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2016年04月10日14:28

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楽しいレトロプロブレム(12)解答編

(34)Josef Haas(Die Schwalbe 20 04/1973)
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白が1手戻し、それから#2にせよ(8+10)

 なくなった駒は白がRBBSPPPPの8枚で、黒はQRBBSPの6枚。白側の駒取りはe筋のPによる4枚と黒Bf8の合わせて5枚が判明していて、黒側の駒取りはPによる3枚が分かっています。
 とりあえず、Retract:-1.Sb3xBa1?と戻してみましょう。すると、この黒Bが成駒であることは分かりますが、それ以上の情報は得られませんね。よって、1.Rxa1としてみても、1...0-0とされてしまい、全然届きません。このcastlingを阻止するにはどうしたらよいのでしょうか?
 実は、Sを戻せば、黒のcastlingがillegalであることが示せます。でも、どうしてそんなことが言えるのでしょう?

(図1)
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 Bと違って、a1に黒Sを戻せばその直前の手がP(x)a1=S+に確定することはすぐに分かりますね。この黒Pは、遠くf筋から5枚も駒取りをしてa1に辿り着いていたのです。すると、他の黒Pでも3枚駒取りをしていますから、黒側の駒取りはこれで尽きています。ところで、黒に取られた白駒の中にはh筋の白Pも含まれますが、これはどうやって黒Pに取られたのでしょう?
 もうお分かりですね。このh筋の白Pが黒Pに取られるためには成る必要がありますが、黒Sを戻したために白の駒取りは既に尽きています。h筋の白Pは直進してh8で成る他なく、これより黒Rh8が不動ということはあり得ないのです。

従って、作意は Retract -1.Sb3xSa1 & 1.Rxa1 --- 2.Ra8#(1...0-0?? illegal!)となります。


(35)Michel Caillaud(G.Donati 50th JT 12/2003, 1st Prize)
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Proof Game in 15.0 moves(13+15)

 なくなった駒は白がRPPの3枚で、黒はP1枚のみ。また、黒の手数計算をすると、盤面配置だけで15手ちょうど。よって、黒Pe7は不動のまま取られています。白Rがb6で取られているのはほぼ明らかです。また、a筋の白Pは黒Ra8がa8-xa4-e4-e6と旋回する途中に取られたのでしょう。では、f筋の白Pは何処で取られたのでしょうか。或いは、取られずに原型位置に戻っているのでしょうか。
 いずれにせよ、直進途中で取られることはありませんから、f筋の白Pが成っていることは確定です。これにa筋のPの1手とRの3手を加えても、まだ白には6手も猶予があります。これは何を意味するのでしょうか。実際に駒を動かしながら考えてみることにしましょう。
 先にBd4を置いてしまうとRa8の邪魔になることが分かれば、序は1.a4 d5 2.Ra3 Bh3 3.Rb3 Kd7 4.Rb6 xb6とするしかありません。

(図1)
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 この後も、5.f4 Rxa4 6.f5 Re4 7.f6 Re6 8.xe7 f5と進むのが自然な流れですね。ここが問題の局面です。

(図2)
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 ここで例えば、9.e8=R??などとして悠長に構えていると、11...Qh4+のチェックの応対に苦しめられることになります。白Sb1をf2にでも連れてくれば何とかチェックは受かりますが、残念ながらあと3手ではb1に戻れません。このSを黒に取らせて成Sをb1に戻す(Pronkin)とか、或いはe3に何か遮蔽駒を置いて、白Kを一旦f3迄脱出させるとか、チェックを受ける手段は色々考えられますが、いずれもあと6手では実現不可能です。
 よって白は、9.e8=S!とします。この成Sをg3(f2ではない!)に挟み込むことでチェックを受け、その後この成Sを再びe8に戻して黒Rに取らせるのです。何という巧妙な筋書きでしょう!

9.0手目以降の具体的な手順は以下の通り。
9.e8=S Bc5 10.Sd6 Bd4 11.Se4 Qh4+ 12.Sg3 Qe4 13.Sh5 g5 14.Sg7 Sf6 15.Se8 Rxe8

 成SによるRundlauf(これはCeriani-Frolkinにもなっています)というテーマが、実に見事に演出されています。1st Prizeも当然の傑作でした。


(36)Raymond Smullyan(The Chess Mysteries of Sherlock Holmes 1979)
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Monochrome chess(6+4)
現在白番。castlingとen passantがあったことを証明せよ。

 黒Kが白桝のみを踏んでe8から脱出する為には0-0とするしかありませんから、castlingがあったことは明らか。問題はen passantです。こちらは局面を詳しく分析する必要があります。
 まず、現在白番なのだから直前の着手は黒によるものですが、Pg6xh5だと黒Kがa2にいることと矛盾しますから、Kb3-a2しかありません。では更にその前、白はどうやってQによるチェックをかけたのでしょう?
 すぐに分かる様に、それはRc2-a2+です。ということは、1.0手前はこういう局面だったことになりますね。

(図1)
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 実はこの白R、初形でh1にいたものではありえないのです。実際に動かしてみれば分かりますが、Monochrome Chessにおいては偶数段目にいる白Rは全て成駒なのです!
 この成Rはどのようにして発生したのでしょうか?勿論初形で白桝にいた白P、すなわちPa2又はPc2が4枚駒取りをして、a8かc8で成ったものなのです。(g8で成るには6枚の駒取りが必要になりますから、これは不可能です)
 では、取った黒駒は何だったのでしょう?当然これは、初形で白桝にいた黒駒に限られます。つまり、Ra8,Pb7,Bc8,Sg8の4枚ですね。ところがSg8は自力で動けませんから、白Pに取られることもありません。従って、白桝の白Pは黒桝にいる駒を1枚取ったということになりますね。Monochrome Chessにおいてそれを唯一可能にするのがen passant captureなのです!以上で証明が完了しました。

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