以下。
・このルールのばか詰版もあり、その方が作品は多い。その中には加藤徹氏の珍品もあるので、いつか紹介します。
B 安南詰将棋
ルール 任意の駒は、すぐ下に味方の駒があるとき本来の性能を失いその(下にある)駒の性能に変化する。ここでいう上下は、双方共味方の陣地に近い方を下と決める。
津金貞男 新パラ[54-10]
安南詰 7手
解:33角、イ同香、22飛成、同玉、23歩、14玉、25金迄7手。
イ同桂は13飛成以下。ここ22金は王手にならず、又21金、12玉、22飛成は同歩!で逃れ。
・最後34銀は香なので25金を取れない。本当に愉快。
この分野では小石広志氏が独走しているようです。フェアリー味では天竺詰と互角と思うが、作るには特異な感覚がいるみたい。
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17号の「幻想詰将棋型録」は、ここまでである。18号以降も、大量のフェアリー詰将棋が登場するのでお楽しみに!
最後に昔話を少し。泰永氏からは一度だけ、お手紙を頂いたことがある。氏がフェアリーランドの担当をされていたときのこと、わざわざある作品の不詰を連絡してくれたのだが、その余白に「君の文章は輝いています!それだけが言いたかった」と書かれていたのを、未だにはっきりと記憶している。
当時の私は大学院を担当し始めたばかりで、詰棋界の右も左も分からない田舎の少年(現在の若手達とはエライ違いだ)。氏の言葉に大いに勇気づけられたことは言うまでもない。氏は今、どうされているのだろうか?
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