まず自分は産婦人科医です。
妊娠出産は命がけです。
妊娠初期でも子宮外妊娠で命を落としたり、ひどいつわりで生命が危険になることあり。
妊娠経過でも、突然の大出血や、子宮口が開いてしまって長期入院など、
「自分のからだは元気なのに」こどものために何もできない状況がありえる。
分娩そのものはまさに戦場、命のやりとりで、
あっちにもっていかれるかこっちに取り返すか、の現場です。
しかも周囲の理解は?
「こどもを生むのは最も大切なことだから安心して入院しなさい」という人ばかりでしょうか。
お産したあと「最も大切なことをやりとげた」人をじゅうぶんいたわって守ってあげる社会でしょうか?
実際には「妊娠くらいで休まれちゃかなわない」と陰口たたかれ、
順調な経過でも「おなか小さいね、赤ちゃん育ってないんじゃないの」とよけいなおせっかいやかれ、
産休とるのも周囲に気を使い、ではありませんか。
だからまずこどもを生んでから勉強して仕事につけ、ってこと?
若くて健康で体力が十分、頭も一番働く時期じゃないとできないこと、
他にもいっぱいありますけど?
生物学的にはその時期を妊娠出産に使うのはもっとも合理的。
でも人間には「子孫を増やす」以外のやることがたくさんあるのであって、
その意味では野生動物と同じには考えられません。
野生というなら蜂やアリは、「こどもを生むのに適している」女王を保護するために
数百万のメスがこどもを生まずに働きます。
それがかれらの「正常な社会」です。
こどもを生みたい人は産めばいい。
年をとればこどもができないリスクが高くなるのは知っててほしいけど、
知った上でキャリアを選ぶ人生があることを否定してはいけない。
ましてや他人に押し付けてはいけない。
少なくても、誰でも簡単にできることのように妊娠出産を語ってほしくない。
と、思います。
■加藤1億相、2人出産発言「どう受け止めるか配慮を」
(朝日新聞デジタル - 03月15日 12:27)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=3898829
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