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2016年04月29日22:07

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「カピタン」研究(25)

§2

 ほぼ7年の空白の後、ばか詰を紹介し大発展の火つけ役をはたしたのは中出慶一氏である。氏は169号[70-2]に「落穂ひろい」と題した文を書き、その中で新作ばか詰を6題発表した。作品としては初期のに似て裸玉を歩で追いかける式のものが多いが、これが異端派(?)作家たちの注目を集めたことは疑いない。

#9 中出慶一 169号[70-2]
フォト
ばか詰 19手


#10 中出慶一 169号[70-2]
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ばか詰 9手


#11 中出慶一 169号[70-2]
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ばか詰 51手 *都詰にせよ


#12 中出慶一 169号[70-2]
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ばか詰 49手


#13 中出慶一 169号[70-2]
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ばか詰 59手


#14 中出慶一 169号[70-2]
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ばか詰 13手


 実はこの6作は全て早詰作で、その指摘が173号[70-6]に出ている。指摘したのは花沢正純、松井克彦の両氏。以下の手順はそれによる。



#9 12歩生、21玉、11歩成、31玉、21と、41玉、31と、42玉、41と、32玉、
 42と、21玉、32と、11玉、22と迄15手。

#10 作意:33桂、11玉、21桂成、同馬、13龍、12桂合、同龍、同飛生、23桂迄9手。
  早詰:32龍、11玉、31龍、12玉、21角、11玉、23桂迄7手。
・本局のみ後にサロンで作意発表。作意は手筋のオンパレードで実に巧妙。桂吊るしの第1号。

#11 12歩、21玉、11歩成、22玉、12と、32玉、22と、43玉、44歩、53玉、
 54歩、42玉、53歩成、33玉、43歩成、34玉、44と、24玉、23と、25玉、
 24と、26玉、25と、27玉、26と、37玉、27と、47玉、37と、57玉、
 47と、66玉、57と、65玉、66歩、55玉、54と引迄37手。
・とにかく巧妙な手順である。脱帽!
 この種の条件作はあまり作られていない。狙い目?

#12 19歩…13玉、14歩、23玉、13歩成、33玉、23と…83玉、73と、84玉、
 74と、85玉、75と、96玉、97歩、95玉、96歩、94玉、95歩、93玉、
 94歩、83玉、93歩成、73玉、74と、72玉、73と、81玉、82と迄45手。

#13 19歩…13玉、14歩、23玉、13歩成、33玉、23と…93玉、83と、94玉、
 93と、95玉…96と、87玉、97と、88玉、98と、77玉、88と、86玉、
 87と…83玉、84と、82玉、83歩、92玉、93と、81玉、82と迄55手。

#14 42角、62玉、53角成、72玉、71馬、同玉、72銀、62玉、61銀成、72玉、
 62金迄11手歩余り。
・この初形は後に何度か現れた。

 ここで時間を少し逆転させる。門脇芳雄氏の功績について述べたい。
 氏は数年前から、詰パラ誌上にチェスプロブレム等の紹介を通して、詰将棋の世界でも従来の殻を破った現代的な作を作ろうと呼びかけていた。
「芸術パズルを求めて」150号[68-7]
「前衛作品を作ろう」155号[68-12]
「チェス エンドゲームの魅力」156号[69-1]
「チェスあれこれ」162号[69-7]
 そしてついに166号[69-11]に6ページにわたって「チェスの幻想プロブレム」を発表。フェアリーチェスの各分野を例題付きで解説している。内訳はヘルプメイト2題、セルフメイト2題の他、変則盤、変則駒、そしてマキシプロブレムまで、限られた紙数ながらその概観と魅力をよく表している文章で、今読んでも古びていない。この論文も、前衛作家たちにかなりの刺戟を与えたろうと思われる。
 のちに氏は花沢氏より「ばか詰教室」=「フェアリー詰将棋研究室」の担当を引きつぎ前衛賞を創設するなど、フェアリー界のために活躍した(これからもお願いします)。

(注)フェアリーチェスについてはとにかく日本語の文献が非常に少ない(チェス自体人気がないのだから無理ないが)。書店で買える本としては白水社のクセジュ「チェスの本」くらいか?詰パラでは門脇氏が上記論文の他、221号[74-6]から239号[75-12]にかけて11回「チェスパズルの世界」を連載している。
 又、若島 正氏がカピタン5号より「Welcome to Fairy-Land」と題して連載を始めたが、その1回だけで中止。若島さん、続きを期待してま〜す。

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