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2016年04月17日16:04

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楽しいレトロプロブレム(13)解答編

(37)橋本 哲(Problemesis 12/1999, 2nd Prize)
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Proof Game in 12.0 moves(15+14)

 なくなった駒は白がP1枚で、黒はQPの2枚。また盤面配置を作るのに白は5手、黒は(castlingをしても)10手。更に、白Pf6が同じ筋の黒Pを取っているのも明らかですから、これでも1手かかります。すると、黒の猶予はあと1手しかありません。黒がcastlingをする為には、黒Qをどかす必要があります。しかし、例えば白がBやSで黒Qd8を取りに行くのはいずれも手数オーバー。黒Qは1手動いてから白に取られたのです。これで黒の手は12手ちょうどになりました。従って、直進途中のd筋の白Pを取れる黒駒はありません。これより、この白Pがc7で黒Qを取り、更に成っていることが判明しました。
 ではここから、実際に駒を動かしてみることにしましょう。序は、1.d4 Sc6 2.d5 Sa5 3.d6 c6 4.Qd5 Qc7 5.dxc7 d6 6.Qh5 Be6となりますね。

(図1)
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 さて、この後黒のcastlingを邪魔しないためには、何に成ったらよいでしょうか?勿論それはBです!6.0手目以降は、7.c8=B Bb3 8.Bh3 b6 9.g4 0-0-0と展開します。成ったばかりのBを最遠移動し、Pg4とすることでc8への利きを消す訳です。

(図2)
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 更にこの後は、10.g5+ f5 11.Pxf6 e.p.+ Kb7 12.Bc8+ Rxc8となって出題図に到達します。en passant captureした後、h3に引いた成Bを再度c8に放り込んでフィニッシュ!実に見事な幕切れではありませんか!

 Valladao themeを僅か12.0手の中で表現した、作者の代表作。単に条件を満たしたというのではなく、それぞれの要素(castling, en passant, promotion)が有機的に作用しあっている点が素晴らしいですね。


(38)Julio Alberto Pancaldo(feenschach 01-03/1977)
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H#2.5 Grid Chess(11+12)
b)Orthodox

 なくなった駒は白がQRSSPの5枚で、黒はRBSPの4枚。また、Bc8が初形位置で取られたこと、そしてQb5が成駒であることもすぐに分かりますね。従って、c筋とf筋で白Pが取った駒はRとSに決まり、これで白の駒取りは尽きています。成った黒Pはh筋のもので、これが例えばh7-h5xg4xf3-f2xg1=Qと3枚駒取りをしてg1でQに成ったと考えられます。(ちなみに、取られた白駒はQSSです)
 ここで、黒Pxf2とした瞬間が問題の局面。通常ならこれはチェックですが、Grid Chessだとチェックではありません!従って、白はcastlingの権利を保持していると主張できるのです。
 という訳で、a)の作意は1...0-0!(Kf2? illegal) 2.Qb1 Rxb1 3.b5 Rxb5#となります。

 勿論、b)では白のcastlingは不可で、その代わり1...Kf2が成立します。従って、b)の作意は1...Kf2!(0-0? illegal) 2.Ka8 Ra1 3.Rb8 Rxa7#となります。Grid Chessのルールをcastlingの可否と巧みに絡めた論理構成が面白いですね。


(39)Thierry le Gleuher(Problem Paradise 10 1998)
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Proof Game in 17.0 moves (15+15)

 なくなった駒は白がB1枚で、黒もP1枚のみ。黒は盤面配置のみで17手ちょうどなので、黒Pc7は不動のまま取られています。黒とは対照的に、白には10手以上の猶予がありますので、その間にPc7を取ることは一見簡単そうに見えますね。ところが、ことはそう簡単ではありません。まず、Sで取りに行くと黒Kにチェックがかかってしまいます。Rは自陣から出られません。Bも枡目の色が違うのでダメですね。するとQでしょうか?しかしこれも、外に出るにはKをh3あたりまで一旦連れ出す必要があり、手数オーバーしてしまいます。ということで、何と残った候補はKです。一番足の遅い駒で取りに行くのはかなりの意外性がありますね。
 作意は 1.g3 a5 2.Bh3 Ra6 3.Kf1 Rh6 4.Kg2 d6 5.Kf3 Qd7 6.Ke4 Qa4+ 7.Kd5 b5 8.Bd7+ Sxd7 9.Kc6 g6 10.Kxc7 Bg7 11.Kc6 Bc3 12.Kd5 Bb4 13.Ke4 Rh3 14.Kf3 h5 15.Kg2 h4 16.Kf1 Rh5 17.Ke1 Rd5となります。
8手目の白Bのactive sacrificeが、作品に彩を添える妙手。tempo moveですが、実に洒落た一手ですね。

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