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2016年04月03日09:52

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楽しいレトロプロブレム(11)解答編

(31)Michel Caillaud(Orbit no.15, 2002)
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Proof Game in 14.0 moves(15+14)

 なくなった駒は白がSのみで、黒はQBの2枚。黒Bf8は不動のまま取られているので、白Pb3が取ったのは黒Qですね。手数計算をしてみると、白は盤面配置を作るのに10手、黒は8手かかります。黒Qがd8-b6-b3と動いているのを考慮すると、双方とも4手ずつの猶予があることになりますが、これはいったい何を意味するのでしょう?ここで白Rc7に注目してみると、黒Kが不動の筈がないことはすぐに分かります。すると、自然にd7-e6-f7-e8という黒KのRundlaufも見えてきますね。これで黒の手は14手ちょうどになりました。
 今度は黒Sg1に目を移してみましょう。これがg1に入る前はf3にいたはずですが、そうすると白Kもやはり動かざるを得ませんね。ということで、こちらもまたd2-e3-f2-e1とRundlaufしていたのです!これで白も14手ちょうどになりました。後は実際に駒を動かしてみるだけです。
 作意は 1.d4 Sc6 2.Kd2 Se5 3.Ke3 Sf3 4.Sd2 Sxg1 5.f3 c6 6.Kf2 Qb6 7.Ke1 Qb3 8.axb3 f5 9.Ra5 f4 10.Rf5 d6 11.Rxf8+ Kd7 12.Rd8+ Ke6 13.Rd7 Kf7 14.Rc7 Ke8となります。

 Kのdoubled Rundlaufを無駄な装飾も一切つけずにさらりと表現しています。まさに名人芸という感じがしますね。


(32)Lothar Finzer(Die Schwalbe 29 10/1974)
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S#2 b)H#2(7+12)

 Selfmateでは白から指し始めることになりますが、では直前の黒の着手は何だったのでしょう?もしcastlingが可能だとすれば、直前の黒の手はPc7-c6又はPd7xc6しかありません。しかし、前者だと白Kが黒陣に潜り込むルートがありません。では、後者ならどうでしょうか。実はこちらも不可能局面なのですが、その証明には少々込み入ったレトロ解析が必要となります。
 まず、黒の駒取りを確認しておきましょう。黒はb,c筋の4枚のPで8枚の白駒を取っていることになります。また、黒Ba6が成駒であることも明らかですね。この黒Bは、g筋の黒Pがf1かh1で成ったものですね。この際にも1枚駒取りがありますから、黒の駒取りはこれで尽きています。すると、黒Pa4は駒取りをしていませんから、白Pによりa,b筋で2枚の駒取りがあったことが分かります。更に白は黒Bc8も取っていますから、全部で3枚の駒取りが判明しました。
 さて、ここでg筋の白Pに着目しましょう。このPもまた黒Pに取られている筈です。するとg筋の黒Pとすれ違う為に1枚駒取りをしなければならないので、白側の駒取りもこれで尽きています。するとこの白Pはf8で成ったことになりますが、黒Kにチェックをかけずに成ることは不可能です。これより、黒のcastlingが可能だとすると、直前の黒の着手が存在しないことが示されました。従って、黒のcastlingはillegalです。これより、a)の作意は 1.Qc7 Kf8 2.Qf7+ Kxf7#(1...0-0+? but illegal!)となります。

 では、b)ではどうでしょうか。Helpmateは黒から指し始めますから、直前の着手は白ということになります。よって、白がPd4-d5と指してこの局面に至ったと解釈すれば、黒の0-0は合法ということになりますね。従って、b)の作意は 1.0-0+ Qd8 2.Kh8 Qxf8#となります。

「ルールが違うと手番も違う」という、言われてみれば当然の事実をcastlingの可否に巧く結び付けた作者のアイデアが素晴らしいですね。


(33)Michel Caillaud(Messigny 06/1995, 1st Prize)
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Proof Game in 16.0 moves(16+13)

 白にはなくなった駒はありませんが、黒はQBPの3枚を取られています。白がそれらを取った場所も全て明らかですね。手数計算をすると、白は15手(Qはg4-c8-f8-c8-g4(h3)-g2と動いている)、黒は盤面配置に7手(Sg8は2手動いている)、そしてQとPでも5手費やしているので、全部で12手です。
 どちらにも手数に猶予がありますが、少し考えてみれば分かる様に、黒Bc8は原型位置のままだと白Qの、そしてh3に移動すると今度は白Bf1の移動の邪魔になってしまいます。白駒どうしの軌跡も一部重なっていることで、結果的に黒Bはc8-h3の間を2往復することになります。これで黒は16手ちょうど。一方白は、1手の猶予を初手のsingle stepによって消費することになります。

作意は 1.a3 d5 2.a4 d4 3.a5 d3 4.exd3 Bh3 5.Se2 Kd7 6.Sec3 Ke6 7.Qg4+ Kf6 8.Qc8 Qd5 9.Qxf8 Qf3 10.xf3 Bc8 11.Bh3 h5 12.Bd7 Sh6 13.Ba4 Bh3 14.Qc8 Rd8 15.Qg4 Sg8 16.Qg2 Bc8 となります。

 黒Bによる駒取りなしでのSwitchbackの反復。高度な主題にもかかわらず、手順限定のロジックには全く無理がありません。それに加えてこの解き易さ!Sg8の小さなswitchbackも装飾として気が利いているし、私の大好きな作です。
 尚、類似の主題を扱った作として、以下の図も是非覚えておきたいところです。

橋本 哲(Problem Paradise 14 1999)
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Proof Game in 16.0 moves(12+16)

作意は、1.h4 a5 2.Rh3 a4 3.Rb3 xb3 4.d3 Rxa2 5.Sd2 Ra8 6.Ra7 b6 7.Rb7 Ra1 8.Sdf3 Rxc1 9.Sh2 Ra1 10.f3 Ra8 11.Qa1 d6 12.Qa7 Sd7 13.Qb8 Ra1+ 14.Kf2 Rxf1+ 15.Kg3 Ra1 16.Kh3 Ra8

 こちらは(駒取りありとはいえ)RのSwitchback三往復!流石は世界のHashimotoです。
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