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2016年03月13日00:51

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今月のLC外伝ネタバレ

◆全盛期の肉体を取り戻したイティア、その力は…!?
その闇はかつて、聖域で最も眩い光だった。

老双子編:最終話「決意のとき」

ハクレイが教皇の間の扉を開ける。すると中から天秤座の武器が飛んできた。
『これは…開け放たれた扉から…。天秤座の武器が…!?いかん…!』
ハクレイは倒れた弟を振りむいた。
「セージ!」
弟を抱え、脱出する。
「うわああぁああ!」
天秤座の武器が床の石を砕く。
「兄上…?」
「セージ…、無事だな…!?」
「!」
フェアリーが舞い飛ぶ。
「理想よな。お前達二人はいつも助け合っている。かつて私はその姿に希望を見た。そう。老いた私はな!」
若返ったイティアが天秤座の聖衣をまとって姿を現す。
「イティア様…なのですか…?そのお姿は…?」
『いや…姿だけではない。十二宮の外で感じたものよりもっと強大な小宇宙に変わっている』
『怒り…?哀しみ…?違う…これは飲み込まれそうなほどの…絶望か』
「ゲートガード…かつて私達もその理想を信じていたな…。だが…!」
イティアが天秤座の槍を床に突き刺す。
「250年で人は何か変わったか…?」
『小宇宙がさらにふくれあがる…!?』
「最後の正義(テロスジケオシニ)」
天秤座の武器が離脱する。
「なんだ…」
「天秤座の武器達が…星の弾丸のように…!」
武器が流星のように空を舞い、聖域中に落下する。二節棍が人馬宮の外に落ちた。
「うわあああ」
「馬鹿な…。これは…天秤座の武器。まるで隕石じゃないか…。これがイティア様の力…?強大過ぎる…!」
クレストとアテナも気付いた。
『前聖戦と変わらぬこの強さ…。これでは二人が…』
アテナが言う。
「…ですが。真に平和をもたらすのは武器ではありません。私達はあの二人に全てを託しました。…そう、全てをです。今はただあの二人を信じましょう…」
教皇の間ではイティアが血の涙を流していた。
「消し飛んだか…。理想とは常に儚く脆いものよ…。だがそれではいかんのだ…!」
イティアが玉座に腰を下ろす。
「私は神と共に在る黄金の時代を夢とするつもりはない!そのためならば人の悪は全て私が滅してくれよう!」
人魂が二つ、教皇の間を飛ぶ。腰かけたイティアの体を炎が包んだ。
「祭壇星座の聖火。そして鬼蒼焔か。…なるほど。咄嗟に積尸気に逃げ込むのは常套だったか…。…だが、逃げ切れたわけではないようだな」
傷ついたハクレイとセージが姿を見せる。
「それは貴方も同じ…。この聖火の陣は今や貴方を包んでいる。もはや貴方の小宇宙は聖域への供物…!追い込まれたのはそちらの方です…!」
「フッ…。フハハハハ!これは笑止!」
「!」
「忘れたか、ハクレイ…。この聖火は教皇代理の権限で行使するもの…!この聖火は私には効かん…!教皇である私にはな!」
イティアは聖火を弾き返した。
「うわあああ」
「これは…」
『聖火が…小宇宙を奪っていく…!』
「これでお前達は積尸気を使えまい。切り札を失ったのはむしろお前たちの方よ…!」
「うわぁあぁ」
二人がイティアに吹っ飛ばされる。
「老いた私の前に何故理想(おまえたち)が現れたのかやっとわかったのだ。それは甘い理想を捨て黄金の時代を実現するためだ…!」
「!」
「聖火が闇に染まっていく…」
「そんな。それほどなのですか…?250年…これほどの絶望を…?あの玉座で…?」
『……。ずっと』
「今のは…」
「セージ…!?」
「今、炎を伝わり声が聞こえました。この声は恐らく…教皇の…?」
玉座の上で老いたイティアは考えていた。
『250年だ…。ずっと信じた…。世界はいつか平和になると。思い描く理想を人々は求めていると。だが。だが250年の疑念は深まる。人間とはもともと悪性なのではないかと。これは持ってはいけない考えだ。私が老い先短くて本当に良かった。この考えは墓に持っていくべきだ。このまま…。このまま。このまま…』
イティアの魂が肉体を離れた。黄泉比良坂の手前でイティアの前に姿を見せたのは、双子の神とパピヨンの冥闘士だった。
「本当にそれで良いのか?教皇たる者が…!」
双子の神が問う。
『知らぬ神だった』
「お前のその考えこそ疑念…悪よ…!」
「教皇であるお前にすら悪はあるのだ!」
「…ッ」
「それを見過ごし見守るだけで、本当に地上は平和になるのか!?」
「250年、地上を守ったのはお前だ。その間、アテナは何をした?地上を放りお前に押し付けて」
「無念ではないのか?後悔しているのではないのか?」
「…よせ…」
「もっと時間があればと」
「糺すための力をやろう!」
「止せー!」
イティアは意識を取り戻した。教皇の間の玉座に腰かけた彼の傍らでゲートガードが心配そうに付き添っている。
「良かった…イティア様…。今…息も…脈も止まっておられて…医者を…」
「ゲートガードよ」
「は…。ハ…!」
イテァアの顔に黒い蝶の紋様が浮かびあがる。
「250年…私は間違っていた。人はやはり悪なのだ…!」
「…え?」
「これより力でもって地上を糺す!私を止めるか?ゲートガード!」
「…貴方が…。そう確信したのなら…やはり人間は悪なのでしょう…」
フェアリーが群れる。
「私は貴方の理想に殉じるのみです」
イティアの攻撃は続き、ハクレイとセージは翻弄され続けた。
「ぐあぁああ!」
「…ッ」
「…ダメです…イティア様…。確かに…人の中にも…私達の中にもきっと悪の心はありましょう!だけどそれは善悪の狭間でもがいているだけ…。そんな必死に生きる人々を塵芥の如く掃いて捨てるなど許されはしませぬ…!」
「!」
「そうです…。ここはそんな理不尽な神から地上を守る最後の砦。聖域だけは人間に絶望などしない…!それが俺達が貴方から教えられた事だ…!」
「その淡い理想に惑い、得たものが絶望よ。人は変わらぬ…!調和とは力で作り上げるしかないのだ…!」
イティアが天秤座の武器を振るう。
「兄上…どうか…」
「ああ…!」
『イティア様…。もし…俺達が貴方の前に立つ事に意味を見つけるなら…』
「フッ…。残った二人の小宇宙をハクレイに注いだか…。無駄よ…。理想を絶望に変え、消し飛ぶが良い…!」
『それは貴方の願いを守り継ぐ事…!』
「イティア様ァァァー!」
天秤座の武器が上から二人を襲う。
「ぐぅあっ!」
「フン…。やはり消えかけた小宇宙二人分ではこの攻撃は。終わりよ…!」
その時、ハクレイの後ろに少年のゲートガードの姿が浮かんだ。
「ゲートガード…」
ゲートガードがイティアを指さす。
「セージー!」
「なに…!?」
セージは玉座の上に置かれた、教皇の翼竜のマスクを手にした。
「教皇のマスクが私を呼んでくれた。継げ、と」
「!」
その途端、イティアを包んだ聖火の色が変わった。
「聖火が白銀(シルバー)に変わった。教皇権が移ったのか…。そうか…アテナとクレストが…。ハクレイを囮にして…。そうか…セージが教皇か…」
イティアは穏やかに笑った。
「!?」
「…イティア様?
「ぐ…」
フェアリーがイティアの体から放出される。
「…ッ。イティア様から死界の蝶(フェアリー)達が…!」
「小宇宙とともに聖火に散らされているのか…」
イティアの顔から蝶の紋様が消えた。
「手間をかけたな、二人とも…」
「!」
「イティア様…」
「お前達に目をかけた私の目に狂いがなかった事、誇りに思うぞ。宿主である私の小宇宙と共に蝶(フェアリー)達も消滅しよう。これでいい。これより聖域はお前達若い聖闘士達の時代よ」
「イティア様…しかし…」
「証明してくれるな。聖域だけは決して、人間の理想に絶望しないと。お前達二人ならばできよう」
二人が言う。
「誓います」
「この生涯かけて!」
イティアは微笑み、そして消えていった。
『世界はまだ未熟だ。世界はこの先、第二、第三の私やゲートガードを生むだろう。だがそれでも。それでも人間(ひと)は…』
セージの死後、教皇の後を継いだハクレイはスターヒルから聖域を見下ろした。
「そう!人間(ひと)は尊いのじゃ!わしらの生きた時代は過ぎた。だが見よ。いつの時代とて人間(ひと)は善悪を内包して乗り越える。なぁ、セージ、わしらはずっと信じてきたな。未来はきっと良いものじゃ!」
◆諦めなければ未来は輝く。人間(ひと)の強さは思いの強さなのだから。
長い間応援、ご愛読ありがとうございました!車田先生、手代木先生の次回作にご期待ください!単行本16巻は6月発売予定です!」
「聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話外伝」完


作者コメント:長い間読んでくださり有難うございます!星矢、LCは青春です。画集もどうぞよろしくです。
編集後記:週刊から別冊まで約10年、手代木先生お疲れ様でした。そして応援してくれた読者の皆さまに感謝!


LC外伝、堂々の完結です。
手代木先生、10年もの間、ありがとうございました!三巨頭外伝やパンドラ外伝も読みたかったけど、でも今はお疲れ様でしたと心から言いたい。
3月18日、「THE LOST CANVAS画集」発売です!

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